[38417] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-36『日本解放作戦…後編1』 |
- 健 - 2019年01月22日 (火) 23時59分
池田はベデイヴィエールに輻射波動を叩き込もうとした。だが、先に反応したベディヴィエールがハドロン砲で牽制する。
「トリプルデートの最中に失礼……私も混ぜてもらうぞ?」
〈四対一で、しかも君か。池田誠治…〉
〈せっかくのデートをって言いたいんだけど。〉
クラリスのローランが長剣を構え、ソレイユと炎鳥も得物を構える。
〈分かっています…〉
〈指揮官を取るのが先、だろう?〉
戦術の基本だ。全隊の指揮官であれば、士気に大きな影響を与える。皇帝のお抱え騎士レイシェフ・ラウ・ヴァリエールもいるが、決してその影響はゼロではない。
〈驚いたよ……意外と人気者だったんだな。〉
〈貴方は自分の魅力に無頓着すぎるわね。〉
ローランが斬りかかるが、先に大型KMFが一機現れた。
〈君はフランスのクラリス・ドゥ・ピエルスだな!〉
〈そういう貴方は、レイシェフ・ラウ・ヴァリエールね!〉
クラリスは思わず高揚してしまった。あの『ナイトオブワン』ビスマルク・ヴァルトシュタインに匹敵する使い手が自分を知っていてくれたとは!!
しかも、機体はビスマルクのギャラハッドに並ぶユーウェインだ。
「私もまだまだ捨てたものじゃないわね……『皇帝の双剣』の一人に口説いて貰えるなんて。」
〈資料で見たが、君は確かに美しい女性だ。実力も申し分ない…だが、私の心は亡き妻のものでね!〉
「あら、残念。まあ…私も今はライルになりたいけど。」
すると、相手も笑ったのか背中の長剣を抜く。
〈では、このアロンダイトで手伝ってあげるよ?可能なら、君を捕虜にしてライル殿下に引き渡そう。〉
「良いわね、それ。でも……こっちも負けられないのよ。フローレンベルクで相手をしてあげる。」
ローランとユーウェインは互いに獲物を振るう。二機は一度つばぜり合って距離を置き、ローランがハドロン砲を連射する。ユーウェインはそれを難なく躱して指のハーケンを撃つ。ローランはブレイズルミナスでそれを防ぎ、更にハーケンを撃ち返す。
再び鍔迫り合い、ハドロン砲を撃ち合って互いのシールドでそれを逸らす。
レイシェフも思わぬ強敵に高揚する。これほどの実力者だったとは!『ユーロ・ブリタニア』から鹵獲したグロースターで多大な戦果を挙げるパイロットがフランス軍にいて、それが女だというのも聞いていた。一部は只の誇張だと甘く見ていたが、レイシェフは実際に相まみえるまでは分からないと考えた。
そして、それが彼女であることも情報で掴んだ。噂に違わぬ実力!器量も大きい!
全く、E.U.はこれほどの人材を只の看板にしか使わないとは!!
彼女をプロパガンダにしか使わないE.U.政府の怠慢に呆れながら、レイシェフはあれを使うことを考えた。あれは強力だが、どういうわけか大きな爆弾を抱えている。
出来れば、あれを使わずに決めたい。
浅海はローランとユーウェインを見届けた直後に一機のヴィンセントが日本刀で斬りかかったのを見た。
〈その機体……そうか、君は殿下が解放した娘か!〉
「貴方こそ、その機体は『帝国の侍』ね!」
〈そちらで呼んでいただけるとは光栄だ!〉
長野五竜……旧日本軍人で戦後、模範囚として早期に出所した名誉ブリタニア人。『ブラック・リベリオン』以後もライルに仕え、今は名誉騎士候だという。
仲間は裏切り者、売国奴などと侮蔑しているが彼の家族は今も存命だという。
この人は…私があの頃見向きもしなかったもの!それ、そのもの!!
だからこそ、負けられない。こちらにも譲れないものが……そのはず、なのに!
迷うな!今、迷ったら殺される!!
アラドヴァルで刀を受け流し、ハーケンで攻撃するが相手はそれより早く蹴り上げた。体勢を立て直して今度は剣を抜くが、藤堂の斬月と同じように髪で受け流す。
レイは神虎タイプのKMFにニードルバックラーのハーケンを撃った。
「あなた、中華連邦のパイロット?」
すると、赤いKMFが槍を抜いて構えた。
〈楊藺喂…黎星刻様にお仕えする者だ。〉
あの中華連邦で起こったクーデターの首謀者……!こちらは『黒の騎士団』の正規兵と違い、本職の軍人!甘く見て良い相手ではない!!
「ライル・フェ・ブリタニア様が騎士レイ・コウガ・スレイダー……!ライル様をお守りするわ。」
〈レイ……無理をするな。彼女は手強い!〉
「イエス・ユア・ハイネス!」
ルミナスコーンを展開してランスを突き出すが、相手も槍でそれを受け止める。信じられない。どうやら武器のパワーでは五分、いや、相手が上だ。
ベディヴィエールのロンゴミニアトと良い勝負ね……真っ向からやれば勝ち目はないか。
相手がハーケンを高速回転させて放った。あれは高い攻撃力の武器だ。シールドを構えてニードルブレイザーを展開するが、予想以上の攻撃力に押される。
「つ、強い!」
何とかはじいてハーケンを撃つ。炎鳥も槍で受け止める。
〈流石は皇族の騎士。一筋縄ではいかないか。〉
「お褒めにあずかるわ!」
ランスを展開し、相手も槍を突き出す。
ここだ!ランスの回転で槍の軌道をずらし、ニードルブレイザーを向けた。が、相手も右手で剣を抜いて受け止める。そのまま槍を横に振られるが、それより先にランスを手放して距離を置いた。
〈良い判断だな……場数は踏んでいる。〉
全く……神虎がとんでもない機体だとは聞いていたけど、そのダウンスペック機でコレとは!
それを乗りこなす方も乗りこなす方だ。ソードタイプMVSを抜き、レイは相手の技量を素直に賞賛する。
藺喂は槍を構え、慎重に距離を取る。手強い相手だ。
ハーフだから弱い、等と下らない理屈を掲げない。あのライルが騎士に認めただけあってセンスは間違いなく一流だ。この後、更に磨けば『ラウンズ』クラスにまで伸びるかもしれない。
「コレで発展途上か?全く、恐ろしいよブリタニアは!!」
槍を振り、相手は剣で受け止める。すぐに受け流してシールドを構えるが、それより早くこちらもハーケンで撃ち返す。
極一部でとはいえ、ナンバーズや庶民…混血も積極的に取り立てるブリタニアと大宦官の派閥と反対派に別れた中華連邦では果たして戦争をしたらどうなっていたことか。
E.U.から合流した正規軍の中には彼女をイレヴンのハーフという理由で只『ライルの愛人』程度にしか認識していない者もいたが、百歩譲ってそうだとしても実力も一流だ。彼女と戦えるのは紅月カレンや星刻、藤堂のような凄腕だけだ。
レイと長野の戦い、そしてレイシェフをチラリと見たライルはカリバーンを抜く。
「こうして君と直接戦うのは久しぶりだね…」
〈楽しませてやる、とは行かないぞ?こちらも当初の目的が目の前だからな。〉
それは当然だ。だが、こちらも譲れないのだ。
「最初から全力で行くぞ!」
カリバーンを振り、蒼天が刀で受け止める。右腕で相手を着こうとするが、輻射障壁で止められる。その隙に相手は左腕で掴みかかるが、こちらもクローで左腕をはじく。
距離を置いてハドロン砲を撃ち、相手も輻射波動砲で相殺する。衝撃と双方の熱で海上が揺れ、二機も余波を受ける。
「流石…!」
カリバーンを納め、ロンゴミニアトを構える。蒼天も刀で受け止め、押し返して斬りかかるが受け流して、蹴りを入れる。が、蒼天も指のハーケンを撃ちだし、ベディヴィエールはそれをニードルブレイザーで止める。
〈腕を上げたな!〉
「お互いに!」
コレだ……コレだよ!
ライルは高揚していた。これほどの相手と全力で戦える快楽……これに勝る美酒などない!!
〈殿下!敵の大型砲が両翼に展開しつつあります!〉
ゲイリーの声に気付いて、ライルは熱が冷めるがすぐに冷静になる。
大型砲を…!そう来たか!
両翼から一気に中央まで崩すつもりだ!指揮官の雷斬利……思い切った手に出た!!
「両翼の部隊を大型砲に向かわせろ!こうなっては犠牲を考慮している余裕は無い!!」
「全く!!こっちは私がフルでぶっ放すからその間私を守れる!?」
雛はすぐにハドロンバズーカを連結させ、ウァテスシステムを同時に作動させる。確かに…ここから遠いが見える。
「いっけえぇぇぇ!!」
フルパワーで連結したハドロンバズーカを発射した。ゼットランドはランスロット・グレイルとのドッキングで成功させたが、こちらにはそれがない。一か八かだったが、それは成功した砲撃は左翼の部隊をなぎ払って砲台を護衛する艦隊を直撃した。
砲台は爆発し、周囲の艦隊とKMFも巻き込む。
右翼は秀作のアストラットが突進していた。邪魔なハルバードは航空艦に叩き込んで捨て去り、ハドロンモードのヴァリスで敵をなぎ払う。
「ちっ!あと少しで……!」
だが、右翼の部隊が今ので空いた穴を突いて突進する。それを見て焦ったか、敵の砲台の動きが変わった。
えぇい……!
こうなれば無理をしてでも!!秀作はアストラットをパイロットに掛かるGも無視して突っ込む。体中が痛い。だが、それも機体の損傷も構わずに突っ込んで砲台が迫る。そこへ、上からハリファクスが砲撃をした。
〈もう少しよ、頑張って!〉
「余計なことを…!」
だが、ありがたかった。砲台がヴァリスの射程距離まで来た。ここまで来たらもう通常弾で充分!!
ロックオンには遠いのでとにかく乱射する。弾切れか銃身の暴発が先か、撃ちまくった。そのおかげで、砲台を逃したが砲台を積んだ艦の船底を直撃し、船体が傾いた。
砲台の重量も手伝い、船は沈没した。
〈畑方の後退を援護!全軍、両翼をこのまま崩せ!!〉
ゲイリーが命令し、ブリタニア軍は反撃に転じる。秀作のアストラットは合流したテレサとマルセルのヴィンセントに支えられて帰投した。
「ちっ……無理しすぎたか。」
〈本当よ!〉
〈お前が憎むイレヴンのカミカゼまがいのことをしてどうする!?〉
この俺が、魔物共と?
秀作はその指摘が不愉快だった。しかし……この身体では文句を言う気力もなかった。
大型砲を失いながらも『黒の騎士団』は戦線を維持していた。だが……それでも互いに決めきれずにいつの間にか日が沈んでいた。
アーネストはソティアテスのガトリングでミサイルを撃ち落とし、ハドロン砲で暁を二機撃墜する。
「シルヴィオ殿下、ゼロはまだ出たという報告がありませんか!?」
〈ああ、カゴシマもシマネも同じだ!〉
何故だ?一体、ゼロは何を考えている?まさか、エリア11を囮に本国…いや、それは無い。そんなことをしたら裏切りと見なされて『黒の騎士団』どころか超合集国も分裂してしまう。
ハドロン砲を腰にマウントしてMVSを抜き、暁の指揮官機を撃破する。
美恵の方はライフルで海上艦のブリッジを潰した後で竜胆へ向かう。MVSを抜き、斬りかかる。普通ならば遠いのだが、トレウェリならば話は別だ。『ミカエル騎士団』で運用されたグラッグスと同様に腕が展開式になっているので奇襲性に長けている。
普通よりも遠い間合いから剣を振るわれ、艦上のグラスゴーは虚を突かれて対応できず、両断されて海に落ちた。艦に取り付いたトレウェリは至近距離からパンツァー・フンメルをハーケンで貫いてそのままMVSで艦を斬り裂いた。
「美恵、一度下がる。こちらもエナジーが危うくなってきた。」
〈イエス・マイ・ロード。〉
一度池田を退けたライルはアヴァロンから緊急入電を聞く。
「『黒の騎士団』がトウキョウ湾に?」
〈はい!アヴァロンのシュナイゼル殿下とカゴシマのブラッドリー卿が急行!『グリンダ騎士団』も向かっているそうです!〉
ノネット様とブラッドリー卿が…!ジヴォン卿や枢木卿もいるならばおそらく大丈夫だろう。
「ゲイリー、一度私も下がる!チェイン卿の部隊を!」
やはり……ゼロの狙いはトウキョウだった!カゴシマもここも……全て陽動!
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