[37877] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-16『革命と貴族…前編1』 |
- 健 - 2017年11月24日 (金) 01時01分
両軍共に万全の体制を整えて、決戦の時が迫る。だが……
「勝てる見込はほとんど無いな…」
誰にも聞こえない程度でマスカールが口にする。今回は彼も総司令官として前線に出ていた。やる気のない幕僚達も総司令官が出るとなれば前に出ざるを得ない。
「全く、総司令官も大変ですな。」
「我々は只高みの見物をしていれば良い。」
これだ……一体何処に自分達は絶対に大丈夫だという自信があるのか…
クラリスは戦う前から疲れていた。正規軍の情欲に外人部隊の不信感…そして、不信感はKMFにまで向けられた。上の連中がパフォーマンスのために作ったハリボテだと揶揄するのを聞いた。いっそ、本当にハリボテだった方がまだ清々しい。
せっかくの高性能機なのに、あの父は娘を前線に出さず、先日の申請も却下されて結局彼女は本陣で待機だ。正規軍のやる気のなさは言うまでもない。
「ああ……あいつら私の気を引くような不純な動機でも良いから真面目にやってくれないかしら?」
〈無理だな。〉
フィリップが断言し、クラリスはモニター越しでにらみつける。
「嘘でも同感くらい言ってよ。」
〈それは無理ですよ、隊長。〉
ヴァンが斬り捨て、ガイルやリラも同様の意見を言う。
「もう……これじゃライルと戦う以外に意味がないわ。」
せめて、彼がこの本陣にまで攻め込んでほしい。それだけがささやかな期待となっていた。
ブリタニア軍ではライルが総司令官となっていた。皇位継承権などで言えばルーカスなのだが、その能力の低さは国内でも有名だ。だが、シルヴィオではなくライルが総司令官となったのはシュナイゼルの推挙だ。シルヴィオとエルシリアの幕僚達は勿論、ライル本人も訝った。だが、宰相の命令である以上は従うしかない。
ライルは新たな機体ベディヴィエールの最終チェックを行っていた。ロールアウト時よりも関節やランドスピナー、フロートのパワーが上がっている。また、涼子がヴィンセントでの操縦データを元に組んだOSを搭載しており、当初よりも運動性が20%程上昇している。
〈ライル殿下…一応試運転はしましたけど、もし調子が悪いようだったらすぐにヴィンセントに乗り換えて下さいね?〉
「分かった。ただ、君の腕は信頼しているよ?」
涼子は呆然として、〈死んだら許さない。〉と返した。
戦闘はルーカスのラモラックによる砲撃とその旗下である部隊が装備した携行型ハドロン砲による一斉砲撃で始まった。
最前線のKMF隊が砲撃を受け、その隙を突いて前衛のKMF隊が突っ込む。パイロットは皆庶民出身者、貴族達はその後ろから着いてきている、ルーカス軍の基本布陣だ。そういえば聞こえは良いが、実際は貴族達がすぐに逃げられる様にするためだ。
先頭のクルークハルトは銀と茶色のヴィンセントで突っ込むが、敵は持ち直しが早く、すぐに撃ち返してくる。
「射程距離は向こうが上だ!一箇所に固まらずに攪乱しろ!!」
クルークハルトのヴィンセントが突出し、砲撃を攪乱する。パンツァーフンメルの砲撃はヴィンセントを捉えられずにサザーランドやグロースターに距離を詰められ、接近戦で撃破される。
「捨て石扱いの先鋒は腕が立つようだ……バルディーニ将軍、中央のイタリア外人部隊を先鋒に。先鋒を瓦解させ、貴官の艦隊で砲撃を。」
〈了解。〉
「左翼のフランス外人部隊、右翼のドイツ外人部隊で後方の指揮官機共々包囲しろ。」
〈了解。〉
各外人部隊がKMFを搭載した陸上艦と共に攻撃をする。中央の部隊も報告にあった新型ヴィンセントはまだ踏みとどまるが、時間の問題だ。
「ここまでは良い…」
だが、問題は両脇の幕僚達だ。こいつらが余計なことをしないかどうか、それがマスカールやバルディーニの恐れていることだった。
「おい、後退する!ライル、お前らが代わりにやれ!!」
ルーカスはすぐに砲撃をしながら交代し、フィリアやエイゼルも砲撃しながら逃げる。
〈何だよ、こいつら!?〉
〈E.U.のくせに何でこんなに強いんだ!?〉
〈死ぬのは庶民やナンバーズの仕事だろうが!!ルーカス殿下、助けて下さい!!!〉
だが、ルーカスは耳を貸さない。後はライルやシルヴィオの仕事だ。あいつらがある程度やったらまた……
「敵軍、前衛部隊を包囲していきます!!」
オペレーター席にたつ優衣が報告し、ゲイリーは額に手を当てる。思った通り、最初の砲撃で先制攻撃を仕掛けたまでは良かった。だが、考え無しに突っ込ませて先鋒隊に大きな被害を出し、今もマクスタインが後退の指示を出している。
「殿下、このままでは前衛部隊が全滅します。」
〈ああ……不本意だが、ルーカスの正面には私達が行く。敵両翼の動きは?〉
パネルを見ると、動きの上では前衛を包囲しているが、必要以上に陣形を伸ばす動きはない。前衛部隊を潰すことに集中している。どうやら、総司令官か最前線部隊の指揮官が今までのE.U.正規軍とは違うようだ。
「陣形を伸ばす様子は見られません。前衛の撃破に集中している模様です。」
となると…こちらが攻め込んでくる事を待っている。となる……こちらの犠牲をあまり出さないためにも…
「前衛部隊正面に雛を中心に砲撃部隊で攻撃…ルーカスの部隊は後方に下がらせる。シルヴィオ兄様とエル姉様の軍も雛と共に包囲陣へ砲撃を、両翼を崩して下さい。」
〈ああ…〉
すぐにローレンスのハドロンバズーカと艦上のサザーランドスナイパー、ザッテルバッフェを装備したグロースターのミサイルが前衛正面を撃つ。同時にシルヴィオとセラフィナの軍が両翼を砲撃する。だが、敵の対応が早く想定していたよりも前衛部隊は撃破されなかった。とはいえ、両翼の部隊は側面戦力が崩れ、陣営に崩れが生じた。
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