[38053] コードギアス 戦場のライルB2 SIDE OF WARFARE『傍流騎士の憂鬱』 |
- 健 - 2018年02月22日 (木) 17時21分
テレサは安心していた……実家が『ユーロ・ブリタニア』だった事が幸いして今回のターゲットから外されたのだ。いくら本流から外れているとはいえ、貴族は貴族。流石にターゲットにするのは不都合だと考えたのだろう。
「全く……そういえば、『ユーロ・ブリタニア』にもいたような気が…」
少なくとも、テレサが知る限りで『ミカエル騎士団』にそんな輩はいなかった。マンフレディは言うに及ばず、野生児だったというアシュレイ・アシュラも、あのシャイング郷もそういう話はなかった。
「お姉ちゃん…大丈夫よね?」
「ライル殿下の女の子達が攫われた?」
「そういう言い方は兄さんの品格を損なうからやめてくれない?」
セラフィナが不機嫌そうにして、ルビーは「申し訳ありません。」と謝罪する。
「ルースやマイナに聞いたんだけど……あの秘書官やそのお姉さん、エリア11で起用したパイロットも基地で攫われたんですって…」
「基地って……いくら、ライル殿下の方針が気に入らないからってそんな基地の中で堂々と…」
「姉さんも万が一に備えて気をつけるようにって言っていたわ。」
なるほど……ライルとの接点は確かにエルシリアとセラフィナは深い……
「後、ないとは思うけど貴女が誤解で狙われる可能性も…」
「ああ…双子だから、ですね。」
双子故の誤解など、ありそうな話だが…流石にないと思いたい。
「私がいれば貴女が間違えられる事はないと思うの。」
「大袈裟ですよ…」
それに、立場が逆だ。普通、自分がセラフィナを護衛する物だ。まあ、ありがたいといえばありがたい。
大丈夫よね、あの子は?
マルセルはKMFの整備を終えていた。最近のゼロの動向の活発化を懸念したライルが進言した結果、ライル軍のエース級のパイロット達にもヴィンセントが配備される事となった。
グロースターを凌ぐ高性能機であるヴィンセントは本当にありがたい。正式量産型のウォードとガウェインの量産型ガレスもロールアウトがすすんでいるという。
「しかし……前のような事にならなければ良いんだが。」
あのエリア11でライルはKMFまで持ち出した。だが、今回もその気でいた。何しろ、軍や離宮で堂々と誘拐をする相手だ。何を持っているか分からない。
それは分かる……だが、いくら何でもKMFはないのでは?と思うが、あの『タレイラン・チルドレン』もサマセットやグラスゴーを保持していたのだ。規模はまるで違うが、リフレインの売人が警察とグルになってナイトポリスを所有していたという事例もある。
体勢を作った側の人間だから腐った輩も知っているという事かな?
まして……誘拐された女達はライルが個人的に入れ込んでいる……特に、あのイレヴンの侍女は…
暴れてそれを止める役回りだけは回るなよ?間違いなく、全員殺される。
ヴァルターは壁を殴りつけた。あの後…ルーカスや幕僚達は貢ぎ物の女達を貪った。それまでの女達も部下に与えるか、飽きて殺されるかだ……
チラリと様子を見たが、女達の中には心が折れて自分を見た途端に身体を差し出そうとしたのもいた。立つ事さえやっとなほどに疲れ切った身体で……
『よせ!俺はそのつもりで来たのではない!』
『…いいえ…私達…は……ルーカス様の…貴方方の…物ですから…』
『どちらからでも…お好きにどうぞ……』
悲嘆と絶望から全て諦めた死人の目……あんな眼をした女を遠くから、近くから何人も見た。
「何をやっているんだ、俺は!?サン・ジル卿の汚名をすすぐばかりか……汚名を余計にかぶせているだけじゃないか!!」
「荒れているな…」
後ろから声をかけたのはルーカス軍で正に様々な意味でまともな軍人と呼べるマクスタイン将軍だ。大方、他の幕僚達はいつもの通りだ。
「マクスタイン将軍……」
「ドイツの方から取り寄せた上等なウイスキーがある…一緒にどうだ?」
「自棄酒にしては豪華すぎますね…」
「ビールの方が良いか?」
「ええ…お互い、愚痴をこぼし合いましょう。」
ああ、もういっそこのまま戦場で戦って死んだ方が良いのだろうか?少しは、サン・ジル卿やシャイング郷に殺された同僚達も納得してくれるのだろうか?
|
|