[38070] コードギアス 戦場のライルB2 SIDE OF WARFARE『復讐者の困惑』 |
- 健 - 2018年02月27日 (火) 23時48分
フランスとの講和が成功して、ライル軍は一時帰国の準備を進めていた。そんな中…ゲイリーは秀作に相談を持ち込まれた。
「珍しいな、お前が私に相談とは。」
ゲイリーは秀作が相談したいことがあると呼ばれたことに内心驚いた。後見人を買って出て、屋敷に住まわせるようになってからは秀作に貴族の作法を指導する傍ら…何かしらの相談に乗るようにしていた。とはいえ…人生相談と呼べるようなものをされたことなどなかった。
「ああ……俺もよく分からない。」
本人もよく分からない…これもまた珍しい。好きなものが『イレヴンの血と断末魔』、『日本への復讐』が趣味と豪語していた事もあった。それがこんなことを言うとは………
「で、なんだ?」
「ああ……実はセラフィナ皇女のことで。」
セラフィナ様の?プライベートで良く会っていることは知っているが……それで?
「実は……この前、セラ…フィナ皇女に…」
「呼び捨てで良いぞ……一応、親代わりなんだ。」
自分でも驚いた……貴族ではなく、親代わりとして接するとは………
「……セラの軍に援軍に行っただろう?」
「ああ…」
「援軍に行く時、どうもセラに会えると思った……それで、身だしなみや髪にいつも以上に気を配っていた。」
ゲイリーは秀作の話の内容にぽかんとした。それからも続く……『セラフィナのことを考えると落ち着かない』、『泣かせたと思って分からなくなった』、『セラフィナが資産家の男達に言い寄られるのを見ると、不愉快になった』と。
「俺は、どうかしているのか?」
「い、いや……いやしかし……」
ゲイリーは必死に笑いを堪える。
「おい…俺は真剣に悩んでいるんだぞ?親代わりだとかぬかしているくせに、その態度は何だ?」
「す…すまん。だが、安心していい。お前はちゃんと人間として生まれている証拠だ……良い傾向だ。」
良い傾向?以前、医師にも言われたが…どういうことだ?
「おい、なんでセラのことで落ち着かないのが良い傾向なんだ?魔物共に復讐していないんだぞ。」
「いや……復讐はまた別の問題だ。だが、お前は間違いなく人間らしくなっているぞ。」
「人間…らしい?」
「そうだ……男が女のことで落ち着かないなど、当たり前のことだ。ライル殿下を見れば分かるだろう?」
ライル?確かに……有紗のことで悩んだり、優衣やクリスタルにくっつかれて赤くなったりしていた。
「俺がライルみたいだというのか?」
「まあ……近いといえば近い。だが………殿下やお前の年頃ではそれが良いんだ。」
俺やライルの年齢?それが良い?
「どういうことだ、ちゃんと教えろ。」
「それ以上は駄目だ……お前が自分で理解しろ。」
俺が?理解する?何を?セラのことで落ち着かない事を?
秀作が出て行った後、ゲイリーは微笑した。息子達にああいう相談をした事はなかった。だが……ゲイリーとて人の子、経験の一つや二つはあった。
秀作がそういった感情を持つようになったのは微笑ましいことだ。
息子達もああいう相手を持てば良いが……ああ、全く難儀だな。父親とは。
だが………親として、それも一つの良いことなのだろうか?父親として、息子達を縛った償いを……自己満足ではあるだろう。だが、同じ親として秀作の親の常軌を逸したエゴにも憤りを抱いたのも事実だ。
「長野にも話してみるかな?」
だが、ヴェルドとコローレにはばれないか心配でもあった。あの二人が知ったら、何を言うか……
それがゲイリーも少し心配だった。
戻った秀作は胸に手を当てた。すると、セラフィナの笑顔や……涙が脳裏をよぎる。そして、心臓の鼓動が早くなった。
「ああ…分からん。どうなったんだ、俺は?」
シミュレーターで訓練をするか、誰かに格闘訓練の相手をして貰った気分を紛らわそう。そう思って、秀作は再び自室を出た。
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