[38218] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-31『帰還の筆頭騎士』 |
- 健 - 2018年06月28日 (木) 21時16分
有紗と結ばれた翌日以降……ユリアナとリュウタへの土産探しや、火山、公園などの観光を楽しんでライル達は帰還した。そして、本国に帰還したライル達の耳には信じられない報せが飛び込んできた。
「皇帝陛下が行方不明!?」
会議に出席した者達が困惑する。無理もない……刑務所を除けば最もブリタニアで警備が厳重であるブリタニア宮から最高指導者が姿を消してしまったのだ。
「ああ、シュナイゼル兄様からの報告だ。この件はここにいる者達だけのことで……」
「でも……一体、何が?」
レイの質問にライルは一つ、思い当たることがあった。重ね重ね口にしていた「俗事」…それがもし、政治……ひいては国家の運営だとしたら。
『俗事』にかまけている暇は無い、ということになる。V.V.が私に持ちかけた契約……グレイブ様から貰った資料にあったギアスという妙な力………
全て繋がっているのか?だが、わからない。そこに果たして、あの男も絡んでくるのか?あの男もそうだとしたら、一体どこまでこれは根を張っているのだ?
そして……更にもう一つライルは気がかりであった。皇帝お抱えの非公式騎士団でもある『セントガーデンズ』………彼らがライル軍に随行することになる。行き先は無論、エリア11だ。
何故、『セントガーデンズ』を私に?人員は少ないが、戦力的には充実している。
涼子が興味を持った四機のKMFは既に改修と調整を終えており、パイロットも決まっている。新型のガレスとウォードも回されており、単純な質という意味ではあの虐殺部隊『リドールナイツ』を擁する『大グリンダ騎士団』と同等だとライルは考えている。
気になることは多いが、まずはゼロに集中しないと。中華連邦と手を組んだゼロの事だ。残ったE.U.加盟国にもコンタクトを取っているだろう。以前と比較にならない程の規模になる。他の皇族や精鋭部隊も動きが慌ただしくなっている。
そんな中……ライルは一人の騎士に興味があった。
貴族層を主に扱った墓……その中の二つにライルは花を添えた。フローラ・メル・ブリタニア、ユーリア・メル・ブリタニア………『英雄皇女』マリーベルの母と妹だ。母フローラは『貴賤の交わり』を貴ぶ貴族であり、庶民との交流に積極的であった。それ故、殺されたとライルは考えている。その巻き添えで幼いユーリアも命を落とし、調査を進言したマリーベルもルルーシュ同様に継承権を剥奪されたのだ。
『グリンダ騎士団』創設をきっかけに継承権を取り戻したマリーベル……だが、今の彼女は殺戮をもたらす魔女になってしまった。
「幼馴染みの君はどう思う?」
後ろにあった人の気配とその正体を感じたライルは振り返る。そこにいたのは本来の『グリンダ騎士団』の筆頭騎士オルドリン・ジヴォンだ。
「何か得体の知れないものを持ってしまった……そう見えます。」
得体の知れないもの、か……彼女も何か知っているのか?記憶を失い、『マドリードの星』に加入していたということに関係が?
オルドリンの顔を少し見つめ、ライルは微笑する。
「前より良い顔をするようになったね……何か吹っ切れたか?」
「ええ……殿下は、その………何か良いことでも?」
良いこと…確かに、良いことがあったにはあった。
「YES、とだけ答える。さて……そちらの返事は?」
「はい…お受けいたします。」
墓地を離れたある平野でライルとオルドリンはKMFで相対した。ベディヴィエールとランスロット・グレイルだ。グレイルは改修されており、今回は試運転もかねている。
「試運転の相手でも手加減はしないよ?」
〈お気遣いは無用です、殿下。〉
ベディヴィエールは二本の短槍、グレイルは二本の剣だ。お互いに二つの獲物だが、戦術は異なってくる。立会人は以前と同じくレイだ。彼女も改修されたヴィンセントに乗っている。
両者は以前同様に獲物を軽くたたき合って始める。今度はKMFなのだが、狭いコロシアムではない。思い切りやれるのだ。二機は互いに鍔迫り合い、距離を取る。
この野外試合では砲撃を禁止、互いに獲物とハーケンのみだがそれを除けば実戦形式。シールドの使用も自由だ。ベディヴィエールはニードルブレイザーで剣を受け止め、至近距離のハーケンでグレイルを狙うが、グレイルはハーケンで飛んで躱す。上空に逃れたグレイルをブレイドハーケンが襲うが、グレイルはそれを剣ではじき返す。
オルドリンは汗を流す……流石『ブリタニアの狂戦士』。生身でも感じたことだが、力任せで乱暴に見える戦い方に磨かれた技がある。エリア24で『ナイトオブナイン』ノネット・エニアグラムと遜色ない……いや、もしかしたら彼女を超えているかもしれない。
「流石です、殿下。」
〈私の憧れであるエニアグラム卿を負かした君に褒めて貰えるとは光栄だね。〉
ベディヴィエールが槍を突き出す。グレイルは横によけて槍を斬り落とそうとする。だが、それを読んだかのようにベディヴィエールは急速に後退し、グレイルを薙ぐ。
フェイント!?ランドスピナーをこんな風に使うなんて!
大体、急加速したKMFを急停止させてそのまま後退なんて荒技そうそう出来るものではない!
衝撃で体勢を崩すグレイルはソードハーケンを撃つ。ベディヴィエールは槍でハーケンをはじくが、一本をはじかれると両手で残りの一本を持つ。
懐で勝負!?上等!
腕のユニットに剣を通し、パワーを通す。腰のハーケンと残りのハーケンで槍を使わせ、振るわれた槍をはじく。
「もらったぁぁぁ!!」
ソードブレイザーを突き出すが、ベディヴィエールははじかれた槍を手を回転させて持ち替え、グレイルに突き出す。
結果はライルの勝ちだ。グレイルの剣はベディヴィエールの頭部を捉えていたが、ベディヴィエールの槍はグレイルの胸部を突いていた。
「また負けですね……この分ならエニアグラム卿に勝つのも夢ではないでしょう。」
「いや、今のはこちらも危なかった。実戦ならばあれは良くて相討ち……二人共死んでいた。」
レイは二人の戦いに圧倒された。機体性能はベディヴィエールがまだ上だ。それでここまで……
負けられないわ。私も騎士として……ライル様をお守りするためにも!
彼女はマリーベルの元を離れてエリア11へ向かうつもりだという。おそらく、暴走するマリーベルの主力騎士を自分を含めて遠ざけることで『大グリンダ騎士団』の動きを牽制するのだろう。
貴女が貴女のやり方で何かを成し遂げるように……私も私のやり方でお母さんを認めさせる。
レイは改めてライルの騎士として戦う事を誓った。
ノネットもそれを見ていた。二人共強い……
これは、うかうかしていたら本当に追い抜かれるかもね。
若い後輩達が育つのは良いことだ。そして、オルドリンとライル……あの二人がもし主従関係を結んでいたら、マリーベル以上の団結を生み出したのではないか?
ノネットは冗談交じりに考えながらも良いものだと思っていた。
機体を降りた二人は改めて向き合う。
「君の目指すものは変わらないのか?」
「はい……力を持たない人々の剣になります。」
「それは…ブリタニアに限って?」
ライルの問いにオルドリンは一度だけ深呼吸をする。
「記憶を失い、ブリタニアに反抗する者達と行動を共にして……その上でもう一度誓ったんです。」
「私の目指すものと同じように、酷い矛盾を抱えているよ?」
「それでも、進むと決めたんです。」
オルドリンの目に迷いはない。よほど凄惨なものを見て、良いものを見た様だ。
「わかった……武運を祈るよ。」
ライルは手を差しだし、オルドリンは笑ってそれを握り返した。
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