[37884] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-16『革命と貴族…前編2』 |
- 健 - 2017年11月28日 (火) 02時48分
前線指揮官のバルディーニは敵の砲撃を見てすぐにその意図を悟った。只包囲陣を崩すだけではないはず……恐らく、ここで突撃をかけてくる。ならば!
「全艦、一斉射撃!!」
後方と前衛の陸上艦が一斉に敵軍へ砲撃を行う。だが、敵の対応も早かった。陸上艦の機銃、更にデータにあったローレンスとベイランがハドロン砲で艦砲を撃ち落としてしまう。
更に、爆炎の中からデータにはない青い新型が突出し、それに続く形で『双剣皇女』と『侍皇子』のKMFも前に出る。消去法であの青いKMFが『ブリタニアの狂戦士』だ。
〈はん!イレヴンかぶれやお姫様風情が前に、ぎゃあああ!!〉
〈ひ!こ、来ないでよ!あんた達の相手はイレヴ…!〉
〈役立たずの外人部隊め!!おまえらがやらっ!〉
皇族達の四機のKMFが外人部隊を素通りし、正規軍に攻撃を仕掛ける。もうこうなってしまえば勝負にならない。乱戦状態ならばKMF同士の近接戦闘が主眼となったKMFが多いブリタニア軍一部を除いてKMFとは呼びがたいパンツァーフンメル…加えて相手は歴戦の勇士達。まともな戦闘経験など皆無の正規軍では勝負にならない。
〈将軍、私達が出ます!!〉
「何を言うのだ!?」
幕僚はクラリスが前に出るのを認めない。だが、既に外人部隊の隊長達はヴィンセントや他の新型部隊に足止めを喰らっている。『暴君』のラモラックはまだ後方にいるようだが、既に四機のKMFによって正規軍は攻撃を受け続けている。
バルディーニはすぐに決定した。
「頼む。」
〈はい!〉
クラリスはバルディーニに感謝した。今ほど、彼が前線の司令官であったことに感謝する。
「ほら、さっさと下がりなさい!私達が抑えてあげるからさっさと陣形を立て直して!!」
〈大佐はあの青いKMFを!恐らく第八皇子だ!!〉
やはり!あのヴィンセントがいないからもしやとは思っていた。
〈美奈川とヴァントレーン、海棠は皇族の相手を!他は正規軍の援護に回れ!〉
いつもと同じやる気のない正規軍の尻ぬぐいをさせられる外人部隊…だが……
「気持ちは察するけど今はこの場を切り抜けることを優先!私達が皇族に一矢報いれば少しはやる気を出すでしょう!?」
クラリスは立ちはだかったサザーランドを両断して青いKMFに向かう。青いKMFは今も正規軍のパンツァーフンメルを双剣で斬り倒す。
「また会えたわね、ライル・フェ・ブリタニア!!」
青いKMFがローランのフローレンベルクを受け止め、敵機から通信がかえってきた。
〈その機体…あの時の!〉
「ええ、クラリス・ドゥ・ピエルスよ!それが貴方の新しいKMF?」
〈そうだ……ベディヴィエールという。〉
ベディヴィエール……確か、イギリスの伝説に出てくる王の剣を湖に返した騎士の名前………
「素敵な名前じゃない!壊すのが惜しいわ!」
一度距離を置いて腰のハドロン砲を発射する。射程距離と威力を犠牲に連射力を重視した砲撃だが、ベディヴィエールはそれを躱し、剣を振り下ろす。クラリスはフローレンベルクで受け止め、それを押し切る。
だが、ライルも腕のハーケンを展開して反撃する。クラリスは腕のシールドでそれを受け流すが、それを突いてベディヴィエールが槍を突き出す。シールドで直撃は避けられたが、今度はローランが押し切られる。
ライルはピレネーで出会った敵に興奮していた。強い。あの池田誠治や美奈川浅海以外にもこれだけの敵がいたか!!『ハンニバルの亡霊』がもういない今、腰抜け揃いのE.U.では期待出来ないかと思ったが、これほどの使い手がいるとは!
そういえば、秀作や雛の報告では外人部隊にも腕の立つパイロットがいるそうだったな。この戦場にいるのならば是非戦いたい!
だが、今は目の前の敵だ。
〈強そうな槍を持っているのね!〉
「ああ、ロンゴミニアト…私が名付けた魔槍だよ!!」
〈そこは聖槍と呼ぶのではなくて?〉
「『洗脳皇子』と呼ばれている私が聖槍?笑えないよ、それは!」
ロンゴミニアトを振るうが、ローランはそれをダガーで受け流す。だがライルもその勢いに乗せられずに逆にその勢いを逆手に敵に向き直り、胸のハドロン砲を発射する。
ローランはシールドで軌道をそらし、こちらのKMFが二、三機やられた。
「ピレネー山脈でも感じたことだが、やはり強いね!!」
〈貴方こそ、出来ればもっとまともな場所で会いたかったわ!〉
「それは嬉しいことで!!」
二機は互いに距離を取っては砲撃を、または槍と剣でぶつかり合う。
シルヴィオはライルの相手をチラリと見る。正面から戦えば、ライルは間違いなく『ラウンズ』のレベルだ。それと真っ向から渡り合うあのパイロット、機体もさることながら恐ろしい相手だ。だが、今はこちらも目の前に集中しなければ。
「お前とまた会うとはな!ゼラート・G・ヴァントレーン!!」
〈覚えていただいて光栄だ、シルヴィオ・ロ・ブリタニア!〉
ディナダンとシュテルンが互いの剣で再び押し合う。
「『双剣皇女』様の片割れとお手合わせ願えるとは光栄だね!元日本軍の海棠龍一だ!」
〈エルシリア・ギ・ブリタニアだ…!お前のような軽薄な輩が軍人とはな!〉
だが、海棠はそんな避難を意に介さない。
「いや、人を見かけで判断しちゃいけないよ?あんたと妹姫様のような剣よりドレスが似合いそうな美人さん達がとんでもなく強いようにさ!」
〈…なるほど、一理あるな。では、見かけ通り固めさせて貰おうか!〉
〈『双剣皇女』の片割れ…貴女に用はないの!私はライル・フェ・ブリタニアに会いたいのよ!!〉
ベイランと押し合う緋色のKMFからの声が自分と同年代の少女なので驚いたが、セラフィナはそれを押し返す。
「貴方、兄さんに恨みでもあるの!?」
元々皇族は恨みを買うような存在だ。あのゼロもブリタニア皇族への恨みで動いているとコーネリアの側近であったダールトンが分析していたという…彼女もその類か?
〈恨みとはちょっと違うわ…!あと、畑方秀作にも会いたいのよ!〉
秀作…その名前を聞いた時セラフィナは操縦桿を普通より強く握った。
「秀作を『裏切り者』とか『恥さらし』とでも言うの?貴方達に決める権利があるの!?日本独立のために戦えと!」
ベイランの肩に内蔵された小型のハドロンブラスターで緋色の機体を撃つが、敵もシールドで受け止めた。そして、槍で襲いかかる。
〈そんなの分かっているわ!只私が一番会いたいのはライルよ!!〉
「…っ、なんで兄さんに拘るのかは知らないけど…簡単にはいかせないわ!!」
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