[37871] コードギアス 戦場のライルB2 Inside Story 『Episode−8 平常運転』 |
- Ryu - 2017年11月23日 (木) 18時52分
−神聖ブリタニア帝国エリア24 バルセロナ軍基地 −
軍基地の大会議室、そこではルーカス親衛隊「アイギパーンナイツ」による恒例の親睦会……という名の退廃に満ちた享楽の宴が行われていた。
男達は各地から取り寄せた酒や美食に舌鼓を打ち、そしてこの部隊がブリタニア本国のみならず、今まで転戦して来た各地から調達してきた女達を侍らせており、時には彼女達の肉体を隅々まで味わうべく愉しんでいる。
女達は皆露出の激しい衣装を着せられ、時に隊員達の性欲の捌け口にされるがままになっている……床の上で死んだように横たわる者、今も心身共に蹂躙されている者、彼らの機嫌を損ねず標的にされない事を願い怯える者……。
そこは男達にとっては楽園の様な光景であり、女達にとっては地獄の様な場所であった。
この宴の主催者である同部隊隊長のエイゼルは、今は休憩中という事かソファーの上で寛いでいた。足元には彼より年上と思わしき女性が涙を流して蹲っていた。そんな彼の元に、同部隊副隊長のギースが近づいて来た。傍らには怯え切った様子の少女を抱えながら。
「次の女共が楽しみですな隊長。まああの極上の総隊長は諦めるしかないでしょうが…」
「ああそうだな!それでも期待出来る連中ばかりだ!」
あの身体を味わえないのは正直惜しいが仕方あるまい。多分死ぬまでルーカスはあの女を手放す事は無いだろうし、仮に飽きて貰えたとしてもあまり興味は無い。自分からすれば奴からのお下がりを味わうなんてのは趣味じゃないからだ。
だが部下達に命じて次の戦場の女達の情報を集めた所、総隊長以外にも味わい甲斐のある奴が多い事がわかった。特に外人部隊はそれなりに上玉が揃っており、しかも部隊柄人種もバラバラで多様性があって面白い。
部下達が正規軍、外人部隊問わず容姿端麗な女を片っ端からピックアップしたのを厳選し、それを双方が「どちらが誰を取るか」という協議の結果、それぞれのリストが完成し、既に各隊には「手出し厳禁」等と銘打たれた女達の画像を配布している。
無論逃げられたり、自分達が手を出せない所に行ってしまったり、確保しても目立つ傷が残ってその美貌が薄れてしまったり、あるいは殺してしまったり……KMFに乗っての戦争である以上、結局運次第である事は本人達もわかっているのだが。
「本当に我が君様々ですな。あとはあの不肖の従妹共がこっちに靡けばもう言う事ありませんが」
「全くだな!何であの甘ったれの皇子を選んだのやら!?俺の方が満足させられるに決まっている!」
かなり酒が入っているのか、エイゼルはいつになく下卑た表情でニヤけだした。おそらく今コイツの脳内ではあの甘ちゃん皇子の女達が、自分に心身共に従うまでの過程と結果を思い描いているのだろう。筆頭はあのウィスティリアの令嬢だろうが。
「隊長、今更確認するまでも無いかとは思いますが…」
「わかっている!お前の従妹には手は出さん!だがあの女は絶対に譲らんぞ!」
それだけ言うと急に立ち上がり、足元の女を無理やり立たせ奥のベットへと連れ込んで行った。それをどこか冷ややかな目で眺めながら、ギースは内心独り言ちた。
(フン……相も変わらず上から目線……コイツの為にだいぶ譲歩しなければならないのが業腹だったな)
先の協議でも自分が目を付けた女は先に取られてしまった。隊長でありこの軍トップのルーカスと血縁関係のある奴を敵に回すのは流石に不味いとの判断から仕方なかったが…あまりいい気分では無い。
自分の中に燻ぶった不愉快さを消し去るべく、ひとまず今傍らの女で発散させようと決めてギースもその場で少女の胸を掴んだ。
「はぁ……」
一体何度目になる溜息だろうか、そして今ここにある書類は一体あと何枚あるのだろうか…数えるのも馬鹿らしく思えてしまう。
軍基地の片隅にある個人用の執務室。マクスタインはとにかく様々な手配に忙殺されていた。目元にはクマも薄っすら見える。
自分以外の幹部陣は皆揃ってお楽しみ中だ。一応の主君についても言わずもがな、帰って早々自室に引っ込んでしまった。幾つか…というにはあまりにも多すぎる仕事を自分に押し付けて。
これについてはもう諦めも付いている。下手な仕事すれば自分に責任及んでどうなる事やら。それに他の連中と違って大人しく仕事に励んでいれば、いつかシュナイゼル殿下あたりが自分を評価して引き抜いてくれるのではないか?そう微かな希望も持っている。
だがその前に生きられるのだろうか?はっきり言ってこの軍はどこと戦ってもほぼ負ける。勝てるとしたら、何の作戦も計画も無い寄せ集めの素人共の集団だけだろう。
ブリーフィング(という名のルーカスからの一方的な宣告)で我が軍が前衛を担うと聞いた時、正直耳を疑ったものだ。
この軍団が結成されてからというもの、戦いには何度か参加はしている。だがその内容と言えばせいぜい敗走する軍勢の掃討ぐらいであとは小さなテロリスト共への攻撃、そして自分達の為の「調達」だけだ。
パリを護る防衛軍がどれほどのものなのかはよくわからん。だが仮にもE.U.の中心国が陥落の危機に陥っているのだ。多分死に物狂いで来る事が予想される分、間違っても弱いなんて事は無いだろう。
この軍の連中が揃いも揃ってアレなのもそうだが、自分が「将軍閣下」と呼ばれるだけの力量が無い事は自分が一番よく知っている。実家がアレと関わりを持ってなければ、今も安全な所で職務に励めていたはずだったのに…。
実力勝負となった時この軍がどれだけ生き残れるのやら……だが自分がそれに巻き込まれて五体バラバラで死ぬ前に、書類の山に埋もれて過労で死ぬかもな……半ば冗談とも本気ともつかない事を考えだすマクスタインであった。
クルークハルトは独り、シミュレーターで直に激突するであろうE.U.のパリ防衛軍を相手に交戦していた。
周りには誰もいない。そもそも申し訳程度に置かれたこの機器を使っている人間は、本当にごく僅かでしかないからだ。
彼の乗るKMFが最後の1機を撃墜して勝利した。傍から見れば特に損害も無く文句無しとも言えるのだろうが…本人にしては不満しか無い。
(違う…あの連中はこんなものでは無い……弱すぎる)
そう、内部データが古すぎるのか元の設定が甘すぎるのか、まるで手ごたえが無かった。E.U.正規軍の連中ならこのデータ通りなのかもしれないが、外人部隊相手となると違和感しか無かった。
ウリエル騎士団時代も幾度か連中と対峙した事もある。当時の感覚を知る自分からすれば、正規軍の連中とは比べ物にならない手強さを誇る相手だ。勿論大した事のない連中もいるにはいたが。
そもそも今の自分の実力はどうなのだ?この軍に配備されてからも鍛錬は欠かさず行っているが、やはり一人だけで行うそれに限界を感じ始めている。シミュレーターは色々当てにならないし、模擬戦も行ってない。相手がいないのとそもそも行われるのを見た事も無い。
戦場に出ても一方的な吐き気の催す光景のみで、戦いらしい戦いも無かった。だから今回の先鋒が自分にとっての久々の戦いになるのだが、不安しかない。
味方は頼れない処かおそらく、いや確実に自分の様な非貴族階級出身者達を先頭に立てて、作戦も何もなく突っ込むだけだろう。向こうも今までの傾向を考えれば確実に外人部隊を先頭に、いや捨て駒にして戦うだろう。双方共に最初にぶつかるのは捨て駒か…。
この軍の連中の大半は金や女の事で頭の中を占め、自分達の相手がどんな連中なのか知ろうともしない。上も同じだ…先程「親衛隊隊長と副隊長が預かる女」等という女の画像集が送られてきた。仮に先に手を付けようものなら問答無用で銃殺とまで言っている。
「所属する先を選ぶことが出来なかったとは言え……ここまで底辺の部隊に放り込まれるか……」
本当にとんでもない軍団に入れられてしまった…こうなってしまった己が運の無さに笑うしかない。そう思いながら、彼の鍛錬は続いた。
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