[38393] コードギアス 追憶のエミリオ intermission 門出 |
- JIN - 2019年01月01日 (火) 16時19分
北ユーラシア。旧神聖ブリタニア帝国皇族直轄領エカテリンブルク。
かつての「ユーロ・ブリタニア事変」後、現地に直接進出した本国皇族勢のために設定された特別地域であり、悪逆皇帝の本国革命から逃れた、旧皇族並びに貴族勢力にとっての最後の拠点。
ただし現地の周辺は、旧ユーロ・ブリタニアの流れを汲む、ヴェランス大公家の勢力圏に包囲される形となっており、生計もそちらからの援助に依存する形となっている。
いわばかつての立場が逆転した形になっており、それに対し、卑屈になる者もいれば、逆に居丈高になる者もいる。
そして、そうした彼らにもいよいよ決断の時が迫ろうとしていた。
「警護の方は万全なんでしょうね! ゴッドバルト卿!」
「はい。大公閣下からの連絡では、まず東部から帰還中のナイトオブリングスを先行させ、その後に殿下の専用車両をという事でした」
物々しい動きのエカテリンブルク中央駅。
外では多くの雪が降り続ける中、多くの兵士が動き回っている。
その中で外套に身を固め、肩を怒らせながら様々な指示を周囲に与えている、二十代後半風の眼鏡の女性。
エーリカ・エイゼンシュタイン子爵。
それに対し、同じく冬服を重ねながら、腰に剣を下げた騎士風の二十代前半の女性。
皇族専任騎士リリーシャ・ゴットバルト。
「まったく…信用していいものなのかしら、あの男。ナイトオブリングスなど、僭越も甚だしい…」
「いまさら何を…あの大公にとって、殿下はその立場を強めるのにも必要な方です。殿下に危害を与えたところで大公にとって得な事は何もありません。それはこの前も話し合ったはず…」
「分かってます!」
苛立たし気に話を遮るエーリカ。
それに対し目を背けず、ジッとばかりに相手に視線を送るリリーシャ。
何を言わなくとも、それに互いに意味は通じる。
(いいですか…私たちは…殿下のために、場合によっては…あの大公にこの身すら提供しなければならないのですよ…)
(分かってますわよ!)
それ以上は考えたくもないといった調子で、足を踏み鳴らすように背を向けてその場を歩き去るエーリカ。
その立ち去る姿を眺めながら、改めて考えを巡らすリリーシャ。
(でも…たとえ色仕掛けでも…あんな方を大公閣下が相手にされるかしら…?)
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