[38072] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-24『潜入…後編』 |
- 健 - 2018年03月02日 (金) 20時31分
クリスタルと共に有紗達を探すライルは一人のバニーとぶつかった。ぶつかった拍子に彼女のトレイから酒がこぼれ、靴にかかる。
「申し訳ありません…」
「別に……それより…っ。」
顔を上げたバニーの顔を見たライルは思わず息を呑んだ。グレーがかった銀髪に垂れ目気味の赤い瞳…そして、あのクラリスに引けを取らない美貌だった。加えて、胸や腰も同等だ。衣装のサイズが合っていないのでは、と思うくらいにその胸は強調されていたが、それを狙ったのかもしれない。実際にクリスタルや優衣、クラリスを陽性或いは太陽に例える美女ならば、彼女は有紗やサラ、ノエルと同じ陰性或いは月に例えられる美女だ。
彼女の美しさに心を奪われ、ライルは数秒硬直するが…
「きゃ!」
後ろから男が彼女の綺麗な銀髪を掴んだ。
「ほう…身体が素晴らしいと思えば、顔も素晴らしいな。」
年齢は40半ばか後半、黒髪に青い瞳…やせ形だが、目つきはとにかくあの事務次官やルーカスと同じ好色な男だ。
「お目が高い!それはE.U.から取り寄せたのです。しかも、こちらの姉です!」
姉、という言葉に反応して後ろを見ると…確かに少し年下と思われる少女がいた。同じ髪と同じ色のつり目の瞳に、彼女も息を呑むほどの美人だ。体型も姉ほどではないが胸や腰も良く出ており、スレンダーな体型だ。正に陰性の美女の姉と陽性の美女の妹というところか。だが……
有紗!
そう、有紗がいた。青いバニーの衣装で震えていた。更に、優衣と涼子、ノエルまでいた。四人とも豊かな肢体を強調したような衣装だ。
よくも有紗達にこんな辱めを…!!
すぐにでもあのスイッチを押したかった。だが、それを必死に堪える……
すると、男がこちらの態度に気付いたようだ。
「なにやら気に入らなそうだね?私が買ったものを気に入ったのかな?」
「………だと言ったら?」
「若いね、君は……だが。君も良い物を買ったね。」
クリスタルを見ていた。有紗達だけでなく、クリスタルにまで!!それがよりライルの怒りをかき立てた。
「そうだね……それと、私が買った商品を賭けないかい?」
「賭ける?」
「そうとも、ここはカジノだ。私達は互いの商品が是非とも欲しい。」
大仰に口上を並べる男は随分と自意識過剰のようだ。だが…これはチャンスでもある。
「本当にこちらが賭けるのはそれだけで良いのですか?」
「ああ……良いとも。」
「……分かりました。種目は?」
「…ポーカーだよ。」
ヴェルドとコローレは変な話題を聞いた。何でも、裏の顔を持つポーカーの達人がバニーを賭けて対戦しているという。
その男を二人は知っていた。会ったことはないが、裏どころか表の貴族達にもパイプを持つ男だ……ポーカーだけでなくあらゆるゲームにも精通しているという。
誰だよ、あんなのと勝負するの。やばいぜ、あいつは…
あの男は危険だと言うことも知っていた。だが……相手の顔を見たヴェルドは目を疑った。
げ!大将!?しかも…有紗ちゃん達が!オマケにすげえデカい胸のお姉ちゃん!
ライルの側にクリスタルが、相手の側には有紗達がバニーの姿でいた。良い物を見せて貰った…と思ったのは一瞬だった。ヴェルドは悪い予感がした。
ああ…こら大将が勝っても負けても荒れるぞ。用意しておこう。
有紗は羞恥と恐怖に震える中、この男に捕まり買われることになった。このまま連れて行かれればその先は当然……優衣と涼子、ノエルも捕まったと思われた時…ライルが目の前に現れた。すぐにでも飛び出そうとしたが、首輪を引っ張られて動けない。
ライル様…!お願い…勝って!
有紗は心の中で必死に祈った。
強いな……どうやら相当厄介なのを相手にしたようだ。
チップは互いに一歩も譲らない………だが、ディーラーが気がかりだった。ライルとさほど変わらない少年で、しかもあの姉妹と同じ髪と目だ……まさか、貴婦人あたりにでも売るつもりだったのか?
などと考えながら、カードを見る。このルールはシンプルに5枚のカードを受け取り、一度交換するタイプだ。
その後、勝負は一向にすすまない。ライルはしびれを切らさないようにしていた。だが、相手は妙に苛立っている。若い無名のギャンブラーに苦戦していることにプライドを傷つけられたか?
「全てだ!」
いきなりチップを全て出した。よほど手札が良いのか?
ライルも一か八かで勝負に出ることにした……2枚交換して、ショーダウン。
「ストレートフラッシュだ。」
周囲がどよめく。ポーカーで滅多に出ない役だ。対して、ライルは……
「ロイヤルストレートフラッシュ…全てハート。」
相手が愕然とした。まるで、悪夢でも見ているかのような。だが……ライルは爽快ではなく、安堵があった。これで、有紗達を助け出すことが出来ると。だが、こういうタイプは………
「では………当初の約束通り。」
有紗達の元へ向かおうとしたら、突然相手が銃を取り出した。
「全く、大したものだ。この私をイカサマにかけるとは。」
「イカサマ?」と問いながら、ライルはやはり、とあきれかえった。
「とぼけても無駄だ……分かっているのだよ。この私が負けるなど、イカサマ以外にはない。」
「な…見苦しいじゃない。」
「絶対に私達を手放さないため?」
優衣と涼子が非難するが、首輪を引かれて黙らされる。
「さて、君の反則負けという奴で…それも貰おうか。」
黒服達がクリスタルに近寄る。だが……
「フ、フフフフフ……」
「何がおかしいのかね?殺されると分かって、気が触れたかい?」
「いいえ……あまりに予想通りの展開だったものでね。」
ライルは両手を挙げるふりをして、手首に仕込んであったものを押した。その瞬間、地下で大きな爆発が起こり、店が揺れる。
「テロだ!テロリストの襲撃だ!」
ライルが大声で叫ぶと、事情を知らない客達はパニックを起こした。全く、この手を使わせるとは!
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