[38400] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-36『日本解放作戦…前編2』 |
- 健 - 2019年01月09日 (水) 23時09分
フクオカ沿岸……海棠はモーナットで敵のKMF隊を次々と両断する。向こうもランスロットやガウェインの系列に位置する量産型を投入しているが、総合性能ではモーナットが上だ。
それに、あいつがいないのがこんなにもすがすがしいとは。あんな都合の良いご託だけをいつも並べて自分は絶対に助かろうとするドブネズミ……この戦争でも生き延びていたら背信覚悟で本当にやってしまうか?
〈久しぶりだな、海棠龍一!〉
聞き覚えのある声だ。見ると緑のKMFが長剣で斬りかかり、海棠は二本の剣で受け止める。
「おやおや、俺みたいなおっさんにご執心とは!!男の趣味良くないんじゃないの!?」
エルシリア・ギ・ブリタニアのベイリンだ。まさか、またここでも会えるとは。
〈そういうおしゃべりは私を討ち取ってからにしてもらおうか!〉
ハーケンを躱し、海棠も剣を振る。
前衛の部隊をガトリングでなぎ払ったセラフィナは残弾が半分を切ったガトリングを捨ててハドロンブラスターを連結させ、超長距離ハドロン砲フェイルノートとして艦隊を攻撃する。砲撃は前衛の部隊を突き抜け、中核部隊を撃ち、後方の艦隊にもダメージを与える。
だが、旗艦は討ち取れなかった。流石に距離がありすぎたのだ。一度後退しようとした時、二機のKMFが襲ってきた。中華連邦にもいた暁の指揮官タイプだ。
動きが普通の暁とは違う。機体性能はともかく素人ではなさそうだ。
「どんなパイロットか知らないけど!!」
二本のMVSを抜いて指揮官タイプ二機を相手にする。
裕太は歯ぎしりする。相手は『双剣皇女』の妹、異名だけのお飾り皇女などと甘く見る気はない!
「ここで勝てば、日本を取り戻せるんだ!」
〈熱くならないで、裕太!〉
セーラが輻射波動弾を援護にきたサザーランドに撃ち込み、サザーランドは膨張し、爆散する。
〈『双剣皇女』の片割れだ!〉
他の部隊がセラフィナ・ギ・ブリタニアの機体に向かってくる。すると、これまで斬り合っていたベイランはこちらを蹴り飛ばし、右肩のハドロン砲で四機を撃墜し、残り一機をハーケンで機体を破壊する。
「相手を甘く見すぎだ!」
〈一歩間違えば、私達もあれの仲間入りよ!〉
裕太とセーラは接近戦と射撃を交互に行う連携でベイランに攻撃するが、流石に相手も相手だ。粘る。
エルシリアは海棠のモーナットの動きに改めて見入られる。資料で見た限りではとても軍人とは思えないだらしのない風貌だが、あのE.U.の外人部隊では一年足らずで確固たる立場を築いた上に他の戦線では『ユーロ・ブリタニア』と本国の軍も苦戦したという。
「相変わらず、良い腕だな!」
〈お褒めにあずかり光栄の至り!ってね!〉
ダーインスレイフを二刀流で受け止める。剣のパワーならこちらが上だが相手はそれを承知して正面から受けようとせずに常に受け流せる構えをとっている。距離の取り方も理に適っているし、ブリタニアならば専任騎士や『ラウンズ』もしくはその直属隊としても十分に通用する。
距離を置いて今度は背中のMVSを抜く。MVSを突き出すが、今度は海棠はそれを受け止める。が、それが狙いだ。至近距離からハーケンで攻撃するが、それを見破られて左手の短剣でそれをはじき返す。
流石に手強い。武器のパワーでこちらが勝っているという点を理解し、無理に力押しをしようとしない。機体の特性を理解し、武器のパワーで勝る分、後れをとる機動力と武器の取り回しで対抗してくる。
チラリとセラフィナのベイランを見ると、セラフィナは二機の暁と交戦していた。彼女の実力も一流だが、相手はそれを分かってか二対一の連携で攻めている。
「お前が教えた部下か!?」
〈おたくらとの戦争で家族を亡くした戦災孤児よ!でもって……俺はその子達に殺しの技なんぞを教えた人でなしだよ!!〉
モーナットが距離を置いて機関銃を撃ち、エルシリアもブレイズルミナスでそれを受け止める。
戦災孤児……子供達に保護した恩を着せたか、それとも…!
「我が国への恭順を良しとしない思想教育でもしたか!?」
〈ご想像にお任せするよ!〉
ニイガタでシルヴィオも発進準備を進めていたが、ここに来てもゼロがいないという。
やはり、こちらは陽動か?だとしたらどうやってトウキョウ租界を?
考えながら、ディナダンを発進させる。すぐさま視認した暁をアメノハバキリで斬り裂き、次の機体を串刺しにする。
「さあ、『侍皇子』シルヴィオ・ロ・ブリタニアが相手になるぞ!!私が紛い物と思うのなら、倒して見せろ!!」
〈本物の侍を見せてやるぜ!〉
〈首をはねてやる!!〉
正規の団員が威勢良くシルヴィオのディナダンへ向かったのが見えた。
〈馬鹿、よせ!〉
アサドが叫ぶが、遅かった。大型のKMFが斧を振るって二機の暁を真っ二つにし、残った一機をシルヴィオの機体が左手に持った小太刀でコクピットを串刺しにした。
「所詮、その程度だ……」
ゼロの奇跡に縋り、自分達が最もブリタニアと戦えるとでも錯覚しているか?だとしたら愚かだ……あの藤堂や今捕虜になっているエース、そしてゼロが別格というだけ。他は所詮、只の素人。他のエリアの反対派などと同じく、ゼロがやれたから自分達もやれるとその気になっているだけの愚か者共だ。
「マスカール将軍、奴は私が抑えます。」
〈ああ、頼む。〉
了承を得て、隣で飛ぶウェンディに繋ぐ。
「ウェンディ、シュテルンはどうだ?」
〈大丈夫です、やれます。〉
「よし、ならばあの大型機ゲライントを頼む。二対一では俺でも自信がないからな……足止めだけで良いぞ。」
モニターでウェンディが微笑する。
〈相手は『侍皇子』の側近中の側近、足止めでも苦しいですけど!〉
言うや否やシュテルンがゲライントに斬りかかる。
〈あら、その動き!パイロットが変わったのね!!〉
〈機体の動きだけで分かるとは!〉
〈やだ、女なの?調子狂っちゃうわね!!〉
軽口を叩きながら、ゲライントはパワーでシュテルンを押し切り、ウェンディも一度距離を置く。
一瞬、彼女の安否が心配になった。が、すぐにその感傷を振り払ってアルプトラウムのレーヴァテインの内一本を右手に、もう一本を左腕のドラウプニルに搭載してシルヴィオの機体へ向かう。
「また会ったな!」
〈その声…あの時の、ゼラート・G・ヴァントレーンか!〉
「ああ、楽しめるかな!?」
〈面白い!〉
右腕のレーヴァテインをアメノハバキリで受け流し左腕の剣は小太刀で受け止める。同時に至近距離のハーケンを放つが先にゼラートが距離をとる。
早くも総大将が出たか……ここで雷光を撃てばヴァントレーン達を巻き込む。エナジーで勝負か?
マスカールはシルヴィオ・ロ・ブリタニアが出た報告を聞き、全戦力を投入すべきか一瞬躊躇した。その間に奴の挑発に乗って勝手な行動をした団員が返り討ちに遭い、こちらの迷いを察知してかは知らぬが、ゼラートが相手をしている。
「本命まで持ち応えれば我々に勝機は訪れる!勝ち急ぐな!」
シマネ……ルーカスは敵の大型砲の砲撃で部隊を削られ舌打ちをした。
〈残存部隊はルーカスを中心に集結!敵前衛に砲撃しつつ後退!!〉
ち!何故シュナイゼルはこいつに指揮官を任せたのだ!!第一、この俺がシュナイゼルやコーネリアよりも上だということが何故どいつもこいつも理解できないのか。
まあ、良い。この後でライルを適当な罪状で始末し、奴に近いシルヴィオも抹殺……エルシリアとセラフィナは知りあいの貴族を経由して懐柔する。ギネヴィアとカリーヌは軍事力を傘に黙るし、シュナイゼルも俺の敵ではない。オデュッセウスとウェルナーあたりは放っておいて問題にならない。
ナナリーはどうせお飾り……総督位を剥奪すれば良いし、マリーベルは泳がせてやろう。
そう、全ては俺様のためであり俺様のものだ!
それまではお前に従ってやるよ……
ルーカスはそんな思惑を張り巡らせ、無事な前衛隊と共に砲撃をして敵前衛の突出を牽制する。
斬利は右手を顎に当てる。第五皇子旗下の部隊をあまり削れなかったか……だが、ライルも思った以上に対応が早い。両翼の部隊も奴の軍と『セントガーデンズ』によって進撃を阻まれている。
「大型砲を中央に寄せすぎたのが裏目に出たか……やむを得ん。ピエルス大佐の部隊を前面に。部隊を入れ替えられたら中央から食い破られる。」
ライルはルーカスの部隊と、幸也とノエルを交えた親衛隊と『フォーリン・ナイツ』の古株達を入れ替え、自らも出撃する。
「ヴァリエール郷も出撃されるそうだな。」
〈ええ、調整は万全です。〉
ブリッジの涼子の報告を聞きながら、機体のOSを確認した。確かに問題ない。
「カゴシマでヴァルトシュタイン様が出撃され、ニイガタとフクオカでも皇族の方々が出撃されました!こちらで殿下とヴァリエール郷が出撃されれば勝てます!」
他のメカニックがはしゃぐが、ライルはそうならなかった。
「なら良いが……単純すぎる。」
総司令の黎星刻はカゴシマにいるというが、肝心のゼロがニイガタとフクオカ、そしてこちらシマネにも来ていない。
「ゼロが蓬莱島で待機している?まさかな……」
〈ベディヴィエール発進します!ヴィオレット隊は援護を!ベディヴィエール発進!〉
優衣の管制を聞き、ライルは戦場へと飛び出る。
「あり得ないな。」
発進直前のライルの疑念に答えるようにレイシェフも同じ疑問を否定する。
「と仰いますと、こちらやカゴシマは陽動と?」
「ああ…充分に考え得る。」
シュナイゼル殿下が残っておられるが……果たしてどう来る?
ユーウェインが発進し、側近のクレスとアリアのヴィンセントが後に続く。
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