[38264] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-33『再び叛乱と始まりの地へ…前編3』 |
- 健 - 2018年08月19日 (日) 22時22分
実際に四人が搭乗した状態の動きを見たガングランとパラディンはライルの想像を超えていた。
ガングランはガウェインに引けを取らない火力を得ているのもそうだが、涼子の判断でMVSを搭載したのが幸を成して原型機とガレスでは皆無だった近接戦闘能力の補助に成功している。武器もガレスに通じており、ハドロン砲はガウェインのような姿勢の固定が必要なくなったのが良い。ローレンスと共に後方からの支援砲撃を行うのに申し分ない。
パラディンは本来ならば二本の剣を搭載する予定だったが、同じくお蔵入りになっていたKMFの追加用近接兵装の剣の存在を知りギャラハッドの剣と同様にフロートユニットと一体になった鞘に搭載することになった。元々ギャラハッドがガウェインのような大型機のパワーを近接戦闘に活かすという発想から開発された機体だ。ならばそれに相応しい武器を装備する発想は正しいだろう。
元が元だけにパワーはヴィンセントはおろかオリジナルのランスロットだけでなく、高機動力を重視したベディヴィエールやアストラットを超えているし、巨体に似合わずスピードもある機体だ。近接戦闘力のパワーだけならばライル軍だけでなく、ブリタニア軍でも指折りの機体と断言できる。
ライルも双方をシミュレーターで搭乗した。親衛隊や『フォーリン・ナイツ』よりは乗りこなしたが、相当に扱いの難しい暴れ馬である。レイ達から見ればベディヴィエールやランスロットも暴れ馬らしいが………
全く、良い人材に巡り会う運だけは良いようだな。
枢木スザクこそ旗下に加えられなかったが、エリア11を始めライルが見つけた人材もスザクや『グリンダ騎士団』のエース達に引けを取らないとライルは評価している。身贔屓かもしれないが、レイは勿論のこと長野と秀作、雛はナンバーズ出身者では特に群を抜いている。
幸也とノエルもそれに次ぐ才能だ。全く、枢木スザクという破格の存在があるにも関わらず能力を認めない愚か者共の頭の中身を見たくなる。あの手合いは人種や家柄で親衛隊が務まると、それで勝てると思い込んでいる。
そんなもので戦争ができるか……!同国人同士ですら貴族が全てにおいて勝っていると思い込み、因縁をつけて負けを正当化する。情けなくなる。
ライル個人としてはそういうタイプを当てにしていない。大体、努力はしているだろうが…していない輩も知っているからだ。そういうのに限って、身の程を思い知らせるなどと大口を叩いておきながら実際には財産と権力で相手を陥れるだけ。ジュリアの時だってそうだった。
だから、ライルにとっても『黒の騎士団』との戦いは好都合でもあった。この戦いでレイ達に実績を挙げさせて五月蠅い連中を黙らせてやる。大体、あいつらは仮に世界制覇がなったとしてブリタニア人だから負けるわけない、貴族だから絶対にナンバーズや庶民に勝てるなどと思い上がっている。そんな輩が溢れかえれば結果は火を見るより明らかだ。
そういう意味でもレイ達に実績を挙げさせることもスザクの存在も必要だとライルは考えていた。
理想に燃えるライルの心をノックが現実に戻した。
フェリクスは自分でも何をしているのか、と思っていた。優衣がライルに熱烈な好意を抱いているのはもう一目瞭然だった。しかも、先日ライルは有紗と結ばれたにも拘わらず二番、三番を狙っている。本人によると十番以内に入るのが目標らしい。
『何故十番以内に?』
『だって今の皇帝だって百人単位で皇妃や子供がいるんだもの。その二、三割はライル様ももらうとしたら十番以内でもかなり気に入られていることになるわ。』
世俗的というか、なんというか……ヴェルドとコローレとは違った意味で欲望に忠実だ………もっとも、想いを寄せている男性がその根源というのが微笑ましかった。只の煩悩であるあの二人とは大違いだとフェリクスは思っていた。
「殿下、優衣がおはなしがあるそうです。」
お膳立てをしてあげるが、これだけだ。こんなお膳立てをしてあげるのは、優衣の諦めの悪さがどことなくライルに重なって見えたからだろう。
ライルはライルで只でさえナンバーズが認められる社会のためにと、過程も結果も取ろうと強欲であり、有紗も皇帝になる目標も取っている。強欲とも取れるし、諦めが悪いとも取れる。
だから放っておけなかった。ライルの気持ちは知っているが、皇族である以上は特定の一人だけというわけにはいかない。彼自身もそれは分かっていてもジュリアの一件や有紗への想いが原因で踏み切れずにいたのだ。これで、せめて自軍で自身にアプローチをしている女子だけでも良いので関係を持ってもらいたい。
それもあってフェリクスも優衣のためにお膳立てをしたのだと自分では思っている。
優衣は深呼吸をしていた。有紗に負けたくない。だから自分も、と思っていた。そこにフェリクスが協力を申し出た。涼子も最初は渋っていたが強力してくれることになった。
フェリクスはライルが有紗しか女性が周囲にいないのは皇族としても問題なので自軍の女子だけでも、と言うのが理由だった。それでも優衣はありがたかった。
『でも、私がしてあげるのはあくまで貴女と殿下の引き合わせだけ。お望みの展開に行くかは貴女次第なので。』
これ以上のお膳立てはしてやらない。後はお前が上手く抱かれるところまで持って行け。ということだ。
フェリクスにライルを呼んでもらって、自分なりにお茶を用意した。ゲットーにいた頃は勉強ばかりでデートなんてした事なく、今回もデートとまでは行かないが普段と違うアプローチだった。いつものようにこの胸を押しつけたりするようなアプローチでは警戒されるからだ。
「優衣、入るぞ。」
「どうぞ。」
可能な限り平静を装って答える。
来た……!平常心!
「なんだ、話とは?」
「ええ……その…わ、私とお姉ちゃんをオークションで買った理由…」
いきなり間違えた。今まで積極的なアプローチばかりしていたせいかこういう普通のアプローチができない。
「…あのオークション会場から逃げようとしたのが君と涼子だけだったと聞いて、興味がわいた。それだけだよ。」
逃げようとしたから、興味がわいた?それだけ?
「え…あの……本当に、それだけ?」
「それだけ……元々あのオークションも乗り気ではなかったんだ。」
優衣は少しだけ傷ついた。同時に意外とも思った。あの逃げだそうとして捕まった現場にライルが居合わせていたなんて。
「逃げようとしているのが君と涼子だけだとも聞いた……それで興味がわいたんだ。話してみたいと。」
そんな…些細な理由で自分と姉を買った?
「でも、これだけは信じて欲しい。本当に君と涼子の…身体をどうこうするつもりはなかったし、出身地を調べて送り返すつもりだった。」
ライルの顔はいつも見慣れている、真摯な表情だった。本当に、逃げようとした自分達に興味がわいて、話してみたくて買った?
普通なら今飲んでいる紅茶を顔にかけている。だが、あの時……耳元で自分達が想像しているようなことをする気はないと告げて、誘拐が落ち着いた後も、軍に入隊した後も身体を要求することはなかった。あの誘拐などでそんな暇がなくなってしまったのだろう。
「あの……それで、感想は?」
「……第一印象としては仲の良い姉妹だった、ね。」
違う、そういう意味ではなくて………
「あ、あの………」
ああ、もう!面倒だ!こんな回りくどいのやっぱり性分じゃない!!
「ねえ、ライル様!ハワイで有紗とゴールしたでしょ!?」
ライルが紅茶をむせて、立ち上がる。
「な、何故そこでいきなりそうなる!?」
優衣も立ち上がってライルの方に回り込み、思い切り抱きついた。ライルが床に倒れ込むが、お構いなしだ。
有紗は涼子のよそよそしい態度に引っかかった。何か気まずいような。
「優衣はどうしたの?」
「書類整理よ…新しいKMFとか色々あるから。」
本当にそれだけか?ライルも部屋にいないし、今日は離宮に戻るという話も聞いていない。ハワイで結ばれてから、何度かライルと同じベッドで肌を合わせている。昨日も気持ちよく、幸せであった。ばれた時は恥ずかしかった…が。
「もしかして……ライル様の?」
涼子が唸り、観念したようにうなだれる。
「ごめんなさい、貴女に悪いとは思ってるけどあの子の姉なの。」
やはり、そうか。涼子は優衣の背中を押すために……有紗も分かっている………自分は所詮侍女だ。肌を合わせることはあってもそれ止まり。結婚はレイやクリスタルが一番の有力候補である。
ライル様の立場なら、他にもいないと変な人に言い寄られる……
それでも、やはり複雑な心境だった。
「フェリクスも手伝ったけど、私達がしたのはあくまで同じ部屋だけ。それ以上になっても恨まないで。」
「そ、それは……私も、分かってる…から。」
ライルは優衣に抱きつかれて床に倒れた。後頭部と背中が痛いがそれよりも優衣の真剣な表情に驚いた。
「有紗と…どんな関係でも私は良いんです。私もライル様とそうなりたいの!」
前々からそう言っているのは分かっていた。だが、ここまでストレートとは。
「何故、私が有紗と関係を持つのを戸惑っていたのか…分かるか?」
「侍女が相手をするのは問題なくても、イレヴンだからでしょう?だから私も殺されるかもしれないのも分かります!でも!!」
でも、なんだ?
「この前みたいに誘拐されて変なのに初めて取られるのなら今好きな人に初めてをあげたいの!!」
またストレートだ……自分の純潔を捧げたいと言ってくるとは。有紗とは違った意味で魅力的で、とてもまっすぐな女性だ。まっすぐな意味が少しずれている気もするが。
「ゲットーでも変なのに目を付けられたりして腹いせにされるなら、安全な今のうちがいいの!!だから、私のことを滅茶苦茶になるくらいにして!!」
優衣の顔が間近に来た、と思ったら唇を重ねて舌を絡めてきた。流石にこれは押しのけようとするが、優衣がしっかりと抱きついて離れようとしない。
離れた優衣は泣きそうな顔をしていた。
「二番でも三番でも…一番下でも良いの。」
ここまで真剣に自分のことを………これで断ったりしたら、自分は最低の男に…恋人がいるのに他の女性とも…どちらも最低なのだろうが………
「……皇族である以上、妾止まりかもしれないよ?」
「良いの、本当に…」
これ以上説得してもとても引き下がる様子はない。普段からあれだけのアプローチをしてくるのならばそれが自然か?
「……最大限、丁寧にするよ。」
涼子は今頃、優衣がどうなっているか気になっていた。お茶を入れて少しずつアプローチを掛けていくつもりだったが、おそらくすぐにしびれを切らしているだろう。
「ねえ、涼子は良いの?」
「何が?」
「その……涼子も、優衣と一緒にライル様と…」
ケーキを刺そうとしたフォークを落とし、涼子は立ち上がった。顔も熱い。
「な!なななななな!な、なんで!そ、そそそうなるの!?」
私まで殿下と!?なんで!?
「だって……優衣から、聞いたの。私が攫われた時…愛人になるって。」
「そ!それは、あ、あの人がそういうタイプだと思ったから!!私のことは好きにして良いから妹に手を出さないでって意味なの!!」
そう、それ以外にない!確かに、素敵な男性だ。それは認める。顔は勿論のこと、イレヴンだからと威張らないし対等に扱っている。優衣が惚れ込むのも分かる。
「妾でも……という意味ならあの人が良いのは認めるけど、それだけだから。本当に。」
だが、もし本当にライルが自分の申し出を受けて抱いていたら……どうなっていたかと聞かれると上手く答えられない。
優衣は初めてだったが、ライルは本当に丁寧に扱った。優しくベッドに押し倒して……もう一度キスをしてくれた。
有紗にもそうしたというが、ライルは丁寧に肌を愛し……優衣も商品になるくらいに大きく、自慢だった胸を差しだした。
「いやか?」
優衣は答えにと豊かな二つの双丘にライルの顔を埋めた。かすかにライルの吐息がかかってくすぐったい…
「好きなだけ、味わって?」
「……お言葉に甘えて、か。」
その言葉通りにライルは優衣の身体を丹念に愛し、味わっていた。気持ちいい……幸せだ。商品にされて、只身体を貪るだけの貴族に捨てられると思った。あのカジノでもライルに最初を捧げられずに身体だけ貪られるという恐怖もあった。だが、今こうしてライルが自分の肌を吸っている。
「ライル、様…ぁ!もっと、お願い…!!」
愛している、なんて言わなくても良い。とにかく一欠片でも、有紗に向けているひとつまみ分でも愛してほしい。この身体を堪能して欲しい。
今度は胸に吸い付き、キスをしながら繋がった。痛いが……気持ちいい。幸せだ。
ライルも優衣の身体を丹念に愛し、優衣も愛されて喜びの涙を流した。
何度も絶頂を迎え、二人は眠りにつくことになった。
「ライル様……」
「ん?」
ライルにたっぷりと愛された身体を密着させて、大きな胸が潰れるのを感じた優衣は甘えた声を出した。
「私と有紗…どっちが良かった?」
気になった。既に有紗とは何度か肌を合わせたと聞くが、自分がどうなのか気になるのは同じ男に抱かれたからだろうか?
「……正直、その手の受け答えはまるでできないんだ。」
少し気まずそうな顔が少し可愛かった。先程の普段と違った凜々しい顔とのギャップにときめき、優衣はキスをした。
「お姉ちゃんも一緒にされれば良かったのに…」
今度はライルが不機嫌な顔になった。
「君は私にルーカスみたいなことをしろと?今度はエレーナかクリスタルを君と有紗と一緒にか?」
あの最悪の皇子みたいなこと……一度に複数の女を抱く=ルーカスという方程式がライルの中でできあがっているのか?それとも悪辣な貴族のそういうのを知っているから自分もそうなるのを嫌っている?多分後者だ。
「ライル様なら私とお姉ちゃんと一度にしても…ちゃんと丁寧にしてくれるでしょ?それでお姉ちゃんがライル様のことを好きになりそうだし。」
軽いため息をついて、ライルは優衣の上に覆い被さった。
「だからといって、本当にそうするな?」
「駄目…?」
「駄目。」
もう一度キスをして、優衣はライルに抱きついたまま眠りについた。
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