[37842] コードギアス 追憶のエミリオ intermission 祈念 |
- JIN - 2017年11月18日 (土) 16時21分
サンクト・ペテルブルク市。
各所から鳴り響く高らかな鐘の音。
その一つである、聖イザーク大聖堂。
多くの人々が出入りし、その中で静かに祈りを捧げている。
ある者は現在東西で激しく戦い続けている親族や関係者たちの無事を祈り。
またある者は過去において失われた生命に対し祈りを捧げる。
その各々の神と共に。
そう。
この中には司祭も神父もいない。
いるのは聖堂の管理者と入れ替えを差配する担当者がいるだけ。
元々ブリタニアは当代の皇帝を対象とする個人崇拝国家であり、宗教的な機関は公的に存在しない。
そして旧帝国の崩壊と共に、それすらも消滅したわけで、その影響は特に北ユーラシアの旧ユーロ・ブリタニア地域に甚大な精神的空白をもたらし、あの「混沌の半年」の要因にもなっている。
すなわち政治的以上の精神的な空白に漬け込むかのように、無数の宗教的組織がこの地域に自然発生もしくは外部から潜入し、信者や布施の獲得などを巡り、流血の騒乱も引き起こす事となる。
しかし当時のユーロ・ブリタニアは、虚脱状態も手伝ってか、それに対し全くの無為無策であり、遂には大貴族会議をはじめとする全ての機関が消滅してしまう有様にまで。
そしてそうした退廃の無政府状態を打開すべく、インナー勢力や傭兵部隊を統率して外部から一気に強烈な粛清を仕掛け、一挙に秩序を回復させたのが、あのティベリウス・リチャード・ハイランド。
後のリングスや新生GCの主要メンバーの多くが揃ったのはこの時期だともされており、特に最大の宗教勢力の中核を壊滅させたのは、あの「悪逆皇帝暗殺未遂者」エミリオ・バーンスタインであるとも言われている。
これが世に言う「魔都戦争」。
これによってそれまでほとんど無名で影の存在であった、ティベリウスの存在と勢威が北ユーラシア全域に広がり始める事になっていったわけである。
ともあれ、現在の北ユーラシア全域の宗教組織は存在を許されておらず、人々はただ無言の内に「自分自身の神」に祈る事のみ。
大聖堂はひたすらそれらの人々の安息の場の役割の場を果たし続けている。
そして今日もまた祈りを捧げて入れ替わっていく人々の姿。
「今日はどんなお祈りをしたの。パトリシア?」
「はい。お母様。アレウス様や御姉様が御無事にお帰りになられるようにって」
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