[38383] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-35『超合集国…後編』 |
- 健 - 2018年12月24日 (月) 21時43分
皇帝による宣戦布告が行われた。これでブリタニアは動きをとることが可能になった。すぐさまシュナイゼル指揮の下で全軍に戦闘準備命令が下され、以前から進められていたキュウシュウ、チュウゴク、ホクリクの配備が更に強固にされることとなる。
太平洋からはオルドリン復帰後にマリーベルの元を離反した『グリンダ騎士団』が本国で機体を改良し、ノネット指揮の下でトウキョウ租界へ向かっている。最も戦力が集中するであろうカゴシマにはビスマルクとルキアーノが向かうことが確定している。ライルとルーカスは『セントガーデンズ』と共にシマネへ向かい、イズモ沿岸で迎え撃つことになっている。シルヴィオはニイガタ沿岸に陣取り、エルシリアとセラフィナはかつて澤崎敦が新日本政府を立ち上げたフクオカ基地へ向かうことになった。
「せいぜい足を引っ張らないことだな、お二人さん?」
ルーカスの慇懃無礼な態度に全員が不快感を露わにするが、それを相手にせずにフィリアを連れてルーカスは去って行く。
「兄様、あいつを敵ごと撃っても良いですか?」
ライルが怒りを露わにシュナイゼルに確認を取るが、シュナイゼルはそれを窘める。
「今は彼の軍も大事な戦力なんだ……それに、彼のような人も国を動かす上で必要なものなんだ。」
必要悪という意味だろう。シュナイゼルの人となりを知っている弟妹達はそれとなく意図を察し、それ以上は追求しなかった。そんな暇は無いからだ。
「私はスザク君達と共にナナリーを補佐する。君達は予定通り、現地へ合流してくれ。ニイガタはシルヴィオ、フクオカはエルシリアが、シマネの方はライルが指揮を執ってくれ。」
「私が、ですか?しかし…お言葉ですがヴァリエール郷の方が。」
「勿論レイシェフに補佐を命じる。だが、これだけの大きな戦いだ。社会的な地位では上にある君が指揮を執るとなれば、兵達の士気も高まる。特に君を慕う名誉ブリタニア人達にはね。」
なるほど……元々問題視されるようなことがあるとはいえ、皇族としての働きを果たし能力も申し分ない。ルーカスを選ばなかったのは彼では防衛線を維持できないし、兵達の信頼が乏しいからだろう。ならば、前線の経験が非常に高いライルということか。
「分かりました………その代わり、ルーカスには言い聞かせてくださいよ?貴方くらいしかあいつが言うことを聞かないんですから。」
「ああ、分かっているとも。」
雛はローレンスの調整を行っていた。ここでゼロか藤堂、とまでは行かなくともE.U.か中華連邦の将官一人か二人を討ち取れば、名誉騎士候かそれは無理でも左官まで昇進できるかもしれない。そうすれば、給料が上がってもっと良い暮らしが出来る。
「さぁて……私の生活のためにあいつらにはどんどん死んでもらわないとね。」
どうせカミカゼだ切腹だと喚く奴らがゼロにすり寄っているだけだ。中華連邦は分からないが、E.U.はどうせゼロの下で甘い汁を吸おうと思っている役立たず共が大半だ。真面目に国を考えるなら、あそこまで無責任な対応はしない。
これで騎士候になれば、堂々とウェルナーに仕えることも……何故、ここでウェルナーが出てくる?
『無理をしないでくださいね……まだ、色々と話したいし訓練にも付き添って欲しいですから。』
見送りに来てくれた時、正直嬉しかった。家族が死んで独りぼっちになった。周りは全て自分が生きるための踏み台……のはず、だったのに。ライルと出会って変わった。
捨て駒扱いせず、一兵士と扱い……どういう偶然かウェルナーと出会い、彼に会うのが楽しみで………本国で暮らすことが出来るならば、と。
「ないない…あのゴミ共みたいな発想してどうする?」
「長野…家族の方は?」
「はい、恭順派の勢いが強いゲットーに避難したそうです。ナナリー総督が万が一にと、現地の軍にも保護を申し込んだと。」
少なくとも、これでトウキョウで巻き込まれる心配はなくなった。バルテリンク卿の方はまだ分からないが……後は、戦うのみだ。
ゲイリーも安心したのか、それ以上は何も聞いてこなかった。
「秀作…」
セラフィナに呼び止められた。振り向くと、セラフィナは何か不安そうだ。
「おい、どうした?」
「その…無理しないで。復讐したい気持ちは分かるけど……」
「その言葉、そっくり返す。お前こそ腑抜けるな。」
セラフィナが少しだけ不機嫌な顔になる。
「貴方こそ…復讐一色で眼を曇らせないで。」
「………分かった。」
微笑したセラフィナが頬にキスをして、二人は自分の軍へ戻った。
超合集国でも早速、進軍の準備が始まった。ゼロと関わりが深い軍では星刻率いる部隊が東中華海を経由し、カゴシマからのキュウシュウ上陸を行う。同時に藤堂率いる別働隊が手薄になるトウキョウ租界を奇襲する手はずになっている。ゼロも先行してトウキョウ租界の準備に入るとのことだ。
「大丈夫……なのかな?」
未だにラルフの不安は脱ぐ得なかった。今回、ラルフは合流した軍と共にシマネに参加するが、ゼロの動向もそれに伴う不協和音がどうしても不安でならなかった。アッシュフォード学園の学生でブリタニア側の人間だったというロロ・ランペルージという学生もだが、何よりあの『オレンジ』……純血派のジェレミア・ゴッドバルトが突然こちらに来たのが信じられなかった。
『オレンジ』が事実なのか、それとも只のハッタリだったのかは分からない。だが、純血派のトップとしての座を奪われて失墜したジェレミアにとってゼロは仇敵であるはず。なのに、なぜ?
バルディーニはフクオカ上陸の指揮を執ることになった。海棠もその指揮下に入っている。マスカールはニイガタからの上陸を行い、ホクリクを抑える作戦をとることになっている。ゼラートもニイガタに参加する。池田は中華連邦の雷斬利率いる部隊の元でシマネへ攻め込むこととなっている。
果たして、上手くいくのだろうか………最大の危機にして最大のチャンス……ここで勝利することが出来れば、ブリタニアの植民エリアが決起する。これをきっかけにブリタニアに各エリアからの撤退のための会談に座らせることが出来る。
せめて、そこまではもって欲しいものだ。
「それじゃあ、スザク。無理はするなよ。」
「お互いにね……」
良二とスザクは拳をぶつけ合い、良二は旗艦へ戻った。
それを見送ったスザクはため息をつく。皇帝の宣戦布告の直後に賭けられたあの電話………
今更、信じてもらおうなどと。今まで、どれだけ俺を…みんなを騙してきたと思っているんだ!!!
血がにじみ出るほどに拳を握りながら、スザクはあの場所へ向かう準備を進める。あの、出会いの場所へ………
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