[38037] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-22『狂気と葛藤…後編』 |
- 健 - 2018年02月15日 (木) 19時15分
ライルは自室でうなだれていた。先程のニーナ・アインシュタインへの行動自体に後悔はない。だが……あの発言がライルの心を打ちのめしていた。
有紗がいないので、代わりにお茶を入れたクリスタルに問う。
「クリスタル……さっき話したあれ、あれはブリタニアで当たり前なんだろう?」
数秒うなり、クリスタルが「多分。」と答える。
「そんな状況で私は…ナンバーズ採用で治安の安定を求め、そうする事で彼らの生活水準を向上させ、ひいては少しずつ双方が落ち着いて…歩み寄りにも繋がる。それ以外考えつかなかった。」
生まれた地位だからこそ出来る事がある…そう、考えて『フォーリン・ナイツ』を創設した。『堕ちた騎士達』としたのは、ライル自身への戒めでもあった。
「向こうから疑われるのは良いさ……でもっ…!ブリタニアはどうだ!?どいつもこいつも、捨て駒目的の部隊だ…!代わりなんていくらでもいる!自爆させようだ!!叛乱の恐れがあるの方がまだマシだよ!!」
だが、それならば何のための名誉ブリタニア人制度だ?そういうのなら名誉ブリタニア人制度を何故作った?ある制度を活用する事の何が悪い?新しい試みは必要ではないか!!
「これが、正しい世界なのか!?あるべき世の中なのか!?もう、分からない!!教えてよ!掃いて捨てるほどいるのに、そうしない僕の頭がおかしいのか!?僕は世界にいてはいけない物なのか!?」
分からない!ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ!!!
ナゼ、アンナハッソウガアタリマエノヨウニデキテ、ソレガタダシイナドトイウ!?ギネンヲイダク、ボクハイブツナノカ!?
クリスタルは言葉が見つからなかった。前々から無理をしている、それは分かっていた。だが……有紗達の一件でそれが遂に堤防に穴が空いた。
「はっきり言ってよ!僕は頭がおかしい!世界の異端だって!!」
だが、クリスタルはライルを抱きしめた。
「頭がおかしいかは分からないけど……貴方は自分が考えられる最善の方法をとって、今あれだけの人が支持している。少なくとも、私は貴方を異端とは思っていませんから。」
そう、それは本当だ。クリスタルの中にあったあの時の、今でも自己嫌悪に見舞われる感情……それも事実だ。でも、この人にだけは知られたくなかった。嫌われるなどでは済まされないだろうし、あまりにもあの時のライルの姿を知っているから。
「とにかく……今は有紗達を助ける事だけに集中して。そんなうじうじと何時までもいじけている指揮官なんて頼りない事この上ないですから。」
ライルをあやし、立ち直らせようとするクリスタルの姿はテレサに眩しかった。ここまで、荒れていたライルを立ち直らせるために尽くしている……以前も、レイは有紗の事できつい事を言ったという。二人共、ある意味でライルに遠慮がない……だからこそ、ライルも気を許しているのだろう。
「羨ましい関係ね…」
あれほどまでに好いてくれる人など、そうはいない。ライルは彼女のアプローチには辟易しているが、人間性は好いている。そこはもう分かる。ふと、いつか自分にもあんな人が……等という願望を抱きそうになったが。
「殿下、やはり私は戻らずに捜索に協力します。」
「テレサ?」
「何時までもいじけている指揮官の復活を待っていたら、本当に手遅れになります!それまでは、我々がやりますから!」
そういって、テレサは退室した。
マルセルはヴェルドとコローレからライルの過去を聞いていた。
「甘えたお坊ちゃんの理屈だな。」
「だと思うよ……けど、それで同じような人を出さないために大将なりに本気で考えている。」
ヴェルドの言う通り、陰謀で好意を寄せている相手を殺されたから、国その物へのある種の復讐など………
「だが、俺もある意味で似ている……否定はしないさ。」
マルセル自身も家族を自国の軍に殺された身……あの時の自分を見ているような気もした。
サラは昨日、チラリと見た物が信じられなかった。あの晩……父は誰かと話していた。ドアをこっそり開けて覗いてみると、そこにはサラの知っている顔がいた。しかも、電話で話している相手もサラが知っており……加えて、金銭を受け取ってある物を手渡した。つまり……そして、あそこにいたのは間違いない。何故?
サラは一瞬、これで勝てるのでは?等という考えが浮かんだが、それをすぐに振り払う。そんなの、勝った内に入らない。大体、そんなので勝っても嫌われるどころか、それでは済まされない!
サラは覚悟した……携帯を取りだしてライルに連絡を取る。
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