[38291] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-33『再び叛乱と始まりの地へ…後編2』 |
- 健 - 2018年09月23日 (日) 21時11分
改修されたハリファクス・ラヴァーズはブラッドフォードの改修案も一部採用され、スラスターの増設などによって機動力が大幅に向上している。武装面も改修と追加を行って充実し、総合的にトリスタンとブラッドフォードに匹敵する程になっている。
「これだけの機体なら単独で航空戦力を削ることもできるわね。」
「でも過信は禁物です。『黒の騎士団』のKMFは多くがフロートユニットを搭載しているんです。アヴァロンからのデータ見ただけでも現行の暁ってKMFはサザーランドよりずっと上ですから……素人集団でも余り大勢でかかられたら厳しいですよ?」
涼子の言うとおりだ。ライルは決して油断せずにかからないよう心がけている。軍学校から油断はしないようにと訓練で他の学生達にも言っていた。
クリスタルは意を決した。この戦いが終わったら、全てを正直に話そう。まだ引きずっているライルだってようやく有紗に自分の気持ちを伝えた。年下の彼が乗り越えようとしているのに、自分がいつまでも引きずって、怯えてどうする?サラだって父の不正を暴いた。
私も……進まないと。
まだ拒絶されることが怖い……でも、いつまでもこのままではいけないんだ。
「そうか、ライル殿下のKMFが充実したか。」
レイシェフは紅茶を一口飲んで息をつく。実年齢は既に30代後半だが、その若々しさと優雅な振る舞いから10は若く見られる。ヴィオラはその姿に見とれるが、気を取り直して報告を続ける。
「間もなくエリア11へ向かうので我々も出立の用意を調えております。」
「よし……相手はゼロだ。油断してはならないぞ。」
「イエス・マイ・ロード。」
今、レイシェフが僅かに迷ったように見えたのは気のせいだろうか?行程のあの計画をヴィオラも知っている。突飛すぎるが、ゼロも本人さえ知らずに部分的に関わっているという上にそう考えれば説明がつく要素もある。
ヴィオラは耐えきれずにレイシェフの背中に抱きついた。
「レイシェフ様……無理をなさらないで。」
「無理などしていない………」
そう答えてレイシェフは離れていった。
エルシリアの軍でも準備は整っている。新型KMFや改修こそないが、激戦は必至。エルシリアとセラフィナも機体の予備パーツは勿論のこと、予備機としてヴィンセントを手配している。
その状況下でグラビーナは噂が気がかりだった。セラフィナがあの畑方秀作と肉体関係を持ったと囁かれている。どこまで事実かは分からないが、セラフィナは姉と同様に身持ちが堅い。入れ込んでいる男も彼だけなのでそう囁かれているだけだと思っている。
「しかし、事実だとしたら姫様はどうなのだろうか?」
コーネリアとユーフェミアの姉妹と同じく二人も仲が良い姉妹だった。尤も、姉同士はエルシリアが昔からコーネリアに一方的に対抗意識を燃やしていた…といってもライルとルーカスのようにいつ戦争になってもおかしくないというわけではない。
妹同士は仲が良く、ライルやナナリーとも一緒に遊んでいたという。
そんな妹が男と…しかもナンバーズと関係を持ったなど………あの男がもしも貴族の陰謀で殺されれば、ライルは勿論セラフィナを…下手をすればエルシリアも間接的に敵に回してしまう。
「だが……私も、エルシリア様と…」
「私がどうかしたのか?」
「ひ、姫様!?」
後ろから想い人が現れてグラビーナはマニュアルを落としてしまった。
「らしくないな、こんな時に体調を崩しては困るぞ。」
「は、はい…」
律儀に拾ってくれたマニュアルを受け取り、グラビーナは深呼吸する。
情けない……ずっと心を寄せているのに全然気付いて貰えないとは。
このままでは家柄だけの無能な貴族…いや、それは心配ないが各上の騎士に求婚でもされればエルシリアのことだから自分を負かせば交際はOKしかねない。
だが、踏み出す勇気がないのも事実だ……彼女にはブリタニアの皇女として、女性として幸せになって欲しい。だが、自分の手で幸せにしたいとも願っている。
相手がナンバーズとはいえ、踏み出して結ばれたライル殿下を尊敬する……
ナンバーズの女ばかりと交際している皇族に尊敬などと自分も大概情けない。
いや、今は大きな戦争がある!!生き残ってから考えるんだ!!
調整が終わったその日の夜……レイは勝負に出た。おそらくこれを逃したら機会はもうないだろう。
既にライルに相談があると伝えてある。つまり、邪魔が入らないということだ。
「ラ、ライル様……失礼します。」
ああ、遂に来てしまった……
入ると、ライルは小説を読んでいた。部屋の中は普通の士官室だ。机にはいくつもの書類以外に幼少時も含め、いくつか写真が立てかけてある……有紗達も見たと言うが、5,6歳ほどのライルが写っており、本当に可愛い。今と見比べると、昔の面影がある。他には小説が何冊かある。
「レイ………」
ライルも少し居心地が悪そうだった。
「え、ええと…」
「……まさか、君…も?」
その、まさかだった。レイは何も言わずに制服を脱ぎ去り、全てをさらけ出した。細いが胸や尻などは良く出ており、制服の上からでは分からない程豊かだった。
同僚の女性達から着痩せするタイプだといわれることはあったが、正にその通りだ。ライルでなければ見せなかっただろう。
「ライル様……私、その………」
なんて言えば良いのか分からない。迷っている時に……ライルが唇を重ね、舌を絡める。以前もこんなキスをしたことはあった……感覚に酔いしれ、放したライルも居心地がまだ悪そうだった。
「私も…経験を積んだといっても、やはり苦手なんだ。有紗にだってそうだ……こういう答え方しかできない。」
「…それで、良いです。」
レイにとってこれが初めてだった。既に有紗達で何度か経験を重ねているはずのライルも慎重で、レイは逆に物足りなさを感じた。
「ライル…様……乱暴でも、良いから。」
「ライル様、レイもなのかな?」
優衣は同じ立場の三人でお茶を濁していた。
「でも、レイだってライル様のこと……」
有紗の言葉に優衣も頷く。
「分かってるわよ、それに私達の立場じゃ妾でも充分贅沢なんだから。ていうか、レイとエレーナがちょっと羨ましいわ。」
「え、私も?」
「だって、レイはハーフだけどブリタニア貴族で貴女は凄い美人で胸も大きいしオマケに植民地政策に協力してる資産家のお嬢様。満点じゃない。性格だっておしとやかで料理も出来るんでしょ?」
「貧乏人あがりのケチな料理よ?」
「料理できるだけマシよ。私なんてまだ練習中なんだから……お姉ちゃんや死んだ母さんに任せっぱなし。他の家事は上手くても料理が駄目なのよ。しかも、一番の強敵がここにいるんだから。」
睨まれた有紗の目が点になった。
「え、私?」
「一つくらい勝ちたいもの。いや、胸では私とエレーナの勝ちね。」
今度は有紗がムッとなる。
「それだけでライル様が貴女達に転ぶわけないでしょ!?」
エレーナもそれに食いついた。
「だったら料理だけでも同じよ!!」
三人はにらみ合うが、どちらからともなくやめる。
「やめましょう……とにかく、私達三人ともライル様の恋人。それで良いじゃない。」
優衣の言葉に有紗とエレーナも頷く。
「レイとクリスタルさんも入るのかしら?」
「二人共…付き合いが長いから………文句は言えないわよね。」
エレーナの言葉に有紗と優衣も文句は言わなかった。相手の立場を分かっているし、社会的な身分では二人が遙かに上なのを分かっているからだ。
それに…ライルと肌を合わせ、愛し合っていることが何よりも幸せだった。
レイは日頃の疲れが溜まっているのか、眠り込んだライルの顔を自分の胸に埋めて頭を優しく撫でていた。
「ライル様…」
乱暴に、だが途中から優しく抱いてくれたライルだが今の顔はまるで幼い子供のような寝顔で、とても可愛かった。
こんな可愛い寝顔なのに…激しくして……
有紗同様レイも薄々だが気付いていた。無理をしていると……否、既に決壊しかけている。只でさえナンバーズ採用に否定的ならばまだしもいくらでも替えが効く捨て石にしようとする貴族の牽制や醜悪な欲望に疲れ切っていたところで先日の事件だ。既に普段通り振る舞う余裕すら失っている。
自分がそれの受け皿になれるのならそれでもいい。戦場で共に戦い、守るだけではなく……愛され、そして愛してあげたい。
なんか……この人のお母さんみたい。
同い年なのにその表現はどうかと思う。だが、実際にレイはライルに対して母性のような愛情も抱いていた。どちらが先かは分からない……
「……今だけ、私の可愛い皇子様でいて?」
でも、これがあいつらに知れたら…あいつら有紗達を殺すのかしら?
だとしたら、有紗達に危害を加えないのを条件に付け加えないといけない。そうしなくても何か余計なことをしてくるのは確実だ………ライルはクラウザー家の親戚筋が逆恨みで有紗達を狙う可能性も考慮している。自分もそちらとスレイダー家の親戚筋を警戒しなければならない。
そして、ライル軍はエリア11へ出立し…エルシリア、シルヴィオ、ルーカスの軍も遅れて出立…更にKMFの改修が終わり次第『グリンダ騎士団』も出立する。
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