[37835] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-14『狂戦士の心…後編』 |
- 健 - 2017年11月16日 (木) 21時19分
クリスタルは軍学校の時のライルの話をする。あの頃、ライルは貴族と庶民の双方がいる軍学校では浮いていた。何せ、皇族が入るほど位が高い訳ではないからだ。その中で、貴族達はライルのご機嫌取りをした。
寮で監督生を務めようと必死なライルを、ミスをしてもおだて…訓練でも手を抜いて………だが、そんなライルは逆に疑念を抱いていた。
教官達ですらそうなのだ。次第に息苦しさを感じていた。
「13くらいでそれだけのことを気付いたの?」
「勘が動物並みだからね……変な魂胆をそれとなく気付いていたのかもしれないわ。」
そんな時期に知り合った。三年生のあの学校でもうすぐ卒業するクリスタルは……
「あの頃の殿下……『ノネット様やコーネリア姉様みたいな強い騎士になる!』って、小さい男の子みたいに燃えていたの。」
とても純粋で、幼い子だった。そのくせ……皇族らしく振る舞おうとしている。
可愛い感じの男の子だから、声をかけた。それは事実だ……
「でもね…あの人の、本当はどこにでもいそうな普通の男の子の顔が私は一番好きなの。」
そう、何度かデートに誘い根負けさせてから……本気で口説くようになってから。しかし……
コーネリアとノネットに憧れていた……それは聞いたこともあった。ライルが今も引きずっているというあの事件も………
「ライル様、ジュリアって人の事件を今も引きずっているのよね?」
「ええ…多分、一生自分を許さないわ。」
一生……そこまで思い詰めるなんて。顔だけで好きになった自分が浅はかに見える。
「私、浅い女だった?」
だが、クリスタルはそう言わなかった。
「私だって、さっき言ったけどきっかけは『可愛い男の子だった』って印象なのよ?とやかく言う筋合いないわよ。」
「…………私…ライル様が理想とのギャップや周りのことで無理してるな、とは思ってたけど………そんなことまで。」
「幻滅した?」
クリスタルの質問に対して、優衣は首を横に振る。
「惚れ直した。あの人がずっと引きずっていても、私を愛人にするくらいの人にする!!」
「そのガッツ…ちょっとおかしいわね……で、具体的には?」
具体的に……それは…
「うん、オフのプールで紐みたいな際どい水着とかでセクシーアピールは基本ね。幸いスタイル、特に胸は私にアドバンテージがあるわ。」
優衣は商品になっていた頃は17歳に不釣り合いな鬱陶しいことこの上なかった豊満且つ見事なボールのような形の胸を強調する。
「後しつこくデートに誘って、手料理も振る舞わなきゃ。」
「地道ね…でも料理は一番の強敵がすぐそこにいるのよ?」
そうだった………彼女の料理は何度か食べたこともあるが、絶品だ。
「うう…絶対に負けない!!シャワールームやベッドで待ち伏せしたり、夜這いはかけてもライバルを嵌めるようなことはしないで勝つわ!!」
「………嵌めないというのには賛成ね……それじゃあ勝った事にならないし、気付けばあの人には間違いなく嫌われるわ。」
何言ってるのよ、私……この子の言う通りなのに、私は…!
「どうしたの?」
「なんでもないわ。」
翌日……ライルは許嫁のサラに見送られて出立することになった。
「それじゃあ、あまり無理はなさらないで。」
「ああ……次に戻ってきたら離宮で食事でも。たまには婚約者らしいことをしないと…」
「有紗の手料理を食べてみたいですね…」
「え?」
有紗が呆然とした。それはそうだ。何しろ、ライルの軍以外で貴族の令嬢からそんなリクエストが来るなど、夢にも思わないだろう。
「えぇと……頑張ります。」
飛行機に乗り込み、戻るライルは有紗にゆっくりと話しかけた。
「有紗…」
「はい?」
「………本当に今更だが、エリア11での…あの事務次官の後………すまなかった。私もどうかしていた。」
一生懸命考えたつもりだった。だが、結局こんな言葉しか出てこない。
「あ…あの………私の方も…その…………事務次官を殺したのは…私を助ける…ためだったし…」
有紗があの頃のことをまた思い出す。
「………ま、前の事件と似ていたから…酷い取り乱していたって……聞いて…それで…!」
「有紗…その………い、今までと同じように…」
本当は言いたい……一年間秘めていた気持ちを……だが…!まだ、それだけは!
「改めて…今まで通り、侍女として使えてくれるか?」
「……はい!」
脇で有紗が頷くと、ライルの前で両膝をつき、手を頬に添えた。
「この前のと違って…ちゃんと、してください。」
有紗の顔が赤く……いつも以上に、そう…綺麗だった。気のせいか、自分の顔も熱い。
「分かった…」
有紗の両肩に手を添えて、唇を重ねる。二人共、舌を絡めてしばらくは離れようとせずに…あの事件直後のとは違う……『フォーリン・ナイツ』のクーデター後のような甘い濃厚なキスを何度か繰り返した。
それを外ではレイが聞いていた。
「何とか仲直り出来たみたいね。」
「物好きな…あのまま気まずい状態ならスレイダー卿にとって好都合だったでしょう?」
一緒に外にいた良二にレイが人差し指を向ける。
「貴方、そんな状況で試合に勝って嬉しい?恋も同じよ。」
「スレイダー卿……自分で白状しているぞ。まあ、もう大体の人間は気付いているだろうが。」
「え?」
長野に言われ、レイは気付いてしまった。ライルのことが好きだと、公言してしまった。
「気付いていないと思ったか?殿下も気付いているぞ。」
ライルにも!?い、いや確かに二度もキスを…しかも濃厚なのをしたのだ。
「え?…あ、あぁ……あぅぅ。」
身体の力が抜け、レイはその場にへたり込んでしまった。
「へたり込んだ。」
良二に言われるまでもなく分かっている。だが、すぐに今ドアの向こうで距離が縮んでいる二人がいる。有紗も今……そう考えると、邪魔をしたくなってきた。
「ラ、ライル様!」
「どうした?」
「あ、あの………長野隊長がお話があるそうです!!」
長野に突然話を振り、長野も一瞬だが動揺した。
「失礼します…殿下、E.U.にいるクレヴィング将軍達との連絡はよろしいので?」
「ああ……先程シュナイゼル兄様も交えて済ませた。セラ達も現地時間で翌日には戻るそうだ。」
ライルが一泊おき、表情を引き締める。
「正念場だ……」
その表情に騎士達が背筋を伸ばす。
「イエス・ユア・ハイネス!」
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