[38186] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-30『常夏での休息…中編3』 |
- 健 - 2018年05月28日 (月) 17時35分
ライル達はホテルに戻るが、食事は所謂バーベキューだった。ライル本人が堅苦しい食事を拒み、たまには軍学校時代ヴェルドとコローレに誘われた時のような食事をしたい、と言いだしたのだ。
準備を進める中でライルは秀作や雛がいない事が少し残念だった。
「秀作がいたら『こんな手で邪魔者を始末できるか。他の皇族達に毒を盛るならもっといい手を考えろ』とでも言いかねないな。」
「誰がなんだって?」
聞き覚えのある声が聞こえた。それは……
「秀作…セラ、何故ここに?」
「兄さん達こそ……このホテルに宿泊されていたのですか?」
「セラフィナ様………やるじゃないの、秀作。相部屋?」
クリスタルが突然肘で秀作をつつくが…
「何故、そうなる?シングルだ……」
妙な態度だ。今までの秀作からは考えられない。
「意外とシルヴィオ殿下も出てきたりして。」
「誰が出てくるんだ?」
「し、シルヴィオ兄様?」
どうなっている?何故こうも次から次へと?
「どうしたの、セラ……ライル?兄上まで!?」
「なんであんた達がいるのよ?」
「兄上達はこちらだったのですか?」
エルシリア、雛とウェルナーまで……
「もはやここまで来ると、腐れ縁というやつですね。」
ライルがため息をついた。一体、本当にどうなっている?どういう因果だ?
「まあまあ、大将。ここまで来たら丁度良いじゃないの……産まれも人種も育ちも完全取っ払って軍同士の交流会と行こうじゃないの。『ユーロ・ブリタニア』の皆さんも。せっかく美人がたくさんいるんだから。」
ヴェルドが突然仕切りだし、コローレも便乗する。
「費用は当然殿下達…」
「発案者が全額負担してくれるそうです。高めの酒やジュースでも用意していいそうですよ。」
エルシリアはライルの様子に驚いた。態度が悪いという意味では有名なホーネット兄弟との付き合いは聞いていたが、こんな飾らないことを言うとは。
「あ、あの…大将?」
「姉様、セラ。この二人がお二人に何か妙な企てをしていたら私にお申し付けを。絶対にこの二人を有罪にしますから。」
「皇族相手に何考えると思っているんです!?」
「………皇族本人が駄目でも部下達に何をするか分からないだろう?」
二人共、何か痛いところを突かれた顔になる。
「……勝負あったな。」
シルヴィオは完全にライルに言い負かされたヴェルドとコローレを見て少しだけ同情した。皇族と部下と思えない付き合い方という意味ではシルヴィオと木宮…エルシリア、セラフィナとクレアも同じだ。だが、彼らは正にそれ以上だ。普段から振り回されていると聞いたことがある……おそらくこういう時に乗じて日頃の仕返しをしているのだろう。
「良い食材を頼んで良いですよ。全て、こいつらの負担ですから。」
「大将、本当にやめて!」
「せめて、半分で!」
「聞こえないね。知っているぞ……ギャンブルでまたたくさん稼いだのを。」
「なんで知ってるの!?」
ヴェルドが怯んだ。すると……
「ほう、図星か。こんな手にかかるとは。では本当に全額負担で。」
「やられた!」
コローレの叫びがこだました。
乾杯の音頭は優衣が取ることになった。普段こういう事が好きなヴェルドとコローレは精神的なショックからまだ立ち直れないらしい。
「ええ、それでは!食事を兼ねた皇族五名の部下達の交流会を始めます!乾杯!」
ホテルのテラス一角を丸々貸し切って、ここに集まった者達で交流会を行うことにした。セヴィーナやゲイリーがいないのが少々惜しいくらいだ。
「出来れば、イレネーともこうして騒ぎたかったですよ。」
「……イレネーはこういうのが苦手だ。お前が振り回していたかもしれないぞ。」
エリアは死んだ同僚を思い、ジュースを飲んだ。シルヴィオも今回はアイスティーにしている。
「しかし、殿下も残念でしたね。『帝国の侍』がここにいないとは。」
「おい、日本軍人だからといって必ずしも剣術の達人とは限らないぞ?」
「それは知っていますよ。あんな可愛い子達が刀振り回したり、空手で暴れるってのは逆に怖いし……イメージ的にも大和撫子ってのが合います。」
シルヴィオがため息をついた。その先では木宮はライル軍の男性陣と談笑しており、ミルカも他の軍の女子と何か話している。
「どういうイメージやら。」
「ミルカさん…シルヴィオ様にお仕えして、どれくらいになるんです?」
「そうね…もう、十年近くになるわ。」
「長いのね……私はエルが物心ついた頃には遊び相手だったの。」
有紗とミルカ、クレアは皇室に仕える者同士で盛り上がっていた。この中では有紗は一番の後輩になる。
「私は…まだ一年程度ですけど………あの…ミルカさんって、シルヴィオ様の…その……」
有紗の口ごもった様子に意味を察したミルカも微妙に赤くなる。
「え、ええ……五年になるの。」
「良いわね…結婚しないの?貴族出身だから問題ないと思うわよ。」
ミルカは押し黙った。今日の水着も面積の狭いチューブトップビキニを選んだ。シルヴィオに見せたいからだ。
「私…その……結婚したいけど…もっと、相応しい方が…」
「何言ってるの。『ラウンズ』でも庶民出身者が皇妃という凄まじい事例、更にナンバーズ出身者が『ラウンズ』よ。古くさいしきたりなんて壊せば良いのよ。」
クレアが貴族らしからぬことを言う。
「皇族の結婚だって愛のある結婚の一つ二つあったって良いんだから。と言うより、愛あっての結婚でしょう。」
ミルカも貴族だから家同士の釣り合いなどは分かる……だが、それ以上に自分がシルヴィオに釣り合うのかどうか…自信が持てなかった。
「兄様、失礼ですがご結婚はなされないのですか?」
ライルの質問にシルヴィオはグラスの手を止める。
「……いると思うのか?私がそう思う相手が…」
「私は、少なくとも一人思い当たります。」
ライルがチラリと自分の侍女と話す女性を見る。ミルカだ……
「長続きしないという兄様がずっと側に置いているのは彼女だけですので、もしやと。」
シルヴィオはため息をつき、アイスティーを飲み干す。
「そういうお前こそ……婚約が破談になったんだ。あの侍女や騎士と…ウィスティリア卿と堂々と交際できるぞ。」
ライルは飲んでいたアイスティーをむせた。どうやら、相当ショックが強かったようだ。
「な、何故そこで有紗達が出てくるのです?」
「その方面に疎い私でも勘づく……」
気付かないとでも思っていたか?気付かないのはせいぜいあの我が侭なカリーヌや贅沢で口うるさいギネヴィア……そして、あの痴れ者程度だ。
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