[38109] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-26『ツーフォー…後編』 |
- 健 - 2018年04月01日 (日) 12時15分
幸也はエリア24から連れてこられた姉弟の一人が気になっていた。妹のセルフィー・ガルデニアだ……初めて見た時、女優か何かだと思うほどの美しさに心を打たれた。
「一目惚れ……ってやつか?」
ああ、だとしてもどうすれば良いのだ?あれ以来、まるで女子と接することなく…只、復讐のことだけを考えて生きてきた。
テレサはクリスタルやヴェルドから聞いたライルの狼狽を想像していた。普段、落ち着いていて指示を出し、戦場では暴れ回っている彼が数人の女性に迫られたら突然狼狽えるとは……
見てみたい……そして、自分が迫ってもそうなるのだろうか?
何を考えているんだろう?これではまるで…彼女達のように直接プライベートで接する機会などないというのに。
大体、血筋では問題なくても育ちは一般庶民……本人はともかく、周りが許すものか。だが…現在イレヴン出身者やハーフというマイナス要素がある者がライルと近い仲だ……
与えられた部屋は三人の雑魚寝の部屋だ。だが、食事などは不自由なく、監視付きで基地内を多少歩くことは許されている。
「ねえ、どう思う?あの人…」
セルフィーの問いにヴァルスティードは寝転がりながら答える。
「まだ何とも言えんが、俺らが帰れないことに謝ってたよな?」
そう、あの後エリア24への帰国が危険だと告げられた。例え強引に戻したとしても、殺される危険性が高いと。だから、本国にいるしかないと……
『申し訳ない……説得は試みたのだが、君達を頭ごなしにテロリストと決めつけている。』
あの表情…確かに、演技にしてはあまりに真摯すぎる。
「女絡みでは分からんが、それ以外なら相当なお人好しじゃねえのか?」
そう、こうして自分達三人を客分として扱い、他の者達も帰国できるように計らった。しかも、検閲やこれを手引きした貴族、軍、政府の人間にこの件を追求してブリタニアポンドで、節約すれば半年は持つであろう額まで用意させた。
「あの人…私は……」
「姉さんは惚れたんじゃないの?」
弟の問いにエレーナは赤面した。図星のようだ。
「随分とあっさりじゃない…姉さんらしくない。」
セルフィーの知る姉はとにかく男に対しての不信感が強かった。無理もない……あの容姿だ。末っ子のセルフィーが物心ついた頃には三人とも捨てられていた。何故、捨てられたのかも分からない。だが、姉と兄が盗みや殺しをしてセルフィーを守り、セルフィーも二人を支えたいと思うようになった。そうして生きてきた……
『君達、私の家に来ないか?』
『君達みたいな可愛い子がストリートなんて惜しい…』
二人に目を付けた資産家が愛想良くしてきたこともある。だが…弟は邪魔者扱いするような態度が目立ち、他の男達からも目を付けられていた。断った……
私も…男なんてみんなそうだと思っていた。
エレーナは自分の豊かすぎる胸を見下ろす。腰も細く、尻も良く出ている。12,3の頃から大きく育っていき…15,6の頃には大学生より上だと思ったこともある。
それを使えばもっと金が手に入って、三人の生活も良くなったかもしれない。セルフィーも体型はスレンダーな方だが十分な美少女でヴァルスティードも大変な美少年だった。
だが……あの頃、三人は身内以外での異性に不信感を抱いていた。どうせそうなんだと………
でも、あの時……
今の父の屋敷に盗みに入った。スペインでも指折りのガルデニア・ホールを運営する資産家の家………
あそこの宝石を盗んでその道に詳しい奴に売るはずだった。だが……運悪く屋敷のドーベルマンに見つかり、ヴァルスティードが捕らえられ、エレーナとセルフィーも捕まった。
殺されると思ったんだがな……
ヴァルスティードは今の父に初めて会った時のことを思い出す。あれはエレーナが15くらいの頃だったか……
失敗して、三人とも屋敷の主人の前に突き出された。
『ゴロツキ…か?』
『いえ、旦那様。こいつらは銃やナイフだけでなく、ピッキングの道具まで持っています。明らかにこの屋敷を狙っていました。』
警備に抑えられ、一部の者は姉と妹を好色な目で見ている。
『……身元は?』
『IDなどはお持ちでないのです。恐らく、ストリートチルドレンでしょう。』
その答えにヴァルスティードは主人を睨み付けた。
『……一体、君達は幾つだね?』
『…俺が13,妹が3,4歳の頃からずっとこうして生きてきた。』
そう、一番上のエレーナですら7,8の頃からこうしてきた……もう十年経とうとしている。
『…いつまでもこうしていられるわけないだろう?潮時、と思わないか?』
……何が言いたいのだ?
『………警察に捕まっても、ろくなことにならない。ならば、免罪の代わりに養子にならないか?』
あの時、父の意図を疑った。どうせ養子にすることで自分と姉をいただこうというのだと。だが………
『いや……今まで劇場を大きくすることばかりにかまけていたら、いつの間にかもうすぐ40後半だ……独身で寂しいのだよ。今更…結婚というのも……だから、子供でもと。』
『……信じると思うの?』
『分かっている…だが、こんな広い屋敷で主人一人も本当に寂しくてね。君達にとっても悪い話ではないだろう?』
『…………姉さんや私に何かしてくるようなら、すぐ殺すわよ?』
黒服が睨み付けるが、主人が制した。
『分かっている……まあ、確かに二人共とても可愛いとは思う…そういう風に見るのも克服するように善処するよ。』
確かに…いつまでもこんな生活していたくない。それは本音だった。
だから、受けた。何かあるようならばあの男を殺して、財産を奪おうと。
が、彼は本当に三人をそのように扱わずに…不足しがちだった教養のために家庭教師を雇い、スポーツなどもさせてくれた。食事にも誘ってくれた。色々なものを与えてくれた。三人が最も欲していたものも……
2年前に……ようやく呼べたのだ。『父』と…
スペインが占領された時も三人のために植民地政策への協力を申し出た。あの時……売られる時も涙ながらに謝っていた。
「……父さんに、連絡させて貰えるかしら?」
エレーナのつぶやきに二人も複雑な表情をしていた。
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