[38146] コードギアス 戦場のライル SIDE OF WARFARE『女子会…後編』 |
- 健 - 2018年04月29日 (日) 19時36分
女子の話が盛り上がってきた時…この場の半分近くが心を寄せるライルが話に出てきた。
「ねえ、ライル様の好みってどんな人なの?」
優衣の質問に全員が黙り込んだ。同時に全員がクリスタルを見た。
「…何?」
「一番付き合い長いの貴女でしょ?知らないの?」
クリスタルはその質問に答えられなかった。
「実は、私も断言できないの。あの人…軍学校の頃も結構人気があったわ。でも…」
「でも?」
テレサが聞き返す。
「みんな貴族出身で、自分のお家自慢ばかりするの。私達もその愚痴を聞かされたことがあったから。」
そう、クリスタルとの初デートでもライルはかなり警戒していた。何とか警戒を解かせ、あの頃は友人までは進展した。
「ああ…どこそこ家の私は殿下に釣り合いますとか、どこかの皇族と接点がありますとか…そういうクチね。」
貴族のレイの言うとおりだった。そういう女が多く、軍学校でライルは辟易していた。その中で、庶民でありながら遠慮なくものを言うジュリアをライルは気に入っていた。おそらく、惹かれたのもそこだろう。
「彼女は貴族の私とも結構そういうのを抜きにして結構気が合ってたの。」
すると、有紗が口を開いた。
「それって……ライル様は好み以前に前提条件があるって事ですよね?ちゃんと自分自身を見て欲しいって事じゃない?」
全員が有紗に注目した。
「えぇと…」
「うう…私だってライル様のこと本気で好きなのに。」
「え?」
何故か優衣が悔しがり、有紗は訳が分からない。
「一番の強敵はやっぱり貴女ね…」
「それじゃあ私は圧倒的に不利じゃない。」
レイとエレーナがそれぞれ有紗に対抗意識を燃やすと、セヴィーナがエレーナの大きなボールを指さして突っ込む。
「いっそそれであの男に迫ればどうだ?」
「うん、やっぱりそれしか無いわ。ここは最大の強敵を蹴落とすために協力しましょう。私とお姉ちゃん、エレーナとクリスタルにレイの5連続アタックでライル様を一気に悩殺しちゃいましょう。」
レイが真っ赤になり、涼子が優衣にまた食いつく。
「んな!ななな、何言ってるのよ!?」
「だからなんで姉を巻き込むのよ!!」
「妹の恋を成就するために一肌脱いでよ!」
「脱ぎ方が違う!」
「ねえ、私とエレーナのダブルでお風呂で背中流してあげればきっと一発よ。」
「へ!?む、むむむむむ無理よ!出来ない!」
エレーナが真っ赤になってへこみ、クリスタルは数秒唸る。
「こうなったら、有紗。一番は譲るから全員で総攻撃よ。」
「そ、総攻撃って…まさか……」
「そうよ。このまま殿下に私達六人を…」
「ストップ!何考えてるのよ!!そして、なんで涼子まで数に入れてるの!?」
「知り合いだと思われるこっちが恥ずかしいです。」
「ていうか、一瞬本気であの藁皇子様のところに行きたくなった。」
テレサがストップを賭け、ノエルが冷たい目で見ており、雛が敬遠していた。そして涼子は……
「もう、どうにでもなれって開き直って良い?」
「……頑張って。」
ノエルが軽く肩を叩いた。
ライルはくしゃみをした。
「風邪でも引いたか?こんな大事な時期に……」
「誰かが殿下の噂をしているのでは?」
「……だとしたら、敵方の誰かが私を『洗脳皇子』だ何だと非難しているのかもな。」
長野に軽く返すが、ヴェルドとコローレはひそひそ話していた。
「ウチのお姫様達だぜ、きっと。」
「あり得るな。」
「おい、お前達。」
急に男に声をかけた。軍施設に設けられたバーだからいるのは当然軍人だが……あまり品の良さそうな連中ではない。トップの男は30前後というところだろう。
「…ナンバーズはとっとと失せろ?」
レイの質問に男の一人がレイを舐め回すように見る。
「ほう、噂の第八皇子殿下の騎士か。混ざり物にしては上玉だな。」
「どうだ、お前達。いかに皇族旗下とはいえ、前線で命を張ることなどあるまい?私の元に仕えれば一生生活に困らない給料を保証するぞ?」
体の良いことを言ってはいるが、魂胆は丸わかりだ。ルーカスと良い勝負だ。ノエルは聞いていて吐き気がした。すると、取り巻きの男がこちらを見つけた。
「この女、あの犯罪者の娘ですよ。」
「ほう?殿下の酔狂も困ったものだ…否、ここにいる女共の殆どは同じような手を使ったのだろう。」
「人の唾着いた女に手を出すとは良い趣味ね。」
ノエルは不快感を抑えながら返す。すると、他の取り巻きが下品な笑みを浮かべる。
「皇族が気に入るのであれば、是非味見をしたいだろう?」
「いや、とっとと帰って。」
優衣がけなし、涼子とセルフィーも続く。
「………本当にこんなのよりあの人の方が遙かに安全って実感できる。」
「新入りの私もそれには同感ね。」
二人の言葉が癪に障った取り巻きが雛の手を掴む。
「誰のおかげで食べていけると思っている!?我々に…」
が、雛が逆にあしらい捻りあげる。
「あんたらみたいなのをイレヴンの諺で『虎の威を借る狐』っていうのよ。意味分かる?」
「自分自身何もしていないのに威張り散らすとか、そんなところでしょ?」
クリスタルの問いに雛は「正解。」と答え、エレーナが問う。
「ライル様に例えるなら……どんな人?」
「ナンバーズ相手に威張り散らすブリタニア人、イレヴン相手に威張るE.U.市民ってところ?特に無能なら尚のことかしら?」
「何!?貴様ら、我々を…」
「貴女達こそ私達が第八皇子殿下の直属だと分かっているの?あの方が身内に害があれば何をするか、もう忘れたの?」
貴族達が怯んだ。そう、もう噂になっているのだ。ナンバーズや庶民出身の部下達を殺す計画を企てた母を拘束しただけではなく、手酷く痛めつけたと。
男達はひるみ、去って行った。「後悔するぞ!」等と三流の捨て台詞を吐いて。
「全く……捨て台詞も三流ね。戻りましょう…また、あんな変なのに因縁着けられたら大変だわ。」
クリスタルがお開きを宣言し、レイが店に迷惑をかけたことを謝罪する。
「で、実際に本当に六人で一斉に…」
「だから嫌!」
優衣と涼子がまたも同じやり取りを繰り返し、セルフィーはそれを見て少し笑った。
「ああいうやり取り、私達はしたことなかったわね。」
そういわれ、エレーナも「そういえば。」と返した。少しだけ……この人達は好きになれそうだ。セルフィーはそんな印象を抱いた。もっとも、男達はまだそうは言えそうにないが。
|
|