[38189] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-30『常夏での休息…中編4』 |
- 健 - 2018年06月02日 (土) 10時18分
皇室達も他の軍の者と語らっていた。セラフィナは秀作を交えて木宮と語らっていた。
「噂には聞いてたけど、本当に貴方って捻くれてるのね。そんなにお祖父様が嫌い?」
「憎んでいる……今も生きているのならたっぷりと苦しめて殺してやりたかった。」
「もう、こういう席でそういう無粋なこと言わないの。質問したあたしも悪かったけどね。………じゃ、話を変えて好きな女の子とかいないの?」
その問いに秀作はキョトンとした。
「それは……世間とやらで言う恋人とかいう奴の意味か?」
「そうよ。」
「………デートとかいうやつならセラと何度か……だが、理解できない。何故そんなことをする?この懇親会だっておかしい。継承権のライバルを殺すのが懇親会、友達や家族とは敵のことだ。お前達は一体どういう頭をしているんだ?」
秀作の言葉が聞こえていた者は前半以上に、後半で戦慄した。さも当然のように全てを悪意で見ている。否…ライルやセラフィナ以外では一部の者は可能性を疑った。この男は……人の善性を知らない。或いは理解できない、信じていないのだ。
「ごめんなさい、木宮卿。秀作は…」
「良いんですよ、セラフィナ様。大体察しました。」
「……ただ、ライルやセラが…クレヴィングがやつの孫だからどうこうと言わない点だけは本当に感謝している。特に、今日もセラの水着を見て妙に落ち着かなくて、周りの男共を手当たり次第に殴り倒したくなった。………お前達のせいかどうもおかしくなっている。」
その言葉にセラフィナは少し心が躍った。一種の独占欲が……秀作が自分をそんな風に見ている。木宮も微笑して、肩を叩く。
「それはね、貴方がちゃんと一人の人間として生きている証拠よ。貴方が孫だからどうこう決めつけている奴らが悪いだけ。」
「…………魔物の貴様に言われても信用すると思うか?シルヴィオが何故貴様と貴様の家族と親しくしているのか理解に苦しむ。カミカゼをするのだろう?」
「…流石にちょっと怒っても良いかしら?」
これ以上はまずい。セラフィナが間に入った。
「秀作、もうやめて。ごめんなさい、木宮卿。これ以上は…」
「ええ…そのようね。お互いに…」
横目でそれを見ていたエルシリアはため息をついた。すると、今度はクリスタルが声をかけてきた。
「あの子…あれでも大分まともになった方なんですよ?」
「ああ……初めて会った時でも異常なのが一目瞭然だった。」
そう、あの頃の秀作はエルシリアの軍にいるブリタニア至上主義者の目にも異常に映っていたのだ。あれではクロヴィス殺害の犯人としては説得力がないのも頷けるほど。何しろ、E.U.との戦闘でも投降した兵士がイレヴンと分かった途端に殺そうとしたこともある。
「セラが随分と気にかけていたからな………あれやライルがあの男を少しずつ変えたのだろう。」
「ブリタニアに恭順してくれて嬉しいですか?」
「その前に…まともな人間になって欲しい。」
「………ライル殿下やクレヴィング将軍も同じようなことを言っていました。」
あの反りが合わない弟と同じ事を考えるとは。だが……あの異常性では誰でもそう思うだろう。せいぜいルーカスやカリーヌ、マリーベル程度だ。歯牙にもかけないのは。
秀作はセラフィナのワンピースに目を泳がせていた。白と赤のシンプルなデザインだが、彼女の身体や美貌を引き立てており…ライル軍や他の軍の者達も彼女を見て感嘆している。
まただ……何故こうもセラのことになると落ち着かなくなる?
「秀作…このワンピース、変なの?」
年下でも背丈は自分が上だ。見上げてくるセラフィナの問いに秀作は胸が高鳴った。
「何でもない……シンプルなデザインだから良いとは思う。」
「良いと思う?」だと……何故、この俺がそんなことを言う?
シルヴィオは良二と語らっていた。自分が好きな日本武術の一部を使っているだけあり、話も通じやすい。
「そうか……お前も枢木もあの『奇跡の藤堂』から武術を学んでいたのか。」
「ええ……小太刀武術は完全な自己流ですが。」
小太刀…東洋のショートソードでそれを使った武術が存在するのは聞いたこともある。
「実家でもいくつか武器を保有しておりましたが……接収された反抗勢力の武器に良い小太刀がありましたので、今はそれを使っております。」
「小太刀は普通の刀と違って間合いが短い代わりに取り回しが良いからな。それに刀は峰打ちができるから、相手の無力化にも向いている。」
技は必要だが……日本剣術の利点はそこだとシルヴィオは考える。
「だというのに、愚かな連中は日本の武術の良い点を見ようともしない。」
「ライル殿下はそういう意味では柔軟ですよ。」
「武術バカが体育系と話が弾んでる……」
「それ、皇族への侵害になりかねませんよ?」
ウェルナーが雛を窘めると、雛が「ええ?」と不満を出す。
「他の貴族様だって似たようなこと言ってるじゃない……ウチのお坊ちゃんにだってナンバーズびいきとかイレヴン好みなんて言ってるのに。」
「貴族社会の怖いところですよ。」
箱入りのくせにこういうところだけは流石に詳しいようだ。もう一口飲もうとしたら、既にジュースがなくなっていた。そこへ、誰かがジュースを差しだした。
「どうも………テレサ?」
「残念ね、姉のルビー・メイフィールドよ。」
姉?そういえばテレサの実家は『ユーロ・ブリタニア』、彼女は本家に残った方か。
「『ユーロ・ブリタニア』でも少し話題になっていたわ、川村雛。火傷の女が皇族に言い寄っているって。」
「……なんでこれに靡く皇族がいるって思うのよ?」
火傷を見せて自嘲する。ルビーも一瞬だけ怯む。
「治療しないの?今の貴女の立場ならできるはずでしょ?皇族の直属部隊でエースなんだから…」
「エースかどうかは知らないけど。イレヴンに真面目に治療する物好きな医者がいると思うの?『ラウンズ』にでもならなきゃ無理よ。」
「……あの、僕がお世話になっている医師に相談してみましょうか?」
ウェルナーの発言に雛はポカンとした。
「僕自身には医療の知識がないですから…雛と知り合う以前からお世話になっている人に相談をすれば。」
が、ウェルナーは雛に軽く小突かれた。
「んなことしてご覧なさい。絶対にあたし殺されるわ……『皇族に近づいた身の程知らずのイレヴン』って具合に。」
「そんな…」
ルビーも顔を伏せる。
「まあ、お気持ちは嬉しいわ。」
それぞれ思い思いの相手との交流を行い、食事会もお開きとなってそれぞれの部屋へ戻ることとなった。
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