[37973] コードギアス 追憶のエミリオ intermission 説得 |
- JIN - 2018年01月21日 (日) 14時39分
合衆国ベラルーシ。
多くの軍用車両やKMFが移動している。
首都ミンスク郊外。
森林の中の一つの別荘。
そこも多くの軍関係の人員と装備が動いている。
その中の応接間。
そこで向かい合う青年と壮年の二人の人物。
「…それでは、どうしても協力していただけませんか。コシチェスコ首相?」
「いまさら何を私にどうしろというのだ。おまえの好きにすれば良いではないか。ポニャトフスキ」
「…」
「そうか。手続的には正当の権力者であるはずの私の協力が必要だという事は、政治的にお前が不利な状況にあるということか。まああの遠慮の無いポーランドの事だからな。その辺りでお前の足元を見てきているという事か」
不愉快そうな青年。
「ポーランドなどと組むと考えたからこのザマだ。あそこは気位ばかり高くて相手の都合など全く考えないからな。それに見合うだけの力も無いくせに」
「だからこそ事がなった暁には…」
「追い出す事も出来るというのかね。無理だな。もし成功しても我が国にはポーランドを追い出す力は元々無い。失敗すればそれはこの国が北ユーラシアとの間の戦場となる事だ。それこそ今までと比較にならないくらいのな」
「超合集国連合が…」
「介入するというのかね。無理だな。連合の主流派は北ユーラシアよりも内部のブリタニア本国をむしろ恐れている。ブリタニア本国抜きで北ユーラシアに侵攻して敗れても、それを加えて成功しても、いずれにしても今以上にブリタニアの力を高めるだけだ。連合はあくまでこの戦争を北ユーラシアの実力テストに利用したいだけだ」
「…」
「まあポーランドが潰れるとなれば、流石に介入しないわけにはいかないだろうが、それ以前ならばおそらく容易に妥協する。我が国とウクライナ、そしてバルト三国あたりの征服経験国群は格好の取引材料にされるだろう」
「…」
「もちろん。おまえの博打が成功しない可能性が百パーセントというわけでもないだろう。ここまで来たのならあくまで自分の力だけで英雄になってみせろ。私も。私の家族も関係なくな」
立ち上がる青年。
「分かりました。残念ですが、もう何も言いますまい。次に会うときは必ず英雄としてお会いいたします。それでは」
部屋の外に出る青年。
傍に寄る側近。
「どうでしたか?」
「相変わらず。頑固な方だ」
外に歩き出し始めた時、突如として部屋の一つから飛び出す影。
「ロベルト様!」
思わず銃を抜こうとする側近を押し留め、その影を正面から受け止める青年。
「これはこれはシュゼット様。相変わらずお元気そうですな」
その受け止められた胸に縋りながら、その満面の笑顔を擦り付ける少女。
「はい! ロベルト様もお元気そうで嬉しいです!」
「この狭い中に押し込めているのは心苦しいですが、御家族の安全のため、どうかもうしばらく御辛抱をお願いいたします」
「はい! 分かってます! ロベルト様の事ですもの!」
少女の飛び出した部屋の方を見る青年。
「御姉上。クリス様もお元気でいらっしゃいますでしょうか?」
一瞬顔を凍らせる少女。
「え、ええ…」
それに構わず顔に笑みを浮かべる青年。
自分の身体から少女を離しながら続ける言葉。
「それでは姉上様にお伝えください。我が国の大願成就の暁に、必ずお迎えに上がりますと」
「は、はい…」
再び歩き出す青年。
そしてそれを複雑な顔で見送る少女。
その姿がやがて正面扉で遮られるまで。
|
|