[37830] コードギアス 戦場のライルB2 Inside Story 『Episode−5 最底辺の軍隊』 |
- Ryu - 2017年11月16日 (木) 12時29分
−E.U.フランス州 オルレアン市『ロンスヴォー特別機甲連隊』本部−
顔合わせを終えて、さっさと酒飲みに行こうと思った正規軍の若者だが、途中である外人部隊の男を見かけた…見覚えのある奴だ。
「何だアイツまだ生きていたのかよ。しぶとすぎんだろ。しかも相変わらず女侍らせやがって」
いつも引き連れている副官はいなかったが、今回は透き通る様な白肌を持つ女と背は小さい癖に胸は割と大きい女を引き連れている。両名ともタイプの違う可愛らしさを持つ女であり、何人かの正規軍のみならず外人部隊も彼女らに不躾な視線を向けている。
「噂には聞いていたが、ほんと良い趣味してるよアイツ。一々女連れて見栄張ってんのは元とは言え貴族様ならではってか?」
「じゃあ賭けてみねえか?俺は1カ月以内に奴がくたばるのにあのちっさい方の女、外れたら10000ユーロで」
「おいおい、既に使用済みに手ぇ出すのかよ?あとちっさいって…大きいの間違いじゃないのか?」
「別にいいじゃねぇか、小さいのも事実だし?もう片方の白肌の女もいいけど俺の趣味はあっちだ。まあ見てなって、元の御主人様の事を忘れさせるぐらいにじっくり再教育してやるからよ」
彼らは傍から見れば只管気分の悪くなる様な会話をヘラヘラしながら行っている……両名とも親のコネでこの連隊の一部隊の隊長を任され、任務が終えれば国元で素晴らしい日々が待っている。
軍に入った時は何でこんな事しなければならないのだと不満しか無かったが、今では満足している。何せ親の権威をチラつかせれば大抵の事はどうにかなる。
少しKMFに乗っていれば社交界で誉めそやされるし、部隊壊滅とかで所属先未定の外人部隊のいい女見つけて、自分のモノにするのもそう難しくない。今回もいいのを見つける事が出来た。
ただその女が以前会った事のあるあのドイツのいけ好かない野郎の所有物、というのが気に入らないがまあ少しの辛抱だ。ゴキブリみたいに生き延びてきた奴だがそろそろ終わりだろう。そうなれば俺があの女を引き取ってやろう。
入っても1年以内には死ぬ負け犬共の部隊にいるよりか俺の物になった方が、あの女も幸せに決まっている。その時はじっくり可愛がってやる。それに外れてもたかが10000ユーロ、親父に頼めばすぐ用意出来る。
「そう言えばお前、前はアイツの副官だという女に目付けて無かったか?もう女の趣味変えたのかよ早いなぁ」
「ああ、アレはもういいや。どうも既に奴のガキ生んだとかって噂だしな。萎えるんだよ子持ちの女ってのは」
「いや流石に与太話だろソレ…まあ既にデキてんのかもしれないけど」
「だろ?だから今はあっちだ。ああ考えたら発散したくなって来た!おい、今から外行こうぜ!」
「いやもう遅い……いや2,3軒ぐらいはまだやってるかもな。よし行こう!」
ひたすら下衆な欲望と妄想を抱きながら、その男は目を付けた女が見えなくなるまでその全身を嬲る様に眺めて続けながら、基地の外に出るべく歩いて行った……。
「やれやれ、我らが総隊長殿にも困った物だ。全部あの連中に任せておけばいいものを」
「そうそう、今回も奴らに働いてもらってこっちはのんびりしてましょうよ!」
「その通り!俺達の苦労は奴らの物!奴らの手柄は俺達の物!簡単な話なのにあの大佐何考えているんだか?」
基地内の執務室の一室、この部隊の幕僚達が酒を片手に飲み交わしていた。テーブルの上にはワインやビール、キャビアにフォアグラといったE.U.の嗜好品が所狭しと並べられている。
折角総隊長も誘ったのにどうしてか断られ、さっさと自室に引っ込んでしまった。あわよくば酔わせてそっちの味見もしたいと思ったのだがアテが外れてしまった様だ。
彼らにとって総隊長たるピエルス大佐も、素晴らしいモノを持つ女。親の立場も立場なので一応は敬う。だが可能であれば……その程度の存在だ。
「それよりこれ見て下さいよ。どこかの闇サイトで拾ったんですがね、かの第八皇子様の女達の画像」
幕僚の一人が懐から携帯端末を取り出し見せてきたのは『偽善皇子の女達』と銘打った画像集(要は盗撮)である。彼の騎士や婚約者候補とも言われる女性、更には彼が一番可愛がっていると言われるメイドや闇オークションで買ったと言われる姉妹等……。
ウチの総隊長やその部下の一人に引けを取らない、揃いも揃ってスタイル抜群な美少女美女揃いに、思わず感嘆の声が漏れた。
「ほう、これはこれは……噂には聞いていたがレベルが高いな。しかもイレブンばかりじゃないか!」
「でしょ?だからイレブンの女にカミカゼさせたら、案外効果あるかもしれませんよ?」
「ああ、カミカゼで突っ込んで来られても止める事を躊躇し、そして奴の機体ごとドカン!いい案かもな!」
「丁度オランダの所に『四大騎士団』とかと戦ったっていうイレブンらしき女がいるっぽいですから、やらせてみましょうよ!」
彼らは嬉々として唾棄すべき提案を行っている……もしこの場に彼らの総隊長がいれば問答無用で殴っていたであろう。
「ああ、だがそうするならまず『確認』してやらないとな。まだ男を知らないままであれば是非とも女にしてやりたいものだ」
「さあ?望み薄だと思いますよ?何せ自分の身体も惜しくない様な人種ですからねイレブンは。カミカゼと違って死ぬわけでは無い分多分使ってるでしょうよ。自分としては奴の上司とかという少佐が怪しいと思いますよ」
「そうかもな?まあ機会があれば呼び寄せて確認してみようか。場合によっては飼ってやらなくもないが」
「その時は是非、自分もお願いします!」
「おいズルいぞお前!中佐!俺もお願いします!」
「ははっ、まあいいだろう!そういうのもたまにはいいさ」
その後も延々と彼らの酒盛りは続き、夜が明けるまで只管飲み続けた。流石に朝になる頃には二日酔いに陥り気分が悪くなってしまい、翌日の軍務は「体調不良」という事で休み、それを聞いた外人部隊の連中が呆れ果てたのは言うまでもない。
「ケッ!いつ見ても不快な連中だぜ。ああホントさっさとくたばってくれよ」
「ああ、何で俺達あんなクズ共の為に戦わなきゃならねぇのかねぇ。いい加減限界」
「ホントだよ。まあバルディーニの指揮ならまあ従ってやらなくも無いが、麗しの我らが総隊長殿に従ってやる義理はねぇな」
「いや流石にそれはいかんだろ。一応は隊長なんだからよ、一応は」
方々でバカ騒ぎをやらかし、中には基地外の娼館へと繰り出した連中を心底軽蔑する様な目で見やって、今回召集された外人部隊の男達が吐き捨てた。もし許されるのなら即座にあの連中を片っ端からヘッドショットを決めてやりたい……そうとまで思っている。
彼等からすれば外人部隊の為に出来る範囲の事で色々尽力してくれたバルディーニの事は認めているが、突然少佐から大佐になってこの連隊のトップになり、しかもあのピエルス将軍の娘だというクラリスの事など信じるに値しない。
第八皇子と戦ったとかと言っているがどうせ部下達の事を自分の物にしているだけだろうし、仮に本当に戦うといってもそれは未来の話、それもKMFではなくどうせベッドの上なだけだ。確かにあの身体なら大抵の男を撃墜できるだろう。
「なあ、一応聞くが、どうなると思う?」
「あ?どうなるって、何が?」
「敵さんだよ。俺としては先鋒に立つのはあの第五皇子だと思うね。俺のグロースターを賭けたっていい」
「何で……ああそういう事、確かに俺としてもあの総隊長見てそういう邪念は抱かなかった…とは言えないね」
「右に同じ、あれ見て雑念抱かねぇ奴がいたら凄いよ。尊敬してやってもいい」
「どうせならあの総隊長殿に先陣切って突っ込んで貰おうぜ。そしたら簡単にあの第五皇子が総隊長目掛けて突っ込んで来るだろうさ。もし本当に強いってんならそのまま始末してくれるだろうし?」
「お前……有り得ない願望口にするのって悲しくないか?ある訳無いだろそんな展開。親父が親父なら娘も娘さ…それっぽい事言っても上っ面だけ、肝心な所は人任せでいい所だけ自分の物、どうせその時になっても基地内に閉じこもったままだろうよ」
そうどうせ今までと同じだ……親父にねだったのか専用機も用意して貰った様だがどうせ宝の持ち腐れ、数か月後にはブリタニアのKMFとして運用されている事だろう。勿論パイロットはブリタニア人の誰かだろうが。
どうもお高く止まった女らしく、前々から男に言い寄られては親の権威をチラつかせて黙らせたとか……要は「お前ら何か相手にしない」という事だ。そんな女が何故外人部隊の為に命を懸ける?有り得ないに決まっている。どうせ捨て駒として扱うだけだ。
「今も連中のバカ笑いが薄っすら聞こえてきそうだぜ。幻聴かもな……おいさっさと戻ろう。明日に備えてもう寝ようぜ?」
「ああ、せめて夢の中ぐらいは良い事あって欲しいもんだ……」
彼方に見える正規軍の連中に対し手で銃を撃つ真似をしながら、男達は自分達の持ち場へと戻って行った。
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