[38364] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-34『因縁の地…後編1』 |
- 健 - 2018年12月04日 (火) 01時28分
スザクは一抹の不安を抱えた。E.U.から戻ったあの後、疑念を抱いてアッシュフォード学園に戻ってみれば予感は的中した。だが、そうなればナナリーは?
皇帝がナナリーにエリア11の総督となるのを認めたのも、自分を就かせたのも………
そうだとすれば、ナナリーは?まさか、陛下はナナリーを殺す?
どうすれば、と悩むスザクの前に二人の少女が現れた。よく見ると、同じ顔だ。双子?貴族ならば、双子は片割れを養子に出しているはず。それに、制服は…
「貴方が、『ナイトオブセブン』枢木スザク卿ですね?」
「そうだ…」
「私は『ユーロ・ブリタニア』の『四大騎士団』が一つ、『聖ラファエル騎士団』のルビー・メイフィールドです。」
「同じく、『聖ミカエル騎士団』のテレサ・スクラーリです。」
『四大騎士団』?あの後、シャイング郷の謀略で『四大騎士団』は壊滅し、総帥も『ラファエル騎士団』のファルネーゼしか生き残らなかったと聞き、合併を拒んだ貴族達は既に討たれている。
「今は、皇族の旗下に?」
「は。」
ルビーが返答する。
「エルシリア様のご温情により、『ラファエル騎士団』の制服の着用も許され、今でも我が忠義はファルネーゼ郷と共に。」
「私も、今は『ミカエル騎士団』からライル殿下の元にお仕えしておりますが、忠義はマンフレディ卿の物です。」
隣のテレサも同様に答える。
「そうか……ところで、プライベートな質問になるが…君達は双子か?」
「そうです……妹のテレサは養子に出されましたが、里親は死亡し…父が出資する孤児院に入っていました。」
なるほど……おおよそ掴めた。おそらく、その孤児院をルビーが訪れた時に出会い、テレサは自分の出自を知ったのだろう。
「……身の上話をしにきただけか?私も忙しいのだが…」
「………本題はここです。私と姉は貴方を恨んでいます。騎士でありながら……ユーフェミア様…ユフィを救えなかった貴方を!」
ユーフェミアの名前が出たスザクは半歩下がった。だが、それ以上に彼女をその愛称で呼ぶのは実姉のコーネリア以外にはナナリーとシュナイゼル、ライル……そして、スザク本人くらいだ。
「私を、斬るのか?」
「いえ……言いたいことが多すぎ、何を言いたいのか自分でも分かりませんがこれだけは………本国で私はユフィと同じ学校に通って、貴方のことも間接的ですが聞いています。妹も私を通じて、ユフィと親しかった。だから…救えなかった貴方を恨んでいる。」
ユフィと同じ?……
彼女は確かに学生だった……まさか、その学友がこの『ラファエル騎士団』の団員とは。
「他の友人達はユフィを侮蔑していますが……私とテレサは今でもユフィを信じています。あり得ない……!あんなの…ゼロが何か吹き込んだに決まってるのよ!」
スザクは思わず、涙が出そうになった。皇室だけでなく貴族間でも今や彼女は忌むべき存在。そんな中で、元学友で貴族、しかも『ユーロ・ブリタニア』だった少女が…彼女を信じているとは。
「あのゼロが誰かは分からない……でも、名前を騙っていようがユフィの仇を名乗るなら、私もあいつを殺したい!首をユフィの墓前に捧げたい!」
テレサも恨みを口にする……それは、単純な憎しみではない。コーネリアと同じく、今でも彼女の無実を信じているから。
「私も……信じている。だから…」
「だったら……今度こそゼロを討ち取りなさいよ!三人目が出てきたのなら、その三人目も殺して!」
ルビーの言葉には自分への憎しみもある。そう……自分は憎まれて当然だ……コーネリアとナナリーにしても自分を憎む権利がある。
「今の私は『ラウンズ』だ……だが、かつての主君の友人に誓う。必ず、ゼロを止めると。」
テレサが涙を拭って、睨み付ける。
「私もお姉ちゃんもあいつを殺してやりたいから……『ラウンズ』でも首をはねるのは譲らないから。」
そうだ……ゼロは、あいつはユフィの仇だ。そのはずだ……!なのに………俺は!!
エレーナはライルが政庁に借り受けた居室に呼ばれ、肌を合わせた。ライルは数日または週に一度は今関係を持っている四人の誰かを招いている。本人曰く「牽制」が目的のようだが…不安か何かを紛らわそうとしているのかもしれない。が、エレーナはライルを愛しているし、今こうしてライルに愛されているのが幸せだった。
「ライル…さ、まぁ……!」
赤ん坊みたいに胸を吸いながら攻められたと思えば、今度は体制を変えて後ろから激しく攻められ、胸を揉まれ続けたエレーナは既に腕の力も失い、枕に顔を埋めていた。何度目か分からない快感で、時間の感覚もマヒしそうだ。
「あぁ…ま、またぁ……!」
止めどない快感と絶頂で、エレーナは崩れ落ちた。ライルも流石に疲れたのか、エレーナから離れて彼女の横に着く。そっと髪を撫でて身体を向けると、唇を重ねてエレーナも答える。
「もうすぐ、実戦だ……怖いか?」
「それ…ヴァルとセルフィーに言ってあげて。」
が、ライルは頬を優しく撫でて続ける。
「艦にいるから必ず死なないわけではない…君達が経験したアンダーグラウンドの争いより恐ろしい。私も最初は怖かったんだ。」
「…今は?」
ライルは答えなかった……その代わりにと再び覆い被さって唇を重ねてくる。また繋がり、エレーナは残った僅かな力で両足と両腕でしがみついた。無理をしている……そして、裏に何かある?そんな風に見えてしまいながら、ライルの愛を受け続けた。
シルヴィオはフジ鉱山の画像を見ていた。あの日、木宮ユウキと出会ったあの山の光景は今も覚えている。机に置いてある、当時のツーショット写真は富士山をバックに撮影した物だ。あの頃の富士山は山頂が雪に覆われた美しい景色で、自然も豊かだった。それが今では、採掘プラントが建設された上に麓にはその基地が建設されている。加えて、あの行政特区日本跡地と犠牲者及びユーフェミアの慰霊碑が建てられた。
「何、黄昏れてるのよ?」
木宮だ……後ろから肩を叩いて、コーヒーを出してきた。それを受け取って一口飲み、質問に答える。
「お前と会った頃と、富士山が随分と変わっただろう?……醜悪な姿だ。」
「馴れ初めの地だものね……気持ちは分かるわ。」
「その言い方はやめろ………」
木宮は「失礼。」とだけ詫びる。
「でも……皇族らしくない意見よ?ここがサクラダイトが豊富で、あそこが最も豊かな鉱脈をもつ。」
「分かっているさ…!だが、当時の自然を踏みにじってそれを誇らしげにする感性だけは俺は受け入れられん。」
自然を好むシルヴィオは特に、この富士山には思い入れが強かった。親友と出会った土地であるのも含まれている。
「あんな鉄の蓋を被せて、観光名所にもなりやしない。」
「近づいたら銃殺になる場所よ?」
「それとこれとは話が別だ…」
美恵はトウキョウ租界の街を見下ろした。その下にはイレヴン達が暮らすゲットーもある。自分達、日本人の祖国………
「こんな形で日本に来るとはね…ホント、あいつらには感謝しなきゃ。」
あの両親と同じ姿形をした醜悪なイレヴン共……あいつらが捨ててくれたから、今こうして日本に来ることが出来た。あいつらの遺品もあったが、美恵はそれを全て処分した。
収容所に送られる前の写真が1枚手元にあるが、それだけだ。他はいらない。
「落ち着いたら、こちらに住む気はないか?これまでの実績から、貴族とまではいかなくても租界での居住権を得られるかもしれない。私からも本国に申請してみるが?」
アーネストに聞かれると、美恵は首を横に振った。
「私は死ぬまでアーネスト様にお仕えします。」
「………まだ二十歳にもなっていないのに、いきなり人生の全てを決めて良いのか?お前は比較的自由のある環境なんだ……ここなり、本国なりで大学に通って違う職業に就くなど色々と選択肢があるんだぞ。」
「イレヴンを通わせてくれる大学なんて無いじゃないですか。」
「……名誉騎士候にでもなれば、話は変わる。枢木卿だってここの学校に通っているんだ。」
あの「白き死神」が学校?一体、どういうコネだ?
「『オレンジ事件』の後で亡き第三皇女が計らい、『ブラック・リベリオン』後は長期休学されていたそうだ。」
なるほど、それならばイレヴンの彼が通えるのも頷ける。
「話がそれたが、従軍することに拘ることはないんだ。お前は若いんだ……退役して新しい人生を歩んでも文句は言われない。」
美恵は少し考え、アーネストに唇を重ねた。
「永久就職……させてくれたらそうします?」
その要求にアーネストは一瞬、凍り付いた。
「……難しい注文だ。」
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