[38032] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-22『狂気と葛藤…前編』 |
- 健 - 2018年02月14日 (水) 21時57分
すぐに救出のためにライルは行動する。今回、攫われたのは有紗、優衣、涼子、ノエルの四人だ。ノエルは基地で……有紗達は離宮だ。ライルはその時にいた離宮の使用人達と警護隊全てに尋問を行った。とにかく………その時のライルは鬼気迫るもの…等と生ぬるいものだった。
とにかく、リフレインを除けば最も強力な自白剤を全員に投与しろと命令、それが駄目ならば全員を自ら拷問して吐かせようとしたのだ。まさに、妄執に突き動かされていた。
何とか嘘発見器と弱い自白剤の投与にさせるのに三時間かかり、ようやく尋問を始められた。幸いな事にライルが慕っていた老執事や一部の使用人達は白だった。だが……離宮の侍女の一人がクロだった。彼女はライルが幼い頃から仕え、歳は三つほど上だ。ライル自身も姉、とまでは行かないが慕っていた。その彼女が…誘拐に協力したのだ。
協力を依頼した相手は報されていなかったが、彼女は協力した。嫉妬していたのだ……長い間仕える内に、彼女はライルに想いを寄せるようになったのだ。しかし……仕える違いから彼女は諦めていた。それなのに……ナンバーズ出身の有紗やハーフのレイはライルとさながら恋人のような雰囲気を醸しだし、好意を隠さない優衣にも嫉妬した。それから協力したのだ……
「ほう?」
「殿下!あんなイレヴンなんかより、私の方が相応しいです!!貴族に生まれた私の方が…あんな…」
「断る……真っ向から勝負せずにつまらない方法で勝とうとした相手など、私から願い下げだ。君は今日限りでクビだ…………」
「え?」
「聞こえなかったか?クビだ。私が君の気持ちに気付かなかった……それへの埋め合わせで命は助けてやるし、辞職扱いにはしておいてやる。」
それが…ライルが彼女の気持ちに気付かなかった償い………のつもりだった。だが、本音を言えばそんな事したくなかった。即座に八つ裂きにしてやりたかった………だが、長い間仕えてくれた相手であるという事がそれを迷わせた。
「ああ、くそ!!」
寝る間も惜しんで捜索をするライルの元に、シュナイゼルの側近であるカノン・マルディーニが一人の少女を連れてきた。確か、エリア11でシュナイゼルの目にとまったアッシュフォード学園の生徒ニーナ・アインシュタインだ。
「随分と荒れておられますわね…」
カノンの気遣いにライルは「ええ!」と乱暴に答える。
「離宮の侍女が荷担していた!私の事が好きだったそうですが……こんな卑劣な手に走る女なんてゴメンだ!!」
乱暴な口調になったライルを見て、カノンがため息をつく。
「お互い様ですわね……貴方がそういうのを嫌うのを分からなかった、相手の気持ちに貴方もお気づきにならなかった…」
「傷に塩を塗るか!?今は有紗達を助けるのが先決なんです!!その際に、主犯格は全員殺してやる!!」
近くにいたヴェルドとコローレは複雑な表情をしていた。その時……
「どうしてそこまでイレヴンに拘るんですか?」
ニーナの問いにライルは彼女を見る。ニーナは理解出来ない、というような顔をしていた。
「エリア11で攫ったのでしょう?攫われたって同じじゃないですか。大体、イレヴンなんか■ぬのが大好きなんですし、もう勝手に■んでますよ。」
まるで、それが当然。真理とでも言うような口ぶりだ……それがライルの心を更に抉った。
「イレヴンなんかじゃない!彼女達は日本人だ!!」
皇族にあるまじき言動だ。だが、ライルはそんなもの全く考えていなかった……しかし…
「どうしてなんですか?イレヴンじゃないですか。日本は占領されたんです。それに……イレヴンなんて代わりはいくらでもいるんですよ?新しいイレヴンの女の子を攫って無理矢理お仕えさせれば済む……」
最後まで言わせず、ライルはニーナの首を掴み、持ち上げる。
「貴様……!今、なんて言った?もう一度言ってみろ…!」
力を込め、ニーナの口から涎がこぼれる。酸素を欲して、口を動かす。喋れるわけなどない。だが…ライルの怒りは収まらない。
「イレヴンなんていくらでもいる?どうせ■ぬのが大好き?貴様のような腐った輩がいるから、何時までも互いに争っているのだろうが!!ブリタニアの雌豚が!!」
更に力を込め、ニーナの首がちぎれるほどに占める。
「が…ぁがっ…!」
「私は彼女達をそんなつもりで迎えていない!!知った風な口をきくな、豚女!!」
「殿下!それ以上はおやめください!ニーナが■んでしまいます!!」
「ああ、殺すのさ!!汚らわしいブリタニアの豚をな!!」
が、そこでカノンが銃を向けた。
「放さなければ、貴方を撃ちます……それに、彼女はシュナイゼル殿下の肝いりの科学者………貴方とて、どうなるか……貴方自身がご存じでしょう?何より、今■ねば貴方のお姫様達も…」
そう言われて、ライルは少しだけ冷静さを取り戻した。そして……ニーナを投げつけた。自分でも驚くほどの力だ……火事場の馬鹿力というのがあるが、恐らくその類なのだろう。
「だったら、さっさとその汚物を持って帰れ!目障りだ!二度と私の視界に入れるな!!」
「……難しいですが、努力はします。ニーナ、立てる?」
必■に酸素を吸うニーナは頷くだけして、よろよろと立ち上がってカノンに連れられて退室した。
「今の件は他言無用で……」
カノンが周囲に釘を刺し、ライルも睨み付ける。
「さっさと行け!」
ヴェルドは腰が抜けそうになった。あまりに…怖かった。あの温厚なライルが、あの事務次官の時とはまた違う。そう…正に憎しみ一色だった。
「た、大将?」
「何だ、お前達は?奴らの仲間か?」
「違う!俺らの顔をよく見ろ!!」
肩を掴み、少し揺さぶると……ライルの顔に若干落ち着きが戻ってきたのが分かる。
「ヴェルド…コローレ……さっきの豚は?」
まだ完全ではないが、大分正気に戻っている。
「カノンが連れて行きました…もういませんよ。」
「ああ…そうか……後で消毒しておかないとな。」
否、既に正気を失いかけている。ナンバーズ否…他人を汚物、豚扱いなどライルは決してしないのに………ニーナは完全に汚物扱い。だが、その理由は分かっている。先程のニーナの言葉がジュリアの時と全く同じだからだ……
あの時も…「庶民などまた探せば良い」、「貴族に比べれば庶民などは道の石ころと同じ」、そして…聞いた話では「ナンバーズなどいくらでもいるんだから自爆や捨て石にすれば良い」、「ナンバーズを効率的に使い、捨て石にする素晴らしい作戦」と、ライルの方針をその程度にしか捉えない貴族もいたという。
デジャヴーという奴だ。しかも今回はよりにもよってトラウマに直結しているのだ。とてもではないが、こればかりは攻める気にならない。
「早く有紗達を…ジュリアヲ助けて…犯人達ヲ皆殺シニシヨウ………助ケテ……皆殺シニ……ソウダ、ソレデコノ国ヲ滅ボシテ…………ゼロモ殺シテ、世界も全テ滅ボシテ支配スレバ…」
「わあああああ!!!」
二人で同時に耳元で叫んだ。ライルは反射的に耳を塞ぎ、数秒後に……睨み付けた。
「鼓膜が破れるだろう!!」
「…文句言うな、正気に戻っただろう。」
「少し休んで…また暴れられたら我々が適いませんよ。」
「…………信用して良いんだろうな?」
「だから、俺らなら大丈夫だろうが!!」
「あ…ああ、そうだった。」
ヴェルドはライルが戻っていくのをみて、ため息をついた。
「ああ…もう。これじゃあ俺らより先に大将が■んじまう。」
「同感だな、これで万が一の事があれば……自害しかねない。」
荒れは今までで一番酷い……先程のあの一瞬、ライルは自分達の事さえ分からなくなっていた。下手をしたら、あれほどまでに取り乱し、正気を失いかけてしまうまでに愛している有紗を失ったら、本当に壊れてしまう。
「有紗ちゃん達のためにも、大将のためにも…探さないとな。」
「ああ、本気でな。」
この時、二人はいつものふざけた態度を消していた。
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