[38205] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-30『常夏での休息…後編3』 |
- 健 - 2018年06月22日 (金) 21時19分
ライルはホテルの最上フロアにいた。ライル自身はもう少し下の方が良かった。万が一襲われたら、逃げ場がないからだ。
だが、既にサラが手配してしまったので仕方がなかった。紅茶を片手に持参した本を読んでいると、ノックがした。最低限の警戒をしてドアを開けるが、すぐに閉めようとした。しかし、複数人の力で押し入られてしまった。
「で・ん・か。これ、いかがですか?」
クリスタルだ。しかも……何を血迷ったのか、以前の貢ぎ物の少女達が着せられた衣装だ。クリスタルの体型と美貌でマッチしているが……
「帰れ。」
「ええ、せっかく見せてあげるのに。いけず。」
優衣がくっつき、更にまたも付き合わされたのか涼子までいる。
「……苦労をお察しするよ。」
涼子は顔を真っ赤にして、震えていた。
「そう思うなら見ないで。」
「あの…私達は、駄目ですか?」
エレーナを見ると、またもライルはぎょっとした。優衣も胸が大きくはみ出していたし、足も眩しい。だが、エレーナはもはや胸があまり隠れていないようにも見えるし、そもそも衣装のサイズが合わないのでは?と疑ってしまう。
更に……有紗を見た途端にライルは顔が熱くなり、言葉を失った。恥じらっている素振りが余計に良い。
「あ、あの…やっぱり、見ないで。」
有紗にそう言われ、ライルも顔を背けようとするが…どうしても、大きくて形も良い有紗の胸や細い腰に目が行ってしまう。
「ラ、ライル様!わ、私も見てください!」
「レイ!?」
なんとレイまでいた。今日も感じたことだが、所謂着痩せする彼女のスタイルとあの衣装はよくあっている。何とも魅力的な踊り子達の完成だが、ライルは見ることができない。
「も…もう十分だから戻ってくれ。」
だが、いつもなら絶対にしないレイが腕に胸を押しつけた。
「いぃ!?」
「こ…こんな格好、ライル様でなければしないんです!だ、だから…お茶を注ぐくらいさせて!」
「私の仕事を取らないで!」
有紗が右腕にしがみついたと思いきや、今度はエレーナが割り込んだ。
「私だって、ライル様に色々としてあげたいんだから!」
もはや滅茶苦茶な状況だ。取り合いに発展してライルが引っ張りだこにあっている。
「頼むからやめてくれ!成金趣味をするような私を君達は見たいのか!?」
それが効いたのか……優衣が数秒考える。
「そんなライル様…ちょっと嫌。」
「その前に似合うような顔じゃないでしょう……後二、三十年しても。」
涼子が相づちを入れ、クリスタルも唸る。
「じゃあ…せめてこの格好のまま全員で添い寝を…」
「わかっていないだろう!大体同衾は禁止したはずだ!!」
「ええ、けち。」
「誰がケチだ!」
一時間は口論が続き、ようやく全員を退けた。有紗やレイまであそこまで積極的になるとは……
そこまで私が良いのか?他にも良い男はいるだろう…
ライル自身の一番は有紗だ……だが…探せば他にも、ブリタニア人にだって良い男はいる。それこそデビーやあのギルフォードなど分かり易い例だ。ライルに言わせればナンバーズだからと威張り散らす事がないだけでもギルフォードは十分なほどだ。立場は差がありすぎるがジノも申し分がないし、あの性格さえある程度我慢すればヴェルドとコローレだって良いのだ。
レイやクリスタル…優衣だって十分魅力的な女性だ。有紗だって自分には勿体ないほどだ。ベッドに座って少しうつむき、いつの間にかウトウトしてきた。
だが、またドアがノックされた。誰かと思い、ゆっくりと開けると有紗がいた。まだあの衣装のままで……
「あ、有紗?」
有紗が何も言わずに抱きついた。
「…と、とにかく離れてくれ。コーヒーでも入れる。」
備え付けられたパックのコーヒーを入れて、有紗に手渡す。有紗が座っていたため、豊かな胸を見下ろす形になってしまいライルは目を反らす。
「……ゆ、優衣とクリスタルの入れ知恵?それは…」
「………ライル様に、見せたくて…」
「…に、似合っているとは思うが………そ、その…」
刺激が強すぎる。先日のバニーより上だ……理性を保てるか自信がない。
「ほ…他の男に、見せたくない。」
あのバニーや今回の水着だってヴェルド達どころか、真っ当なフェリクスや良二に見られても不愉快だったのだ。自分でも驚くほどだ……
「自分の、商品だから?」
商品……二度も売り物扱いされて、一度攫われた。そう思い込むのも無理はない、だが……
「そうじゃない………す、好きだからだよ。君という女性が…」
他の男……それこそ、以前ライルがミンチにしてやったあれやルーカスみたいな輩なんかに渡したくない。気付けば、ライルは隣に座った有紗の肩を抱いて引き寄せていた。
「ライル様?」
「最初……確かに、君の料理や気遣いが良いと思った。だが………」
帰ってくるのを待ってくれる人がいる……あの母のような私欲ではない、純粋に……
「だから……き、君を他の男に渡したくなんかない。」
有紗が離れようとするが、ライルは放さずに気がつけばベッドに押し倒した。あの時と同じ状況……また、怯えさせる。そんな恐怖がライルを襲った。
「だ、駄目…私、ナンバーズなのに…!」
否、有紗の目に恐怖はあったが以前とは違った。
「わかっている……でも、君も自分の夢も欲しいんだ!」
ライルは有紗の唇を奪い、吸い付く。有紗も最初こわばるが、数秒で身を任せるようになる。
「私で…良いの?」
「君でじゃない…君が良いんだ。私にとって…一番は君なんだ。」
二人はそのまま何度も愛し合い、求め合った。あの事件で開いた距離を埋めるように…………
お互いに最初でぎこちなかったが……それ以上に愛し合いたい気持ちが強く、有紗の限界が来るまでライルは彼女を愛した。
疲れ切り、寄り添う有紗の寝顔にライルは見入られて頬にキスをしてライルも眠りにつく。
「……愛している。」
絶対に、皇帝になって……ナンバーズも認められる社会を造る。それが彼女のような犠牲を出さない最善策で、少しずつナンバーズとの軋轢を無くす方法だと信じている。
そして……個人としての夢、彼女と結ばれたい。世継ぎなどどうでも良い。ただ、男としての単純な欲望。愛する女性と結ばれたい……それだけだ。
有紗は目を覚ました……時計を見ると、まだ夜明けより少し前だ。昨晩……ライルに優しく身体を愛され、激しく抱かれた事を思い出して真っ赤になる。だが…満たされ、幸せだった。商品にされた時にはもうないと思われた事が…今、ある。
ふと、横にあるライルの寝顔を見る。普段の激務から解放された無防備な寝顔だ……実年齢より幼く見えて、可愛く見える。
「ライル様…」
ライルの唇に触れる程度のキスをして、もう一度有紗は寄り添った。
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