[38356] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-34『因縁の地…前編1』 |
- 健 - 2018年11月21日 (水) 23時44分
ライルはエリア11に着くと、ユリアナとリュウタを政庁に呼んだ。情勢が情勢だけに強引に詰め込んだスケジュールで会いに行く時間がないからだ。
本国土産のクッキーをだしながら、ライルは二人に告げる。
「単刀直入に言う……本国へ行って欲しい。」
「本国、ですか?…………ゼロに関係が?」
ユリアナの問いにライルは何も言わずに頷き、リュウタが反応する。
「ゼロが来るって……でもお兄ちゃん………じゃなくて、殿下と枢木スザクがいるんでしょ?だったらあんな奴ら…」
が、ライルは厳しい口調でリュウタに言い聞かせる。
「リュウタ、私も枢木スザクも絶対無敵というわけじゃないんだ。負ける時は負ける。そうなれば、君達を守ることが出来ない。本国へ行くのが無理なら、少しで良いからトウキョウ租界を離れて欲しい。」
既に父親のバルテリンク卿にも話を持ちかけている。文官の彼はすぐには動けないが、二人が離れることについては共感していた。だが、時間がそれを許してくれるかどうか……
今回は部下達にも里帰りをさせてあげられない。だからナナリーを通じて彼らの親族にトウキョウを離れるように伝えてはいる。
特に…長野の方は租界に住んでおり、その危険度は遙かに上だ。幸い治安が安定したゲットーに避難する手はずが整いつつある。間に合えば良いが……
「とにかく、友人として君達が心配なんだ。出来るだけ早く動いて欲しい。」
涼子は格納庫へ来ていた。報告にあった紅蓮を見るためだ。ライルが話を通しており、丁度そこには『キャメロット』のロイド・アスプルンドとセシル・クルーミーがいた。
「失礼します。第八皇子隷下技術部門の木藤涼子軍曹です。」
「『キャメロット』のセシル・クルーミー少佐です。」
「あらぁー、君だね。ライル殿下が言ってたメカニックの子は?」
ロイドのとても軍人とは思えない態度に涼子は呆気にとられた。
「そ、そうです……」
「いやぁ、君のKMFの考案ちょっと見たけど面白いねぇ。ライル殿下のところのKMFの調整も君がしてるそうだし……ウチに来ない?」
「ロイドさん?」
セシルが穏やかなはずなのに威圧する様子を見せた。途端にロイドが萎縮して、咳払いをする。
「ええと、ランスロットと紅蓮を見たいそうだったね。」
「はい…特に紅蓮を改造したと聞いたので。」
見上げると、確かにあの蒼天やシュテルンと同じフォルムの赤いKMFがあった。エリア24で確認されたアマネセールという機体にどことなく近い…いや、アマネセールが紅蓮によく似ていると言うべきだろう。
「エナジーウィングのデータをいただきたいのですが、よろしいでしょうか?量産化やライル殿下の機体の改良に使えるかもしれないので。」
「良いよ、データも取れるし。」
ロイドが快く了承し、涼子は端末でエナジーウィングのデータを受け取る。同時に紅蓮のデータも一部だが受け取り、そのデータを見た涼子は息を呑んだ。
「なに、これ……こんなの乗りこなせる人いるの?」
元々が高性能の紅蓮であったが、これはもはや化け物の域だ。元のパイロットかスザク…或いは『ラウンズ』クラスのパイロットでなければ扱えないのでは?
長野は租界に住む妻子と連絡を取った。
「すまない、せっかく来たのに今回は帰れそうにない。」
〈いえ、そういう仕事だから仕方ないわ……絵理も心配しているから、無理だけはしないでちょうだい。〉
妻の君子に申し訳ないと思い、長野も「分かった。」とだけ答える。
「絵理はどうだ?勉強の方は…はかどっているか?」
〈ええ、何とかね……貴方が薦めたアッシュフォード学園に入れるかはまだ分からないけど。〉
「オープンのあそこは枢木卿も通われている……最近は『ナイトオブスリー』と『ナイトオブシックス』も通っているからな。」
〈そんな偉い人と同じ学校じゃ、あの子が緊張するわね。〉
長野は苦笑し、「そろそろ切るぞ。」と告げる。
〈ええ、ありがとう。携帯を持たせてもらっているから……ゲットーへの避難が終わったらまた折を見て連絡するわ。〉
マルセルはヴィンセントの調整を行いながら、複雑な心境であった。あの頃……E.U.が収容所に隔離したイレヴンの大地を訪れ、それを取り戻そうとするイレヴンと戦おうとしている。自分と同じくブリタニアに従う道を選んだイレヴンも共に……
「どうなっているのか、この世界は……だが。」
ここで実績を挙げれば、『ガブリエル騎士団』ひいては『ユーロ・ブリタニア』の信用も回復できる。そうすれば、E.U.方面の統治も許される可能性もある。
そうだ……俺はE.U.に復讐する。その上で、『ユーロ・ブリタニア』こそが真の祖国だと人々に伝えるんだ。俺達が支持した革命政府は腐っていると…!!
そして、シルヴィオとエルシリア…そしてルーカスの軍が間もなく到着するとの報告が来た。
報告書を見たライルはため息をついた。それが聞こえたのか、横にいたレイがゆっくり起き上がった。
「すまない、起こしたか…」
「いえ…シルヴィオ様達も来られると?」
「ああ……ヴァルトシュタイン様とシュナイゼル兄様まで来られるのにだ。」
理屈としては分かる。中華連邦まで逃れてゼロがそのまま終わるはずがない。かねてからの予想通り、E.U.と中華連邦の国力も取り込んで日本奪還を目指すつもりだ。
「日本奪還で終わる、とは思っていなかったが……世界を取るつもりなのか?」
だが、面白い……そんな凄い戦争が起きるのなら………
唇が歪んだが、間もなくレイが唇を塞いできた。数秒して離れると、レイが押し倒して寄り添う。
「また怖い顔をしてる…」
「…していたか?」
「ええ…悪人の顔。多分、有紗達も気付いていますよ。」
悪人の顔……そんな顔だったのか?戦いに、強敵との戦いに…快楽を見出しているとでも?
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