[38396] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-36『日本解放作戦…前編1』 |
- 健 - 2019年01月06日 (日) 19時18分
エリア11……キュウシュウブロック、カゴシマ租界沿岸。市民を避難させたブリタニア軍は東中華海を突破した黎星刻率いる本隊をビスマルク指揮の元で迎撃を行っていた。
〈ここは既にブリタニアの領土!一兵たりとも上陸させるな!〉
沿岸に陣取ったサザーランドとグロースターが迎撃を行い、『黒の騎士団』も大竜胆を中心とした海上艦隊と航空艦隊で上陸を試みる。艦上に配備された鋼骸とパンツァー・フンメルが対空迎撃を行い、フロートを装備したKMF隊が神虎を先頭に突撃している。
シマネに上陸を試みる部隊は雷斬利の指揮で沿岸部隊に攻撃を仕掛けていた。前衛の艦隊は積極的に砲撃を仕掛けている。艦上には射程距離の長いパンツァー・フンメルと鋼骸が多く配備され、鹵獲されたサザーランドやグラスゴーもいる。しかも…中華連邦の反対勢力が有した超長距離砲を簡略化した砲台を二門撃ったかと思いきや、すぐにその艦隊をさげている。
「初手で大火力攻撃、理に適っている。」
唸るライルにレイシェフも同調する。
〈ええ、攻め急いで見えますがそうせざるを得ないのも理解しています。指揮官の雷斬利、油断できません。〉
情報によれば、その男はかつて大宦官派に着いた士官だったが大宦官の密約を知ると、いち早く星刻らに投降して中華連邦構成国やE.U.脱退国に超合集国への加盟を打診したという。この手も最初に強力な一撃を撃つことでこちらも下手に攻めに転じられないようにしている。堅実だ。
「前に出て剣を振る能力は高くないが、意見調整や後方指揮に長けているタイプか……あまり敵にしたくないですね。」
ゼロみたいに積極的に前に出てくるタイプならば集中攻撃を仕掛けて潰せば、指揮系統に混乱をもたらせる。だが、優れた後方指揮官となるとやりにくい。まず敵の前衛を崩さなければならないのだ。
フクオカでは旧E.U.を中心とした艦隊が上陸を試みていた。バルディーニ将軍もフロート搭載型に換装されたリヴァイアサン級で指揮を執っている。
「敵中央に砲撃を集中、両翼の守りを薄くするのだ!」
中央突破という作戦は理に適っている。だが、本陣と両翼から囲まれる恐れもあるし相手は守りに徹すれば勝てる。持久戦では不利だが敢えて、そちらを選んだ。兵の犠牲を抑えるという意味でも。それに、作戦の本来の趣旨も知っているからだ。
中華連邦の竜胆や航空艦も支援砲撃を積極的に行っている。徐々に中央戦力を削り、両翼だけでなく後ろぞなえも出させ、少しずつ守りを薄くするためだ。
E.U.で海棠が率いた『モノケロス隊』も前衛で指揮を執っている。
「よし、『モノケロス隊』は中央の軍に攻撃、ヒルベルト隊とメイル隊は両翼に揺さぶりをかけろ。我慢比べだ!相手を焦らさせてやれ!」
〈了解!〉
「敵は中央に攻撃を集中しております。おそらくこちらの中央戦力を削り、本陣や両翼の戦力を割かせ、守りを薄くするのが目的でしょう。」
幕僚の分析をエルシリアは正しいと考える。だが、部分突破ではなく最も守りが厚い中央を?あくまでも戦力を削るのが目的?
「妙だ……守り切られればあちらが負けてしまうというのに。」
「姉さんは、こちらが陽動で本命はカゴシマだと?」
「ああ……それに、敵は上陸が目的。だが、持久戦になれば向こうが不利になるはず。」
「カゴシマに旗艦斑鳩は確認されていないそうだな?」
ニイガタのシルヴィオもブランドナーに確認を取る。
「はい。あくまでも中華連邦構成国の軍隊が多いと。」
「日本を奪還できれば、各エリアが蜂起するのにゼロが前線に出ていないだと?」
あの澤崎の一件でゼロが自ら現れ、『ブラック・リベリオン』や中華連邦のクーデターでも最後は前線に出ていたというのにこの一大決戦で前線にいない?
マスカールも大型陸上艦で前線の指揮を執っていた。艦隊とKMFによる波状攻撃で敵の防衛線を消耗させる作戦だ。持久戦がこちらには不利なのは承知。だが、不利を補う武器もこちらにはある。
「敵前衛、突っ込んできます。」
「よし……準備は整っているな?」
「はい、準備完了しております。」
「よし……撃て!」
前衛の艦隊には『ブラック・リベリオン』でも使用された雷光を配備していた。合計三機、全て当時のままだが前衛戦力を崩す手段としては有効だ。三機が一斉射を行い、突出したKMF隊は全て撃墜された。
その隙を着いて、KMF隊が突撃する。しかし、ブリタニアもあの『侍皇子』が指揮するだけあり対応が早く、別の部隊が迎撃に回る。
カゴシマ、フクオカ、シマネ、ニイガタ……どちらでも一進一退の攻防が繰り広げられるが、ゼロの機体…蜃気楼と旗艦斑鳩はいずれにも確認されていなかった。
ブリタニアはエリア11を守る一方でオデュッセウスを始めとした皇族軍が超合集国領に攻め込もうとしている。守り切れば、勝てるが…『黒の騎士団』にとっては攻めきればブリタニアの植民エリアが一斉蜂起し、世界地図が大きく塗り代わる。
「つまりは!」
「ここが天王山!」
ビスマルク・ヴァルトシュタインと皇神楽耶が期せずして同じタイミングでこの戦いの重要性を語り、兵を鼓舞する。どちらにとっても、これは負けられない戦いなのだ。
「ほらほらほらほら!!どんどんかかってきなさいよ!!」
雛はローレンスで敵左翼の迎撃を行っていた。旗下には『フォーリン・ナイツ』も着いている。ハンドガンとMVSでKMFや航空機を切り刻み、海上艦を一隻ハーケンで潰した。
「全く話に……っと、またきた。」
〈『奴隷騎士団』の女だ!!〉
〈天誅を受けろ!!〉
天誅?こいつらは神にでもなったつもりか?神とやらが本当にいるのなら、自分達があそこまで苦しい思いをするはずがない。
雛は目の前に群がるゴミ共を侮蔑してシールドを展開する。合計七機の暁が火器を撃つが、全て阻まれる。爆炎が収まるのと前後してオールレンジボマーを発射して暁を撃墜し、最後の一機のコクピットをこじ開ける。
「ねえ……死ぬの大好きよね?」
パイロットは若い男だ…よく見れば怯えている。
「や、やめてくれ……こ、殺さないでくれ!」
殺さないで?散々、切腹やカミカゼをもてはやすようなことを言って自分が危うくなれば命乞い?
「はあ?あんたらのせいで私みたいなのまで変な偏見押しつけられて、迷惑なの。だから責任とれ。」
そう言って、雛は戦闘中だというのにデリケートに人間を掴み、海に投げ落とした。更に無人になった暁を海上艦へ投げる。迎撃が先に適ったが、その爆炎から出たローレンスが海上艦に取り付いて剣でブリッジを叩きつぶした。
「はい、道開けるわ!出過ぎない程度にね!」
〈イエス・マイ・ロード!〉
秀作はアストラットのハルバードで航空艦のブリッジを吹っ飛ばした。一瞬だけ、中の人間が見えたが関係ない。次にヴァリスをハドロン砲に切り替えてヘリを数機撃墜する。
「なんだ、魔物共は来ないのか?偉大な畑方源流の御孫様が栄誉を与えてやるぞ!?」
わざとオープンチャンネルで大声で怒鳴ってやった。すると、効いたのか獲物が自分から来てくれた。
〈ブリキに唆されたか!〉
〈今解放してやる!〉
〈生け捕りにしろ!〉
やれやれ……この期に及んでまだこれか。呆れて物も言えん。秀作はハーケンで暁二機を捕らえてそのまま隣の機体同士にぶつける。体勢を崩したところで一機をヴァリスで撃ち落とし、もう一機は腰のハーケンでコクピットを潰す。激突した機体も爆発に巻き込まれ、更に残りの一機のコクピットを開いた。中にいたのは二十歳前後の若い女だ。
「最高の栄誉だろう?俺の戦果の一部になれて……」
「や、やめて……助けて…!」
「魔物のくせに命乞い?死ね!!」
「いゃぎゃあ…!」
アストラットの腕で握りつぶして女は肉塊に変わった。すると、後ろから『フォーリン・ナイツ』のグロースターがきた。
〈畑方少佐、出過ぎです!孤立します!〉
孤立、確かに……少し暴れすぎたようだ。
「このまま、俺達はこのあたりで侵攻を停滞させる!後方にも通達忘れるな!」
向かってきた他の暁をMVSで両断して、ヴァリスで海上艦にいる鋼骸を撃破しながら秀作も指揮下のKMF隊に指示を出す。
「斬利様、両翼が崩れています!」
斬利は報告を聞いて歯ぎしりする。KMFはあの第八皇子の部隊だという。しかも…畑方秀作に川村雛という、当時のエリア11でも問題児だったなどと噂されていた連中だ。
「砲撃しつつ戦線を一度下げ、長距離砲を始めとした艦砲で牽制。その部隊を孤立に追い込むぞ。」
「敵が戦線を下げます。」
涼子の報告を聞き、中央のルーカス軍が攻め込もうとする。雛と秀作が率いる部隊も追うが…
「追うな、孤立させられる。」
全軍が進撃を中止して下がる。
「殿下、おそらくあの大型砲かと……」
ゲイリーの進言通りだ。あの大型砲が来る……
「前衛部隊も下げろ。あの大型砲が来る!」
「気付いたか…!だが、撃て!」
大型砲が前衛部隊と先陣を切ったルーカス軍をなぎ払う。更に後ろの艦も数隻沈められる。
「この機を逃すな!追撃に移行する!」
「チェン・ツゥ・ツィー!」
リンウェイも炎鳥で出撃し、方天戟でフロート装備のサザーランドを両断してハーケンを射出する。高速回転するハーケン先端のブレードがウォードの装甲を抉り、中の人間もミンチになる。
神虎よりはマシだと思っていたが、こいつもこいつでとんでもない怪物だな!
だが、『ナイトオブラウンズ』に匹敵する相手をする場合にはその方が良い。
いるかな、ライル?
クラリスの『ヒポグリフ隊』は中央後方に備えていた。池田の『ベヒモス隊』も同様で、前には楊藺喂の部隊とデルクが率いる『リンドヴルム隊』が出ている。
デルクのメリサンドはインセクトモードとフロートの機能で海上を高速で移動する。この機体には高性能のソナーもあり、海中のポートマンUを補足した。後退と同時にKMFモードに変形してメリサンドは浮上し、攻撃を躱す。そのまま突っ込んでカールレオン級のフロートにルミナスコーンを纏ったウルナエッジを叩き込み、航行能力を奪った。
「流石は『w-ZERO』のKMF。元が高性能なだけあってサザーランドなどより遙かに良い。」
全く、これだけの高性能機を造ったアンナ・クレマンをもっと積極的に取り立てれば今頃サザーランドに相当するKMFぐらい開発できたというのに。政府のバカ共ときたら!
苛立ちながらも道を空けようとするが、一機のヴィンセントが突出してきた。
ルミナスコーンのランスを回転させて突き出すが、デルクもウルナエッジで受け止めた。
〈ライル・フェ・ブリタニア様が騎士、レイ・コウガ・スレイダー!これ以上は行かせないわよ!〉
|
|