[38048] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-23『婚約者のけじめ』 |
- 健 - 2018年02月20日 (火) 12時25分
ライルはサラからの電話に内心では苛立っていた。こんな時に何を…それが本音だった。
「なんだい?」
〈あの……実は有紗達の事でお話が…〉
意外だ…この件は自軍と一部の人間にしか知られていない。まさか…アプローチを掛けているというヴェルドが口を滑らせた…いや、それはない。
〈父が…ちょっとそのことに関わっているかもしれないんです。〉
何?クラウザー卿が?
すぐに迎えをよこし、サラを基地に連れてきた。
「実は……二日ほど前、父がお客様と会っていたんです。その人達と……何か、金銭の取引をしていて…渡していた物が……」
「まさか…有紗達を?」
「はい……ちょっと、会社のエンジニアの人に頼んで調べて貰ったら…父個人の口座に大量の入金があったんです。」
サラが持ってきたチップを部下に手渡し、ライルは睨み付ける。
「事態が事態だから…いくら君でも、私は今疑っている。」
サラはライルのこちらを疑う目がショックだった。親が決めた事とはいえ、サラ自身は彼の事が本気で好きだった。そんな彼に…今、こうして疑われている。
「………このまま、放っておけば有紗達に勝てる…そう、思ったんです……」
それは本音だ…だが…それでも……
「こんな形で勝っても…嬉しくないから……それに、後で知られれば絶対に嫌われると思ったんです!」
ライルはフンと鼻を鳴らした。
「ああ、殺さなくても即座に別れていただろうね。で……信用して良いのかな?婚約者以前に…容疑者の身内である君を…」
「……父が電話でお話しした相手も、知っているんです。それが………」
その相手を告げた時、ライルの顔が驚愕に染まると同時に…怒りに歪んだ。
「そうか……本当に、私は馬鹿だったようだな。説得力があるよ、その証言は。」
サラは怖かった…でも、これで良いと思った。ライルの事は好きだ…愛している。しかし……こんなやり方で勝っても、それは卑劣なやり方で勝ったに過ぎない。女性としての魅力でちゃんと勝ちたかったから……恋くらいは、血統や財産なんか使わずに勝負したい。
「君の処分は追って考える。今は、こちらが優先だ。」
「…はい。」
すぐにヴェルドとコローレに、そして彼に頼んでクラウザー卿の古座の振り込み元を洗った。いくつかの口座を経由してあり、少々手こずったが、ライル自身もそれを調べた。
「もうあんなことは嫌だ……あんなことは…あんなことは…!!」
周囲にいた者達が不安げに見つめるが、今のライルにそんな物は感じない。大事なのは、有紗達の安全確保だ。
「何かあれば……皆殺しにしてやる…!!」
翌日……ライル自身の徹夜の執念が実った。クラウザー家に入金をしたのはラスベガスの大手カジノだ。だが、このカジノは裏でマフィアとも通じており、殆どの組織が植民エリアに渡った状況下でも貴族の便宜でこちらにいるとの事が分かった。
「で…どうやら、このカジノに有紗ちゃん達をバニーとして売っちまったようだ。あの有紗ちゃん達のバニーは見てみたいが………冗談抜きでやばいね。買われちまったら、もう見つけられない。」
「前置きはいい。で……そのカジノに普通に客としては入れるのか?」
「難しくはないですね………招待客も大勢いるそうですが、紛れ込むのは簡単でしょう。VIPとしての招待状でも…」
そう言いかけたコローレが表情を凍らせた。
「ま、まさか殿下…招待状を偽造しろと?」
「察しが良いね…どうせ金や権力で釣った魚はそれより上の権力で釣れる。私より権限は低いんだろう?相手は…」
「ま、まあそうだね……ルーカス殿下はこっちとはあまり接点がないようだから…あっちはもっとデカいのとつるんでる。」
なるほど…運が良いな。もし奴と関わっているのが相手だったら、戦争になっていた。無駄な方向で運が良い。
「後、招待状より確実な方法があるぜ。なんと、今回俺らがそのカジノに招待されちまった。」
ヴェルドが出したのは、今話題になったカジノへの招待状だ。
「大将がその護衛とか友人って形で来りゃ良いのさ。」
幕僚が「殿下に護衛役など…!」と抗議するが、フェリクスやゲイリーは冷静だ。
「いえ…それは逆転の発想です。裏と表でそれなりに名が通ったヴェルドとコローレ…しかも貴族ですから、護衛はつくものです。」
「まさか、皇族自らが護衛に化けているなどと、敵も思うまい。」
それに長野も頷く。
「ええ、カツラやカラーコンタクト、眼鏡で変装すればそう簡単にはばれないでしょう。」
ライルはニヤリと笑った。
「決まりだ……では、お供させていただきますよ?」
「……こんな怖い顔するお友達がお供してもちっとも嬉しくないんだけど?」
ヴェルドが引きつって返した。
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