[38094] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-26『ツーフォー…前編』 |
- 健 - 2018年03月24日 (土) 22時16分
ライルは至極不機嫌だった。戦闘中もゲイリー達が情報を洗い直してくれた結果……ある人物の計画リストが出てきた。そのリストを見たライル軍の面々は愕然とした。何しろ………
「だが、今は君達だ。」
カジノで出くわした姉弟。しかも……少年の方は先程のディーラーだった。
「私は…」
「知ってるよ、第八皇子ライル・フェ・ブリタニア様だろう?」
少年が不遜な態度で遮る。まあ、当然の反応だろう。
「知っていてくれたのか……」
「ああ…俺達はスペイン、つまり今のエリア24から来た。あんたらで言うツーフォーだ。」
エリア24…マリーベルの?
「どうやってかは知らないが、総督の目を盗んで俺達は売られた。まあ、野郎の本命は姉さんと妹だろうな。」
姉と妹…先程買われた二人か………
三人は血の繋がった姉弟だという。姉はエレーナ・ガルデニア、弟がヴァルスティード・ガルデニア、妹はセルフィー・ガルデニア。エリア24成立後も影響力を持つ劇場ガルデニア・ホールのオーナーの養子だという。
「ガルデニア……ああ、聞いたことある。スペインがE.U.の頃から凄い売れてるダンサーがいるって。それ、あんたらだったのか。」
ヴェルドの質問に妹のセルフィーが「そうよ。」と答える。
「確かスペインのダンス、フラメンコのトップダンサーだって聞いてるが、違うか?」
「トップかどうかは知らないけど……そこそこ売れています。」
姉のエレーナが答え、弟のヴァルスティードが「俺も一応相方やってる。」と追加する。
「姉弟でダンサーをしている……で、何故売られたんだ?」
無神経な問いだが、経緯はやはり聞かなければならない。
「政庁の方から圧力が来たと養父は言ってました。多分…本国の貴族に、私達を売って何か取り入るつもりだったんだと思います。」
「スペイン時代から軍や政府の偉い奴も私達のダンス見に来てね、しつこく食事でもどうだとか誘ってきたの。」
セルフィーが明らかな不快感を込めて過去を話す。確かに、二人共とびきりの美人だ。あの手合いが味見をしてみたいのだろう。
セルフィーはライルを信用していなかった。噂は色々と聞いている。外見はそうは見えない。だが……
「はっきり言ったらどう?」
「なにをだ?」
「とぼけないでよ。どうせ、姉さんが欲しいんでしょ?それとも私?」
全員がぎょっとした。
「ああ、なるほど。そっちの子達もあんたの愛人だったわね……」
「違うわよ!」
先程ライルが随分と入れ込んでいたイレヴンの少女が顔を赤くして反論する。図星じゃないか。
「で、今度は私と姉さん?私をオードブルにして、姉さんをメインで味わおうっての?或いは逆かしら?」
「……おい、セルフィー。」
「で、兄さんは適当な言いがかりで殺すんでしょ?」
兄の窘め等耳に入らない。そうだ。そうに決まってる。男なんてみんなそうだ。今の養父に拾われるまで、そうやって愛想の良さそうな男は涎をたらしていた。今の養父だって信用するのに時間をかけた。
まして、ブリタニアの…しかもナンバーズが好みという噂のある第八皇子だ。
「それとも、私と姉さんを一度にいただきたいの?」
ヴァルスティードはその線を疑った。彼も自分の容姿にはそれなりの自負がある。拾われるより以前、裏の女に色々とちょっかいを出されたことがある。それは丁重に断り、姉と妹に目を付ける男も撃退していた。
「……おい、それは流石に俺も身内として聞きたいな。どうなんだ?」
ライルがため息をついた。出た答えは想像とは全く違うものだった。
「ああ、もう。有紗に優衣に涼子に、先日のあの外人部隊の女性達に…そして今日………何故、私が出会うナンバーズ出身の女性はすぐにそういう発想になるんだ。」
ライルが突然、恨めしそうにフェリクスを見た。
「フェリクス、私は一体どういう風に思われているんだ?特にナンバーズ出身の若い女性から。」
「え?えぇと…それは………」
これは即答できなかった。彼がどう思われているかなど……いつもはからかうヴェルドとコローレ、ゲイリー達も回答に困っていた。
「で、殿下がそういうタイプに見えないから逆に…ではないでしょうか?」
デビーの回答にヴェルドも同調する。
「或いは……そういうおっさん共のとばっちり、つうか風評被害?」
すると、ライルが頭を抱えた。
「おい…それなら『洗脳皇子』の方がまだマシだぞ。」
「あら、洗脳でしょう?そうやって随分と綺麗な人を口説いてるじゃない。」
「ちょっと、あんた!さっきから黙って聞いてれば何よ!?こんな素敵な人がどうしてそうなるのよ!?猫被ってるなら、今頃私達この人の良いようにされてるわよ!ていうか、良いようにされたいのにしてくれないんだから!」
優衣が突然食ってかかり、そればかりか妙なことまで言いだした。
「何、あんた本気で惚れてるの?」
「惚れちゃいけないの!?本当にお姉さんと雲泥ね。胸の差がある分、心も狭いのね!」
「な、何よ!これでも汚いオヤジ共に言い寄られるくらいの身体ではあるのよ!?」
何故か、急に話が妙な方向に進みだし、セルフィーは優衣に噛み付き、更に優衣も吠えだして盛大な喧嘩に発展した。が……
「いい加減に静まれ!!」
ゲイリーが大声を出し、二人は収まった。かに見えたが…
「ちょっと、なんで将軍は平気なんですか!この子、助けられたくせにライル様馬鹿にしたんですよ!?」
「誰も助けてなんて言ってないわよ!!」
「私達がここにいなかったら、ライル様だって来なかったし、あんた達だって終わってたじゃない!!!」
全く収まらない。が、妹のセルフィーはあれが素なのだろう。
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