[38370] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-34『因縁の地…後編3』 |
- 健 - 2018年12月18日 (火) 00時06分
「あの時はありがとうございました、ギルフォード卿。」
「いや…私は只近くにいただけだ。だが……いきなり拳や蹴りを入れるのはやめてもらいたいな。」
レイはギルフォードと対面していた。あの時、結果として彼の近くにいたために助かった礼だが…
「女として身の危険を感じたんですよ………それで、コーネリア様の事は何か?」
主君の安否を確かめる問いにギルフォードは顔を伏せる。
「いや、何もないのだ……」
「そうですか…」
一体、何があったのだろう?『ブラック・リベリオン』の後、すぐに彼女は姿を消した。ユーフェミアの死が原因でまさか、人知れず?だとしても、ギルフォードや『グラストンナイツ』の前でそんな事言えるわけがない。
「ライル様も気にしておられるのです……シュナイゼル殿下にも連絡が無いとは一体。」
「ああ、だが…私は信じているのだ。姫様はいずこかで、ユーフェミア様の真相を確かめよとしているのでは、と。」
ユーフェミアの……確かにレイもあれは妙だと思う。だが、状況証拠だけでも彼女の潔白の証明など出来るわけがない。それでも尚、コーネリアは勿論彼もユーフェミアを信じているのだ。
「スレイダー卿……君も軍務は大事だが、まだ若い。落ち着いたら大学にでも通ってみたらどうだ?枢木卿も学生と兼任しているのだ、君が同じことをしても不自然はない。」
「………お、お心遣いありがとうございました。」
「いや、枢木卿にも同じような反応をされたな。彼も君も、ジヴォン卿も私から見れば騎士として後輩だからね。」
スザクやオルドリンも……彼らも何かアドバイスをされたのか。
「ブリタニア人全般に貴方のような人がもっといたら、と思えてなりません。」
すると、ギルフォードは苦笑して「手厳しいね。」と答えた。
ライルは優衣を抱き、豊満な胸が胸板で潰れている感触を心地良く思いながら彼女から離れ、頬にキスをしてベッドを出る。ガウンを羽織って先刻の資料を確認した。中華連邦で鹵獲した後、ロイドとセシルが改良した紅蓮だ。涼子から資料も受け取ったエナジーウィングを搭載した上にパワーも以前とは比較にならないほどに向上している。
もし、これと戦ったら………
勝てる?否、果たして何分持ち応えられるか……これと戦う場合、こちらも同等の改良をしなければならない。だが、問題はそうなる場合こちらにエナジーウィングの消耗に耐えられる機体があるか、ということになる。
現状、耐えられそうな機体はベディヴィエール。後はアストラットだ……私見ではハリファクス、ローレンス、ガングラン、パラディンも耐えられそうだがあちらは機体のコンセプトと合わない。
噂では枢木卿のランスロットも新しいのを開発中らしいが……おそらく、あれもエナジーウィング搭載型だろう。第九世代KMF………第八世代に相当する『ラウンズ』専用機さえ凌駕する化け物、だが果たしてそれらを量産化する事など可能なのか?サクラダイトの使用量もバカにならない。
「……だが、今はゼロだ。どう出る?」
幸也は憎悪に燃えていた。会議では、『黒の騎士団』が中華連邦とE.U.脱退国を取り込んで新しい国家を作ろうとしているという。しかも、日本を始めとした亡命政権も賛同しているという。つまり、奴らは『解放戦争』という名の大義名分を得た……それは…
「正義の戦争だと?ふざけやがって…!そんな戦争も…そんな戦争を掲げる国家もそこの人間も俺が殺し尽くしてやる!!」
正義……かつて幸也も憧れたが、今は違う。そんなものは只のまやかしだ。正義を名乗るブリタニア軍に父は殺され、正義の戦いのためだという日本軍人に母と姉は身体を弄ばれて殺された。
「そんなものにホイホイ乗る輩も、皆殺しにしてやる!!ブリタニアなんて知った事か!!そんな国、存在自体が罪だ!!」
そうだ!正義を名乗る者も、国も、世界も俺が滅ぼす!!ブリタニアはそのための道具だ!!
だが…復讐を果たして、その後どうする?ライルに仕えるようになってから抱き始めて疑問だ……復讐が果たせるなら死んでも良いし、何も残らなくて良いと思っていた。そのはずなのに………
ふと、セルフィーの顔が脳裏をよぎった。
彼女と一緒に……いや、そんな事より復讐だ!奴らは正義のためといって彼女だって母と姉みたいにする!そうに決まっている!!
デビーはKMFの調整を行っていた。カスタマイズされたこのヴィンセントはいい機体だ。『黒の騎士団』の新型機にも充分対抗できる。ここで実績を挙げれば、家名存続の目処も立つ。そうすれば……
あの婚約者と結婚せずに済む、か?
我が侭なのは分かっている。だが、やはりデビーはあの婚約者だけはいやだった。ことあるごとにライル軍のナンバーズ出身者や庶民出どころか、自分が気に入らない貴族出身者を侮辱するあの特権意識だけ肥大化した女だけは……
「誰かもう少しまともなのはいないものか……そもそも父達が許してくれるか。」
憂鬱だ……何故だ?貴族の後継者としての務めを果たし、跡継ぎを生んでその子を育てる。それで良いはずなのに………
「殿下の影響?まさかな…」
あの皇族らしからぬ皇子の世話を焼くのは好きだった。手のかかる弟が出来たみたいで………良い気分だった。そう、彼と過ごすのが楽しかった。
ヴァルスティードはセルフィーと共にガングランの調整をしていた。
「ねえ、兄さん……万が一『黒の騎士団』が勝ったら、私達どうなるの?」
「裏切り者として殺されるな……お前と姉さんなら望みがありそうだが。」
だが、セルフィーはその望みの意味を知っていた。
「だったら兄さんと一緒に殺されたい。あの政治家共やボンボン共がゼロにすり寄って、その権威笠に私と姉さんを好きにするなら……だったら殿下の方がマシよ。」
それは本音だ……少なくとも、姉が関係を持ち彼との繋がりを幸せそうに語っていた。それだけの人間だという事はもう分かる………
実際、彼に会わなければ今頃兄もどこかの貴婦人を、自分と姉は有紗達共々あの貴族やその取り巻き共にその身体を貪られていた。
「感謝している……それは私だって同じよ。」
「逆に言えば、チャンスなんだ。いきなりとんでもない戦闘だが、ここで騎士候になればあの『英雄皇女』様だって俺達をテロリストだなんて言いがかりで殺せなくなる。父さんの立場も守られるぜ。」
「……劇場の方は大丈夫みたいだけど、やっぱり私達がいなくてお客は減ってるみたい。」
元々E.U.時代から安定していたが、看板になっていた三人が抜けた穴は大きいようだ。
「でも…売れっ子のダンサーが軍人になったなんてばれたら、客足遠のきそう。」
「アンダーグラウンドで血と硝煙まみれになっておいて…今更だぞ。」
「それもそうね。」
そして……蓬莱島で世界に発表する一大式典のセレモニーが鳴り響こうとしていた。
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