[38087] コードギアス 戦場のライル PAST OF WARFARE『混血の異物』 |
- 健 - 2018年03月16日 (金) 13時22分
高雅レイは学校帰り、泣きながら歩いていた。今日、学校でクラスメイト達の給食着に落書きされる悪戯があった。無論、礼はそんなことしなかった。だが、クラスメイト達は口をそろえてレイがやったといい、先生達も寄って集ってレイを犯人扱い。母が呼び出され、給食着のクリーニングをすることで収まりはついたが……
髪に牛乳をかけられ、服も給食のデザートを投げられた。先生に言っても無視………
「ただいま……」
家に帰るなり、レイは部屋に鍵をかけてベッドで泣き出した。
幼稚園の頃からだ……悪戯の犯人にされ、虐められ………遊ぼうとしても仲間はずれにされ……他の子の親達からもばい菌扱い。
小学校に入学してからも、テストでも答えを書き換えられて0点…ちゃんと採点して貰うことがあっても、カンニング扱い……
「レイ、今日のテスト…」
「もう行きたくない!学校なんて大っ嫌い!!」
「レイ…」
「みんな私を虐めるんだもん!!虐められるために学校に行くなんてやだよ!!」
皇歴2010年…レイは行き場を失った日本人達の避難地にいたが………
「お前、ブリキだな?」
「見ろ、ブリタニア人だ!」
「スパイめ!!」
同じ避難民達に囲まれ、殴られ、蹴られた。
「やめてぇ…!私…半分日本人なの…!」
「嘘つけ!ブリタニアの変装だ!!」
「仮に層なら、半分日本人のくせにブリタニアについた裏切り者だ!!」
「殺せ!裏切り者を処刑しろ!」
「そうよ!死になさい、裏切り者!」
「死ね!」
ナイフを持った日本人がいた。殺される!お父さんみたいに殺される!!
レイは抑えていた男に噛み付き、無我夢中で逃げ出した。それから……レイは日本人を拒絶するようになった。隙を見計らって無事な商店から食料を盗んで飢えを凌ぎ、寒さと暑さを良さそうな場所で凌いだ。
そして、会った日本人達からは裏切り者だ。散々ブリタニア人呼ばわりしておいて、今度は日本人だ。なんて自分勝手なんだ。
1年後……租界が建設されるようになってしばらくした後…ブリタニア人の男達がやって来た。
レイは怯えていた。
「高雅レイだな?」
男達の無機質な問いにレイは壁にすり寄り、頷いた。
「お前に会いたい人がいるそうだ…」
会いたい人…誰だ?母はブリタニアに帰ってしまった。親戚達も死んでいるだろう……
そこへやって来たのは、会いたいと願うと同時に恨んでいた女だった……
「何しに来たのよ?」
母は安堵し、目に涙を浮かべていた。だが…レイの問いは恨みだった。
「ごめんなさい…レイ。お祖父様達を説得している間に戦争になって……お父さんも死んじゃったって聞いたから。」
母は娘を抱きしめ、只ひたすらに謝った。
ブリタニアの大使館へ連れてこられたレイはそこで正式にブリタニア国籍を得ることになった。父の性、高雅は敢えて着けなかった。
そして、租界が完成し、トウキョウ租界の一角にスレイダー家の屋敷が建てられた。そして……母方の祖父母と叔母が訪ねてきた。
レイは母に教えられた作法で挨拶をする。
「初めまして…レイ・スレイダーです。」
「……お前が…私達はお前に家を継がせる気などない。」
「貴方の母にどうしてもと、頼まれたから認めたに過ぎません。」
「お父様!お母様!貴方方の孫ですよ!?」
母が意見するが、叔母が「姉様は黙っていてください!」と一蹴する。
そして、叔母が見下ろす。
「汚らしい子……父親によく似ているわ。全く、なんでこんな汚い猿の子を産んだのかしら?」
「知った風なこと言わないで!!」
礼儀作法など忘れてレイは怒鳴った。すると、
「すぐにボロが出る……貴女のような雑種、この家において貰えるだけありがたく思うのね?」
叔母はレイを思いきり見下し、レイも叔母をにらみ返す。
その後、屋敷でもレイは使用人達から馬鹿にされ、母が雇った家庭教師からも遠回しに非難された。レイは、それにひたすら耐え続け…勉強した。母を馬鹿にした奴らを見返して、自分を産んだ母を認めさせるために……
レイは軍に入隊することを決めた。母を認めさせるためには軍隊で戦果を挙げるのが一番だと考えたから。母は猛反対したが…意外にもそれをフォローしたのは母の親族だった。だが、魂胆は分かっていた。そう、あわよくば消えて貰うためだ。しかし……祖父達がスレイダー家の家督を継がせようと思っていた叔母の子ギース・スタッカートはお世辞にも優秀とは言いがたい上に皇族間でも評判が悪い第五皇子の部下だ。何度か会ったが、レイから見てもできが良いとは言えず、性格も最悪だ。だから、執りたくない手段としてレイを使おうというのだろう。
「別にあんた達のためじゃないわ。私は自分のため、母親のために軍に入隊するの。父を殺したブリタニアなんてどうだって良い。私を都合の良いときだけ日本人扱いするイレヴン共を殺す良い機会でもあるしね。」
そして、母はレイを産んだ後に子宮に病を患ったという。幸い手術は成功したが、もう出産することは出来ないと宣告された。そう、再婚させて貴族の子を産ませることも出来ない。
勝手な奴らだ……こういう時だけ私を使うんだから。
入隊したレイを待っていたのは、案の定ブリタニア人からの偏見だった。純血派やその関係者からは邪険にされ、ブリタニア人の兵士達からも嫌がらせを受けてきた。が、セクハラまがいのことは思っていたほどなかった。身体を舐め回されるように見られることはあっても、露骨な行為に踏み切らなかった。
名誉ブリタニア人達からは妬まれていた。ハーフである事と実の母が貴族であったことで、一応KMFへの搭乗は許され、訓練の成績も高かった。スレイダー家の報復か何かを恐れて改竄もなかったようだ。
だが……出撃の機会は少なかった。
「上手くやったようだな。」
名誉ブリタニア人の兵士から睨み付けられた。
「何よ?」
「お前、ハーフで貴族なんだってな?」
「だったら?」
「親に泣きついて、KMFに乗せて貰えたのか?」
なるほど……名誉ブリタニア人達は捨て駒扱いが主だ。対して、こちらはKMFのパイロット。
「半分日本人のくせして、ブリタニアの貴族様気取りやがって!!」
「あんた達は!そうやって私をブリタニア人呼ばわりして、今度は同胞扱い!?勝手なことばっかり言わないで!このイレヴンが!!」
「何を!」
「おい、せっかく良い女なんだ!このままいただいちまおうぜ!!」
男達が三人、襲いかかってきたがレイは正面の男のみぞおちに拳を入れ、もう一人の顎を殴る。最後の一人が後ろから羽交い締めにするが、思い切り足を踏みつける。痛みで怯んだその好きに後頭部で頭突きを喰らわせ、腕が緩んだところで振り払い、抑える。
「ねえ、そこのブリタニア人士官の方!」
「あ、ああ!」
「今の……正当防衛になるのでしょうか?」
ブリタニア人の士官に問うと、「な、なるな…」と答える。
「そう、良かったわ。都合の良いときだけ私を同胞扱いする卑怯なイレヴンが相手で。」
そんなことばかり続いて、レイの心は次第に摩耗していき…たまの休みで母に会えるか、あるいは屋敷で一人でいることが唯一の安らぎだった。そんな中…
「レイ・スレイダー、第八皇子ライル・フェ・ブリタニア殿下がお前をお呼びだ。」
待機していたレイに通達が来た。今、このエリアに立ち寄っている第八皇子からだ……
あの、ナンバーズの部隊を率いるって変わり種が?
そして……レイは彼に惹かれ、忠誠と誓うと共に恋という感情を得ることになる。
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