[38085] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-25『守る狂戦士…中編』 |
- 健 - 2018年03月16日 (金) 12時17分
ライルは二人を乗せ、ベディヴィエールが突き破った穴からそのまま外へ出た。合流予定地点はカジノから西へ1qほど離れたビルの中。少々権限を使ってビル一つを丸ごと借り受けて、そこに偽装したトレーラーを何台か待機させていた。他にも何カ所かに待機させていたが、まさかベディヴィエールだけ敵の中に紛れ込ませていたとは。だが……自分の見通しが甘かったということだ。
フェリクスには余計な手間を取らせたな。
「飛ばすぞ。喋ると舌を噛むぞ!」
KMFを飛ばし、身体にかかる負荷に耐えるように膝の上の有紗と後ろの女性がしがみつく。
すぐにたどり着いたライルを出迎えたのはフェリクスだった。ライルは有紗を抱え、もう一人がライルの背中にしがみついた体勢でタラップで降りる。
……私だって男だから、流石にこの体勢は緊張するな。
正面から有紗の、後ろから先程の女性の大きな胸が押しつけられる形になっている。しかも、それぞれ異なった女性特有の甘い肌の匂いもするから始末に悪い。
心なしか、顔が熱かった。それを見破ったのか、フェリクスがため息をついた。
「随分と大荷物ですね。」
「余計なお世話だ。」
そして、ライルはフェリクスを睨み付ける。
「見通しが甘かったのは認めるが、入るタイミングで言って欲しかった。」
が、フェリクスは特に悪びれた様子もなく「それは失礼を。」と答えた。
「相変わらず、君はヴェルドやコローレと違う意味で良い性格だな。」
「裁きます?」
「助かったから、良いよ。」
ヴェルドは有紗と一緒にライルが連れてきた女性を見ていた。まず……その美貌とプロポーションに欲情する前に圧倒された。
すげえ、そこらの女優やモデルなんざ問題にならねえぞ。顔も胸もパーフェクトだ……しかも…
その女性がライルを見ている目……
おい、まさかあのどさくさで助けられたからってんじゃねえだろうな?だとしたら、ベタだぞ。
しかし……あんな状況で助けられたとあっては惚れるのも無理はない。
こら、大将が持って生まれた性質かね?
「何を見ている?」
「別に。んなことより……奴さん方の通信傍受したが、大将殺して色々誤魔化すつもりだぜ。ま、無理だと思うけど…いろんな意味で。」
ライルの表情が歪み、すぐに「だと思った。」とでも言わんばかりの顔になる。
「行ってくる……エナジーもまださほど消費していない。それに、逃げる時間くらい稼げる。証拠は?」
コローレが懐から情報端末を取り出し、「問題なし。」とサインを送る。
「ライル様!」
突然、有紗が腕を掴んだ。
「……帰って、来るんですよね?」
怖かった……また、売られて…今度こそ、もうライルに会えずに貴族に身体を弄ばれて、飽きられて、路頭に迷うか殺されるのどちらかだと……来てくれるのでは?という希望も抱き、信じてもいた。だが、それでも怖かった。
ライルが掴んだ手に掴まれていない左手を添えて微笑する。
「大丈夫……帰ってくる。絶対に守るよ…君を。」
「おい、後で好きなだけお熱いのして良いから早く行けって。」
ヴェルドに言われ、有紗は慌ててライルの腕を放した。ライルも赤くなっているように見える。
「い、行ってくる。」
女性……エレーナ・ガルデニアはライル・フェ・ブリタニアを見つめていた。先程、店の中で会ったときの純粋な顔……欲望がない、純真な顔だった。否…あの時、一瞬だけ自分の胸に目が行ったが…すぐにそれを取り払っていた。
あんな純粋な目の人……弟以外で初めてだわ。
初めて出会った……今の父でさえ、自分の身体への欲情を抑えるのに苦労しているのが分かった。このカジノに売られてからは尚のことだった。
第八皇子の噂はエレーナも聞いていた。「第五皇子ほどではないが美女を侍らしている」、「ナンバーズのコロシアムを造らせている」、「イレヴン…旧日本人の美女を好んでいる」、「女を口説く技はブリタニアの皇子随一」など……
しかし……第一印象だけ見ても…とても、そうは見えない。部下らしき少女達の男なら欲情する姿を見ても逆にそれを抑制している。そして、今のあのやり取り……
あの人…どんな人なのかしら?
そんな胸中のエレーナとは逆に妹セルフィーはライルを睨み付けていた。
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