[38286] コードギアス異聞 試練のライル FIRE−1 勅命 |
- JIN - 2018年09月15日 (土) 18時31分
エリア11への出征に向けて準備に余念が無いライル軍本営。
ここしばらくに起きた大小様々の事件などまるで無かったように、多くの人員や物資が多く行きかっている。
その中を潜り抜けていく一台の大型車。
「おい。ありゃなんだ武石?」
「なんだって。セントガーデンズの車じゃないか」
「最近は別に珍しくもないだろ。一体どうした?」
「いや。別に」
本部ビルの中に吸い込まれていく車。
その最奥部に止まり、その中から金色の小箱を厳かに両掌に乗せて降り立つ一人の人物。
そして別の扉から降り立つ、もう一人の人物。
先の人物と同じ制服だが、その顔は白いフードで挟まれてる。
捧げ銃の姿勢で迎える衛兵たち。
いかにも裏口という感じだが、そこには豪華なカーペットが敷き詰められ、多くの人員が左右の壁に付けられている。
その中には兵員だけでなく侍女たちも含めて。
その中を厳かな足取りで動く二人。
それを軽く上目で伺いながら、後方の相手の姿に軽いデジャブーを感じる侍女の一人。
(…白無垢の花嫁さんみたい・・・)
目的の部屋に止まり、扉が開く。
その奥には正装姿で控える四人。
皇子。
将軍。
親衛隊長。
そして。選任騎士。
その中にそのまま進み入る二人。
その後方の一人の前に飛び出す選任騎士。
「待て! 顔を隠したままとは! 殿下の前で無礼であろう!」
「スレイダー卿!」
「勅使であるぞ!」
周囲の動きを、さっと手で遮るフードの人物。
そのままフードに手を掛け自ら外す。
その中から現れる金色の流れる長髪。
まさに精悍といった感じの容貌。
そして全身から溢れる彫像的かつ野性的なまでのオーラ!
その容姿全体に、完全に圧倒されるレイ。
(…す、凄い…綺麗…)
その後ろで、むしろ驚愕の表情を浮かべ、思わず顔を見合わせる男三人。
(なにい!?)
(ま、まさか!?)
(そんな…)
そのような動きにお構いなく、儀礼的な手順で手近のライブラリーを操作するレイシェフ。
黄金の小箱を開き、その中から取り出した黄金のディスクをセットする。
動く画面。
巨大な紋章が現れ、次に出現する一人の人物。
「オール・ハイル・ブリタニア!!!」
全員が膝を折り、頭を下げる。
その頭上に向かって振り下ろされる、重々しい言葉。
『我が皇子。ライル・フェ・ブリタニアに伝える。先日より貴公から申請のあったサラ・クラウザーとの婚約解消に承認を与える。それに伴い貴公の新たな配偶者として、そこに送りし者ディアーヌ・アーチボルトを決定した。正式な挙式はこの度のエリア11遠征の終了後に執り行う。それまで貴公はその者を身近に置き、準備を進める事。これは金印勅命である。以上』
消える画面。立ち上がる一同。
改めて向き直る皇帝親衛隊長。
「以上。皇帝陛下の勅命です。アーチボルト卿にはセントガーデンズの一員も兼ねてライル様の御側に同行させていただきます。それでは」
再礼の後、一人だけ退出していくレイシェフ。
一人だけ残り、改めて一堂に向き直る人物。
「紹介頂きましたディアーヌ・アーチボルトです。どうか以後お見知りおきを。呼び難いでしょうですので『ディアナ』で結構です」
会釈しているにしては余りに微妙過ぎる表情。
しかしそれが尚更にこの人物の只ならぬ存在感を引き立てる。
(この方が…ライル様の…)
非礼を忘れてしばしばあの相手の顔に魅入るレイ。
不思議な事に、目の前の相手に対する嫉妬も羨望も湧いて来ない。
湧いてくるのは、むしろこのような立派そうな方を迎える事の出来る、ライルに対する誇らしさ。
それでも敢えて言うなら、むしろライルに対しての物だろうか。
その心中を見透かしてか、自然な感じで本人に向き直る新参者。
「…貴女がライル様の選任騎士、レイ・コウガ・スレイダー卿?」
聴くだけでゾクゾクしてくるかのような声色。
それが自分一人だけに向けられているかと思うと、思わず脚がブルブルと震えそうになる。
しかも相手は自分のフルネームまで知ってくれている!
「は、は、はい!」
「あいにくと私は古い騎士なので、今のKMFは使えません。どうか戦場ではライル様の御守りをしっかりとお願いいたしますね?」
またしても微妙な会釈。
それがまた多大な電流を相手に迸らせる!
「い、イエス! マイ・ロード!!」
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