[38024] コードギアス 追憶のエミリオ intermission 先遣 |
- JIN - 2018年02月11日 (日) 13時05分
モスクワ。
ネオ・クレムリン大宮殿。
サンクトペテルブルクのカエサル大宮殿の優美さと違い、いかにも実戦的な重厚さを感じさせている。
大応接間。
向き合っている二人の青年。
「この度はご協力どうもありがとうございました。オズヴァルト伯爵」
「いえいえ。むしろ『殿下』のためと思えば、こちらこそ感謝すべきでしょう。『ヴェランス大公』閣下」
「その呼び方。お気に召されない方もいらっしゃるのでは?」
「お認めになったのは殿下です。いかにあのエイゼンシュタイン子爵も煩い事は言えんでしょう」
「まったく。あの方は苦手ですよ」
「ほう。苦手とおっしゃるわりには、あの方について話される時の貴方の顔は実に楽しそうですが?」
「そうですか?」
しばしの苦笑。
チラリと伺い見る表情。
「で。私がここに来るようにわざわざ仕向けられた本当の御理由については?」
「お分かりでしたか」
「それは。お分かりになられるようなされ方をされれば気付きますよ」
「実は貴方様ならではの御助言を頂きたい。知ってのとおり私は旧ユーロ・ブリタニア系であり、しかも傍流出身です」
「…」
「だから貴方の御助言を頂きたい。エカテリンブルグの旧本国系の方々の中でも特に叡智を謳われる貴方の御助言を」
暗くなる広間。
しばしの間、その前に広げられる様々な情報。そして会話。
「なるほど。お見事な物です」
「お褒め頂きありがたい限りです」
「で。中央部のリングスの位置ですが、そこにはあの噂のエミリア・バーンスタイン嬢も?」
「ええ。出来ればお聞きしたいのは、彼女についてもです」
「これは驚いた。何も知らずに彼女を認め重任をお与えになられていたんですか?」
「遺憾ながら、今は『博打』の季節です。使えそうな物はとにかく使ってみるしかないでしょう。まあローランスには注意させてますがね」
「確かに。私はペンドラゴンでバーンスタイン侯爵家ともいくばくかの交流はありましたよ。そのおかげで、あの『血の聖夜』にも軽い連座でペンドラゴンから単身離されましたが…」
それから先の事は触れたくないといった感じの表情。
「…あのエミリア嬢については、事件の直前に侯爵が認知した御披露目の時にチラリと見ただけですよ…あの時は特に大した印象は無かった…われわれ貴族の社会ではよくある程度の」
それを慮ってか敢えて事務的に次に進める会話。
「侯爵としては、いきなり皇帝の前に出すわけにもいかなかったんでしょうが。それにしてもあの万能騎士ナイトオブゼロを相手に互角に立ち回ったという実力は凄い。まあそれもありますが…」
「そのナイトオブゼロの感想ですか?」
「そうです。そちらの方なら貴方も身近で見られていたでしょうが」
「自分の感想ですか。彼について一言でいえば…『政治家』ですね」
「『政治家』…ですか。その父親のように?」
「そう。『戦士』というには『政治家』過ぎる。まあこれは彼の悪逆皇帝陛下が『皇帝』というには『革命家』過ぎるのと似たような理屈ですが」
「で。もし彼ならば現状の我々の動きをどう考えます?」
しばし考え込んだ後に。
「それは。我々の現在かつ将来の行動が世界全体の平和に益するか否かでしょうな」
展開図に指を添えながら話を進める伯爵。
「ブリタニアも含めた現在の超合集国連合体制は明らかに安定性を欠いています」
世界全体に変わる画面。
「あの連合は元々『対ブリタニア政治同盟』であり、それを前提として結束していた組織です。それなのに、そのブリタニアを内部に組み入れた事で様々な無理と矛盾が生じてしまった」
「だからいっそ我々がその仮想敵の役割を引き受ければどうなります。そうすれば連合内部での結束も容易になり局面はむしろ安定する可能性が高くなる」
「内部のブリタニア本国と我々が組む可能性を考えれば、ブリタニア以外の諸国も大同小異で結束せざるを得なくなるわけですし。そうなれば内外含めた新たな『三極』体制が構築できる」
「しかし我々が『三極』の一つとなるには、現状では決して十分ではない。それにはどうしてもウクライナ・ベラルーシ・バルト三国まで版図に組み入れる事が様々な意味で必要となります」
「あと。アラスカですね」
「まあそちらは後の課題でしょうが」
「そうです。とにかく今はスモレンスクに全てが賭かっています」
「それはもはや現場に任せる以外にないでしょうね」
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