[37883] コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−12 全面介入 T |
- JIN - 2017年11月26日 (日) 23時39分
ベラルーシ東部。
ドニエプル河東岸。
「…」
対岸にモギリョフを眺めつつ、いやそれには背を向けて、遠い星空の彼方に視線を投げる一人の女性。
GC「九本槍」の一人、アリアナ・アーデルハイト・ヴァイトランド。
「どうされましたかな。義姉上?」
横を振り向くと、そこに悠然とした風情で立っている一人の青年。
こちらもGC「九本槍」の一人、ヴィクトール・ヨーゼフ・クロックシュタイン。
それにいささか眉を顰めさせる女性。
「からかわないでよ。ヴィク。いつも言ってるでしょ。年上の貴方にそう言われるのはこそばゆいって」
それに対して苦笑で返す青年。
「悪い悪い。じゃあアリー。敵の方でなくどちらを向いてたんだってね」
「…」
「サンクト・ペテルブルクの御家族の方ならもっと北だし、そうか、遥か東のアレウス様か」
一瞬、動揺するも気を取り直すアリー。
「…悪い?」
「とんでもない。まあ。それにしても面倒なもんだな。我らが大アレキサンダー一門の次期当主でありながら、一人の騎士として、一門外の中に混じって御苦労とは。本来なら君一人くらい傍に置かれてしかるべきなのにな」
「仕方ないでしょ。それこそがアレウス様御本人の希望だもの。それに…」
「ヴラトゥカ様の御意思か。『本人の好きにさせろ』『死ぬ時はどこにいたって死ぬ』だもんな。ま。あのペンドラゴンですらああなったんだ。あれを見ればこの世に絶対的な安全地帯などどこにもないのは分かる。何が幸いして何が災いするのか最後まで分からないのが世の中だって」
「…」
「ま。ヴラトゥカ様の場合、アレウス様への『甘やかし』と言う声も一門の中に多いがな。だから単なる『大甥』じゃないんじゃないかという声すらある」
怪訝な表情を浮かべるアリー。
「…ちょっと。何を言いたいのよ。ヴィク。まあ確かにファシリア様はいろいろと問題のある方よ。でもその時期にアレウス様を御懐妊されていたのは間違いないって言うじゃない」
「まあな。でもその時期のヴラトゥカ様の御行動もはっきりおらず、御本人も明言されていない。だからそういう噂が立つ余地も生まれる。今のアルテナ様と御同様に…」
いささか沈鬱げなヴィクに対し、睨み付けるようなアリー。
「ちょっと。ヴィク! まさか。あんたまで、例の『おぞましい噂』を信じてるんじゃないでしょうね!?」
「…あの時期のファシリア様は完全に不安定だった。例の邪教にも取り込まれてたしな。それにドミニオンだ。あの威力は知ってるだろ。それに盛られた相手の記憶にも残らない。状況証拠だけなら十分に揃って…」
「やめて!」
聞くに堪えないとばかりに、腰の剣を抜いて切っ先を突き付ける!
「これ以上先を言ったら…殺す! たとえ…たとえクラリッサに恨まれる事になっても!」
軽く手を振るヴィク。
「…すまん。悪かった。しかしこれを言ったのは君だけだ。許してくれ。俺としても誰かに聞いてもらわなければ耐えられなかったのかもしれない…」
「…」
しばし無言で向き合う二人。
しかし、その次の瞬間、輝く閃光! そして轟く爆発音!
すかさず身を伏せて、爆風をかわす二人!
改めて見合わせる目と目!
「来たぞ!」
「ヴェランス大公の予測どうりね!」
「急速撤退だ!」
「ええ!」
|
|