[38360] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-34『因縁の地…前編2』 |
- 健 - 2018年11月26日 (月) 22時25分
シルヴィオは出迎えにきたナナリーの手を握った。
「ナナリー、目が見えないんだ。無理をすることはない。」
「いえ、シルヴィオ兄様……決めたことです。私も…」
シルヴィオは目を伏せ、ナナリーの手を放す。
「強情……いや、我が侭なところは昔のままだな。そうしてルルーシュを困らせていた。」
実兄の名が出て、ナナリーは一瞬だけ表情を曇らせる。
「ナナリー……ルルーシュは…」
「ええ、行方不明です。」
行方不明……やはり機情がエリア11にいるのはルルーシュの捜索ではないのか?
だとしたら、一体何のために……
「兄上…そろそろ。」
エルシリアに声をかけられ、シルヴィオも頷く。
「ナナリー、色々と話したいが今はそれどころではない。」
「エル姉様……セラ姉様は?」
「いるわよ。」
セラフィナが手を添え、膝を突く。
「ルルーシュはきっとどこかで無事よ……私も出来るだけ調べるから。」
「ありがとうございます。」
三人より一日遅れで着く予定のルーカスはフィリアを抱いていた。この女の身体は良い。だが……本当に飽きてきている。あの貢ぎ物共はまだしばらく楽しめるが………エリア24から本国へ送られたというツーフォーのダンサー…姉と妹の方は早々見つからない上玉だった。
「ああ…ルーカス殿下ぁ……」
フィリアがしがみつき、唇に吸い付く。ルーカスも更に攻め立て、ふさがれた唇でフィリアが泣き、それを堪能するが…
ちっ!ライルの奴、俺様に相応しい女共に手を着けるとは!!
あの侍女や秘書官、ギースが目を付けている専任騎士だけでも奴には相応しくないというのに、挙げ句あのフランスの女に引けを取らぬ上玉を。
あれほどの女は俺にこそ相応しいのだ。ゼロの後で奴を始末したら奴に汚された身体を清め、俺に従順に躾けねばな…
フィリアが塞がれた唇で叫び、ルーカスは離れて脇を見る。
「今度はお前だ。」
「ひぃ…もう、許してぇ…」
脇で怯えて見ていた下級貴族の娘を引っ張り、手に収まるほどの大きさで形の良い胸を掴んだ。フィリアより前に抱かれたベラルーシの女はうつぶせに倒れ、ルーカスを見ていたが既に目がうつろになっていた。
ユリアナとリュウタが帰った翌日………ライルはレイを連れて捕虜107号、紅月カレンの元へ向かっていた。彼女は枢木スザクと同じアッシュフォード学園の生徒で、『ユーロ・ブリタニア』のシュタットフェルト家当主と日本人女性の間に生まれたハーフだという。もっとも、その母は一年前にリフレインに手を出して現在も入院中だという。『黒の騎士団』に身を投じた娘の母を治療しているのは娘への情なのかは分からない。だが、ライルはまだ未練がある元婚約者の頼みを優先していた。
「紅月カレンさん…ですね。」
手配画像では見たが、確かに容姿はブリタニア人寄りでよく整っている。学園では人気があったというだけあり、同じブリタニア人ならばサラに負けていないだろう。
「そういう貴方は『ブリタニアの狂戦士(バーサーカー)』さん?」
「ええ……彼女は私の騎士レイ・コウガ・スレイダー。君と同じだよ。」
「色々……ハーフ?」
レイが「そうよ。」と答える。
「どうしてブリタニアに?」
「…父は戦争でブリタニア兵に殺されたわ。訓練の的なんて遊びで……」
「そんな…それでなんでブリタニアに着いたのよ!?」
レイはその言いように自制心を働かせながら反論する。
「貴族の母は私を引き取ってくれた…本国に呼ばれてその間に戦争になって……!反対を押し切って後継者として引き取ってくれた…!それとも……貴女は父親をブリタニアに殺されたから、日本のために戦えと?それで母殺しを私にしろというの?」
『母殺し』というのが効いたのか、紅月カレンは言葉に詰まる。しかし、また言い返す。
「それは…あくまで日本の…!」
「他の日本人がそれを考慮してくれるとでも?私に言わせれば、貴女のアッシュフォードの学生は巻き込みたくないというのも幻想よ。」
「げ、幻想?」
「日本人だけはブリタニアみたいなことをしないなんて保証はどこにもないわ……独立記念だなんだといって遊びで子供を殺すかもしれない。ホテルジャックや他のテロを見れば分かるでしょ?」
それはレイが見てきたものだ……独立と関係のない商業施設や駅構内と只人がいるところだけを狙う本当に独立に繋がらないテロが多かった。
「貴女が『黒の騎士団』に着いたのにも相応の理由があると思うわ。でもね…私がブリタニアを選んだのにも相応の理由があるの。ハーフの私を産んで後ろ指を指されるお母さんを認めさせるために…!」
カレンは言い返せなかった。彼女が同じハーフであり、同じく母親が戦う動機になっていること……カレンにとって心が安らぐ場所だったアッシュフォード学園……絶対にそこが巻き込まれない保証などないという糾弾………
「そうやって、その子や他の日本人を唆して……いろんな女の子を口説いたの?」
ライルを睨み付けるが、その言いようにレイの顔が憤怒に染まった。
「結局、あんたも同じなの?都合の良い時だけ私を日本人と扱って…意にそぐわなければ裏切り者扱いするあのクズ共と!!」
「な、何言ってるのよ…!?都合の良い時だけって…!」
が、カレンはその言葉の意味が分かった。彼女は…自分と真逆の人生だったんだ。日本時代、カレンもブリタニアのハーフで後ろ指を指され、いじめられることがあった。だが、学校の成績はよく先生の受けもよかった。兄のナオトも受け入れられていたが…母がもたなかった。転校が多かったのもそれだ……
「あ、貴女は…日本時代……」
「ええ……幼稚園の頃から悪い子扱い。悪戯の犯人にされ、学校でも言いがかりの嵐、お父さんも会社で嫌がらせを受け、家にまでそんな電話が来る始末……!占領されたらスパイ扱いしておいて…ブリタニア軍に入れば裏切り者!」
次第にレイの両目から涙が流れて、どこか壊れたように笑っていた。
「分かる?こんな身勝手な奴らばかりで…親しか味方がいない子供の気持ちが…!お父さんに文句つけてた親戚も■んで…はっきり言ってざまあみろよ!!お母さんを馬鹿にした奴らも私が騎士になった途端愛想よくして……呪って、願ってそうなるのなら喜んでそうする……ライル様達以外のブリタニア人と枢木スザクも含めてウチの同僚以外の日本人はみんな■って!」
カレンはそれを否定しない……否、出来るわけがない。正に、彼女は自分と正反対だ。動機以外の全てが……
「正直、貴女とはブリタニアか日本のどっちかで会いたかったわ。会えたら、良い友達になれたかもしれない…」
「……え、ええ。」
彼女の憎悪は何となく分かった。カレンもレジスタンスになった頃は外見で色々と言われた………
この子はもう一人の私……
そこへ、ライルが咳払いをして1枚の紙を見せる。
「私の元婚約者で、君の元学友だったサラ・クラウザーの手紙だ。読んで…」
『親愛なるカレン・シュタットフェルト改め紅月カレンさん……お元気でしょうか?私は今、ブリタニア本国の高校に通っています。生徒会のみんなともたまに連絡を取り合っており、みんなも元気そうです。
私は婚約相手だったライル・フェ・ブリタニア様に振られてしまいました。父の不正が原因で、私もそれを正すために協力をしましたが、やはり婚約の解消は免れ得ない物でした。
本気で好きになった人の大事な人を危険にさらした父達を正直私も許せないです。只…貴女が学校を休みがちだった理由がそちらで言うレジスタンス活動と聞いた時は正直、よく分からなかったです。貴女にとって、私達は日本を奪った憎いブリタニア人に過ぎず、スザク君も只の裏切り者だったのでしょうか?
もし、そうでないのなら機会を得てもう一度会いたいです。そして、また生徒会のみんなと男女逆転祭りやクラブハウスでの舞踏会をしたいです。
元アッシュフォード学園二年 サラ・クラウザー』
カレンは手紙を黙読し、涙が流れた。騙していたのに……あの子は今でも………日本人のスザクにも特に偏見なく接したあの子は…
涙を拭い、カレンはライルに問う。
「どうして、婚約を解消したの?」
「………理由は色々あるが、婚約を継続したまま父を裁けば共謀を疑われる恐れがあった。私はそちらを懸念した。」
だが、ライルは手紙を折りたたんで羨むような視線を向ける。
「羨ましいよ……こんな風に気にかけてくれる友人がいて。」
「ホント、得がたきは良き友人よね。」
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