[37894] コードギアス異聞 叙任のカレン FLAME−2 対策会議 |
- JIN - 2017年12月04日 (月) 00時05分
明るくなる室内。
「…以上が噂の叙任式の模様です。『前』と異なり、今回はテレビでもネットでも一般公開されておらず、公式記録としてのみ撮られていた物を裏から入手したものです…」
ディートハルトの説明と共に、思わず溜息を付く室内の一同。
蓬莱島。黒の騎士団旗艦「斑鳩」会議室。
長い会議用のテーブルの両側には、それぞれ以前からの扇グループと、それ以外の藤堂ら幹部陣が分かれ、その間の最上席には仮面のゼロが位置している。
「まさか、まさか本当に、あの紅月があんな真似を…」
思わず言葉を漏らす千葉。それはほとんど絶句に近い。
「はん! やっぱりあいつもブリタニア人だったってことなんだよ!」
最末席から吐き捨てる玉城。
「それは言い過ぎじゃないか?」
思わず嗜める南。しかし玉城の舌鋒は収まらない。
「だって見ろよ! あいつの顔に姿、どう見たって日本人には見えねえじゃねえか!」
「彼女は卜部さんと共に、この一年間、塗炭の苦労を背負ってきたんだ。僕は信じたくない。彼女の裏切りなど。藤堂さん?」
藤堂の判断を仰ぐ朝比奈。
両腕を組みながら、しばし思案を巡らせ、対面の相手を見つめる藤堂。
「あいにくと私は彼女をよく知らない。知っているというなら…」
その視線を受け、それまで伏せがちだった顔を上げる扇。
そして発する引き絞るような声。
「…俺は…俺は…もしブリタニアが…あいつを…カレンを受け入れてくれるというなら…それはそれで構わないと思っている…」
ザワッとする室内。
「いま玉城が言ったとおりだ…あいつは日本人として生きるには無理があり過ぎる…むしろこれこそが普通の自然じゃないのか…」
まさに悲痛としか聞こえない口調に、文句の付けようのないといった一堂。そこに。
「いいお兄ちゃんだねえ」
緊張した場にそぐわぬ軽い一言に、思わずそちらを向く一同。
その視線の先で、相変わらずの長キセルを吹かせているラクシャータ。
「あたしにも欲しかったよ。そういうの。でもねえ。そうは簡単に行かないのよ」
「どういうことだ?」
問い詰めるような扇の視線に、あくまで平然たるラクシャータ。
「だってさあ。あの子はこの黒の騎士団の一番のエースパイロットじゃない。それを失うってのは大きいよ。それにもしあの子がブリタニア側でこっちに向かってくるってんのならそれこそ一大事よお?」
それに対し何か問い詰めそうになる扇。
ただしその前に。
『待て』
初めて声を発する仮面の男。
『要点をもう一度考えてみよう』
「要点?」
視線を巡らす藤堂。
『そうだ。いま確実で重要なのは、とにかくこれによってカレンの身の安全がひとまず保たれたという事だ。仮にも皇族の騎士に表立って異や危害を加えられる物は無い。こちらがすぐに救出できない以上、拘束されているよりは遥かに身の安全が確保できる』
「なるほど」
いかにも助け舟といった感じの声を発する、ディートハルト。
『あの総督とカレンの間に何があったかは私にも分からない。ただしあの総督はコーネリアのように戦場を歩き回るタイプではない。こないだの収容所事件のような真似は周囲も警戒するだろうしな。そうなればカレンも総督府の限られた空間の中にしかいられない。ならば戦力的な脅威となることも避けられる。とにかく早まって考えてならないのは、現在のカレンは別に日本人に危害を加えたわけではないという事だ。そこを早まり誤れば、むしろみすみすカレンを嫌でもブリタニア側に追いやる事になる』
「…確かに。今はとにかくカレンの身の安全だな…」
感謝の念も込めて、ゼロに頭を下げる扇。
それを横目で見つつ、敢えて一言を投げるディートハルト。
「では。ゼロ。公式の発表はどういたしましょう。この件についての我々の立場は?」
『今回の件は、別にテレビやネットで大きく公表宣伝されたわけではないだろう。ならばこちらも同じに扱えばいい』
「と、すると?」
『決まってる。「黙殺」だ』
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