[38260] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-33『再び叛乱と始まりの地へ…前編2』 |
- 健 - 2018年08月11日 (土) 11時39分
エリア11へ向かうに当たって例の新型が無事に届けられた。ガウェインの量産試作機に相当するガングラン……同様にギャラハッドの量産試作機であるパラディン。
既にベディヴィエールがあるライルと秀作、クリスタル、雛の三人以外の親衛隊と『フォーリン・ナイツ』にシミュレーターで搭乗を行ってもらった結果…最も高い成績を出した四人が選出された。
パラディンには幸也とノエルが、ガングランにはヴァルスティードとセルフィーが選ばれた。
「おい……新入りの俺達にゼロに奪われたガウェインの量産試作機ってどういう了見だよ?」
「ええ、ベテランがいるでしょ?あの軽薄ナンパ兄弟とか。」
ヴェルドとコローレを指したセルフィーの表現を的確と思いながらライルは答える。
「ヴェルドやコローレは前々からヴィンセントの搭乗を希望していたし、それもカスタム化する予定だった。それに、どちらもかなりくせの強い機体で並のパイロットでは到底扱えるものではない。それを君達二人は難なく乗りこなした。」
「ビギナーズラックを知っているか?」
「知っている……だが、枢木スザクもKMFの初陣でランスロットを乗りこなした。君達もそれと同じだ……ガングランのパイロットとして高い適性を持っている。それだけ信頼しているんだ。」
二人が少し唸る。そして、ヴァルスティードが口を開く。
「よし、乗った。ただ実物での模擬戦とか試運転はやらせてくれよ?ぶっつけ本番で死ぬのはゴメンだ。」
「分かっている。」
幸也は思考が少し着いて行けなかった。帝国最強の騎士『ナイトオブワン』の座に着くビスマルク・ヴァルトシュタイン……その彼に連なる機体をイレヴンの自分が?
「実感がわかない…」
「本国の頭の悪い連中が妬んでるんだから事実よ。」
同じく抜擢されたノエルにいわれて振り向くが、すぐに顔を背ける。何しろパイロットスーツが胸元が大きく開いたデザインで、眩しい足まで露わになっている。せいぜい露出度が控えめなのは雛やセヴィーナくらいだ。
もうちょっとマシなデザインはできなかったのか!?
ブリタニア軍に内心で文句を言いながら、幸也は機体を見上げる。これほどの機体に乗れるということはそれだけライルが自分を買っているという証拠だ。他に乗れる人間がいないという事実を抜きにしても。
「待ってろよ、クズ共。俺が貴様らも、国も何もかも滅ぼしてやる!」
奴らはE.U.と中華連邦をまとめ上げるというのがライル達の見解だ。ならば都合が良い。E.U.も中華連邦も奴らの同類はごまんといる。二つとも滅ぼす手間も省けるという物だ。
絶対にいる……あの男も。母と姉を殺し、自分を正義と称するあのクズも。
絶対に殺してやる……やつだけは。世界だって一緒に滅ぼしてやるよ、やつを殺せるのなら世界なんて安いものだ。
「幸也、大丈夫?」
ノエルに質問をされると、幸也は振り替えって答える。
「ああ、大丈夫だ。絶対に奴らを皆殺しにする。」
「………そういうことばっかり言ってるとセルフィーに嫌われるわよ?」
突然セルフィーの名前が出て幸也は固まった。
「なんでそこでそうなる?」
「気付くって……」
優衣は書類整理に追われていた。とにかく新型の受理やKMFの予備パーツや水、食料ととにかく多い。KMF関連は涼子も一部負担してくれている。
「うう……ライル様に慰めて欲しい。」
「何甘い期待してるのよ…」
「だって……!」
だって、悔しい。ライルのことは本気で好きだ。新参者だからと言って負ける気はなかった。だが、負けた。お互いに最初の夜を……という形で有紗に負けた。
「一番は譲るけどまだ諦めない…!皇族なら愛人の一人や二人いても良いでしょ!」
「それはそうですけどね。」
フェリクスがサンドイッチとコーヒーを持ってきた。
「食堂で貰って来ました。小休止にどうぞ。」
「あんたって気が利くのね。」
「どうも……何しろ扱いにくい同期の相手をしてますから。」
扱いにくい同期……ライルのことだろうか?
「ねえ……私もライル様に抱いてもらいたい。」
涼子が飲んだコーヒーをむせ混んだ。
「いきなり何言い出すの、あんたは!?」
「だって、本音だもん。軍人なら私もライル様も死ぬかもしれないんだし………生きてる内にライル様とたくさんよろしくやりたい。」
「それにしても……こんなところで言うものじゃありませんよ。」
だが、それを見ていた涼子が複雑な表情をしていたのを優衣は気付かなかった。
レイシェフは紅茶を飲みながら書類に目を通した。間もなくエリア11へ発つ。何が起こるかもレイシェフは知っている……そのために。
「エルザ……もうすぐ、君に会える。」
「レイシェフ…本当に、それで良いと思っているのか?」
デルヴィーニュが問うと、レイシェフは冷たい目で睨む。
「今更だぞ………もう後戻りできないところまで来ている。ここに来て怖じ気づいたか?」
「そうではない。」
レイは有紗に嫉妬していた……ライルが有紗をどう思っているのかも知っている。二度の誘拐で落ち着き、距離が縮まったのも。だが、悔しい。
「私だってライル様のことが好きなのに……」
彼女さえいなければ、などと思ったことがある。自分はこんなに醜い女だったのか?優衣は一番を譲っても諦めておらず、クリスタルとエレーナも、婚約を解消されたサラも諦めていない節があった。
私も、諦めたくない……
ライルも、母を認めさせることも諦めたくない。そのためにもエリア11で『黒の騎士団』を討ち取らなければ。
『黒の騎士団』といえば……中華連邦で捕虜になったエース、紅月カレンは確かイレヴンとブリタニア人のハーフだ。しかも『ユーロ・ブリタニア』の貴族を父に持つという。
同じハーフで貴族の親を持つ……だが、選んだ国は違う。レイは彼女に対してシンパシーを感じるようになった。適うのならば、会ってみたい。
が、それとは別で政庁で面会したあいつらを地獄に叩き落としてやる。そんな執念も芽生えていた。
必ず、勝つ。私はライル様の騎士なんだから………ライル様ならお母さんを受け入れるブリタニアを作ってくれる。だから騎士になった。
その上で……ライルと結ばれて彼の子を産めれば…もうこれ以上はない幸せだ。
サラ・クラウザーは手紙を書いていた。アッシュフォード学園の学友で『黒の騎士団』に所属していた彼女へ宛てたものだ。生徒会のメンバーとはそこそこ交流があり、身体が弱い…そう装っていた彼女とも色々と話したことがある。『黒の騎士団』と聞いた後も心は変わらなかった。
まだ学生ということで当主としての務めは屋敷の者達に委ね、財閥の経営などは親戚に任せている。いずれは家を継ぐが、大事なものは大事にしたい。それがサラの考え方だった。
彼に本気で抱いたこの心も………
サラは携帯を取りだし、連絡する。
「クラウザー家の者です。第八皇子殿下にお願いがあるのですが。」
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