[38090] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-25『守る狂戦士…後編』 |
- 健 - 2018年03月21日 (水) 11時21分
出撃したライルはレーダーを見る。相手はIFFを外している。流石にこの程度はしているか……おかげで信号を確認できない。ならば!
ライルはカジノ周辺を派手に移動する。すると、案の定こちらに目を付けたKMF隊が発砲してきた。
既にベディヴィエールの存在は公表されている。それに向けて発砲するということは……
「そういうことだろう!!」
ハーケンでライフルを持った腕を破壊し、そのまま急降下してクローで足を潰す。武器と足を失ったサザーランドは倒れ、後ろに反応があった。すぐに振り返ってシールドを展開するが、着弾でバズーカだと分かった。
市街でなんてものを!言い訳できると思っているのか!?
こちらは市街への被害も考慮しなければいけないというのに、向こうはお構いなし。万が一ライルを殺すことに成功しても、言い訳が立つと思っているとは!大体、KMFの中にはグロースターまでいる。一体、正規軍は何を考えている!?
ナイトポリスの導入でマフィアは規制の緩い植民エリアに活動を移したというのに、未だに軍や政府を買収してパイプを持つだけでなく正規軍の機体まで持っているとは!
ハドロン砲を撃つわけにはいかない。ならばと、機体の機動力を活かして射撃を躱し、右腕のクローで頭部を潰し、左腕のクローハーケンでグロースターを戦闘不能にする。
こちらの異変に気付いた敵がやってくる。元々こちらにはIFFがついている。すぐに気付かれるだろう。だが、気付いた頃には既にクローでサザーランドが胸部を貫かれ、更に無事なグラスゴーの腕を掴んで他のKMFに向かって砲撃させる。
そして、そのままビルの上に移動する。相手は旧式のグラスゴーとナイトポリスが主戦力。フロート装備の機体は見られない。だが、警戒に越したことはない、と思っていた時……それが間違っていないことを認識した。
RPI-212ヴィンセント………現行のブリタニア軍の量産機では間違いなく最強の機体だ。そのポテンシャルはつい先日まで実際に乗っており、予備機として残しているライルは身をもって知っている。
「どこの誰だ!ヴィンセントのような高性能機をマフィアに横流ししたのは!?」
全く、ヴィンセントまで出てくるとなると厄介だ。だが、高揚していた。あれを乗りこなせるほどの人間がマフィアにもいるということだから。
下からはサザーランドやグラスゴーが上がってくる。だが、ライルはビルから降りて、フロートの利点を利用して上がってくるKMFのワイヤーをカリバーンで切断した。支えを失ったKMFは真っ逆さまに落下して鉄くずに、中の人間はミンチになった。更にその真下にいたKMFも一緒に潰された。
ヴィンセントのパイロットは歯ぎしりした。たかがナンバーズごときを採用している小僧がここまでやるのか!?彼はマフィアでは指折りのパイロット……ボスも政府や軍に上手く賄賂を送って、このヴィンセントを手に入れた。
だが、何が『狂戦士』だ。只のハッタリに決まっている!
ヴィンセントをライルのKMFに突っ込ませ、MVSを二刀流で構える。
「貰った!」
だが、ベディヴィエールはシールドを展開してMVSを受け流し、そのまま持った腕をはじいた。
機体の体勢が崩れ、そのままベディヴィエールが右手に持った剣がコクピットを貫いた。
涼子はモニターでライルの鬼神のごとき戦いぶりに圧倒された。全く、いつもの事ながら恐ろしい強さだ。だが……
「相手が弱すぎるのもあるのかしら?」
パイロットではない涼子はKMFの操縦方法をマニュアルでしか知らない。だが、所詮は素人集団。経験値が圧倒的に違いすぎる上に機体の性能も段違いだ。サザーランドが相手とはいえ枢木スザクは多数の相手を一人で全員倒したという。しかも、あちらは全員が熟練の騎士達だ。
「素人集団じゃあの人の相手になるわけないか。」
ベディヴィエールの調整は確認できなかったが、流石に経験は彼らの方が上だ。戻ってきたら、是非見てみたい。
だが、その前に………
「何時までじろじろ見てんのよ!!」
周囲の男達に吠えると、全員そそくさと退散した。全く、この格好のままだから仕方ないが……
「お姉ちゃん、後でライル様にじっくり見て貰って消毒しましょ?」
「こんな時に何言ってるのよ!?」
すると、今度は「またか。」という顔になる。その後ろでは、先程の姉妹が姉は何かに思いを馳せ、妹は不機嫌な顔になっていた。
ライルは落胆した。期待外れも良いところだ。せっかくの高性能機であるヴィンセントだというのに、期待に注目しすぎていた。
気持ちを切り替え、残りの機体の制圧にかかる。だが、所詮は素人……残りの機体もライルの敵ではなく、全てが行動不能になってしまった。
「涼子、逃げられた機体などはいないか?」
〈はい、周辺を哨戒しているKMF隊からも逃げようとしている機体は見られません。〉
「分かった。私は戻る……それと、そちらに残しているKMF隊には警戒を続けさせろ。私をつけてくる可能性もある。」
ライルは敢えて狙われやすい市街地を通っていく。無論、後ろへの警戒は最大限行っている。だが、道中何もなく…合流地点へたどり着いた。
すぐに合流地点で待機していたKMF隊もライルの後ろを見る。降りたライルはゲイリーに問う。
「戦闘状態を維持したまま、待機。軍の方は?」
「既に連絡を済ませ、動いております。警察の方も…」
だが、ライルは警察も軍もあまり信用していなかった。ヴィンセントのような最新鋭機を横流し、しかもナンバーズがここまで不当に本国へ運ばれた上に有紗達のIDが抹消されたのだ。かなり上の方でやったに違いない。
「ヴェルド、コローレ。警察や軍、政府の連中の入金記録などは?」
「あいよ、辿ってみたらここに行き着いたぜ。これをネタに攻め立ててやるよ。」
「IDの回復も進んでいます。貴方のご希望通り、ちゃんと我々への慰謝料もたっぷりと搾り取ってやりますよ?」
「我々より、今回の被害者達を優先しろよ?あと、分かっていると思うが……」
「へいへい、各エリアの総督方にも抗議の電文送っときますって。」
ヴェルドがいつもの口調で答え、コンピュータを向く。流石にこれだけの規模だ……各エリアの政庁や軍にも協力者がいるとみて間違いない。頭の固い総督達とて文句は言えまい。一人を除いて……
もし、あの国からも来ているのであれば帰すのは危険だ。ほぼ確実に殺されるだろう。
「で、まさかとは思うが……」
ライルは他の男達を睨み付ける。
「で、殿下?」
「今日の私は腸が煮えくりかえっているんだ……有紗達もそうだが、私が連れてきた二人にも何もしていないだろうな?」
何かしたのであれば、殺しこそしないがしばらく人前に出られないような顔にしてやるつもりでいた。
「殿下…私達が見張っていたのです。大体、戦闘中ですよ?」
長野が宥め、ライルは数秒考えて「分かった。」と答える。それを見ていたフェリクスとゲイリーは胸をなで下ろした。
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