[37828] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-14『狂戦士の心…前編』 |
- 健 - 2017年11月15日 (水) 12時25分
レイはライルの様子を見に来ていた。先程、有紗は休んでいるという話を聞いて彼がいる部屋の前に立った。だが、どうも顔が熱く、鼓動も早い。これではまるで……
ち、違う!そうじゃない!そう……お仕えする身として心配しているだけ!
深呼吸をして、レイはノックをする。
「どうぞ。」
「し、失礼します…!」
ゆっくりと部屋に入ると、ライルは本を読んでいた。
「お、お休みでは…なかったのですか?」
「ああ、眠れなくてね。君も座ると良い、お茶くらい入れるよ。」
「いえ…私がやります。有紗ほど上手には出来ませんけど…!」
レイは緊張しながら茶葉を入れ、沸かしたお湯をポットに入れる。
「ミルクとレモン…どちらにします?」
「いや、何も入れなくて良い。」
カップに紅茶を注ぎ、ライルは一口飲む。
「ど、どうでしょう?」
「……可も無く不可も無く、か。」
つまり…普通ということだ。有紗とここまで差があるとは………
「あ、あの……有紗との事…大丈夫、ですか?」
エリア11以来、有紗との距離が狂っているのは殆どの人間が気付いていた。優衣はある種のチャンスだと言っており、レイもそれに同意していた。決まっている……だって…
「そ、その………あ、有紗との事…まだ駄目だったら…!」
レイはもう意を決した。立ち上がってライルの前で膝をついた。
「レイ…?」
何も言わずにライルの唇に自分の唇を重ねた。ライルが硬直する……だが、そんなものお構いなしに以前よりも激しく、ライルの舌を絡めた。
久しぶり…この感触……幸せ………
満たされ…切なく、愛おしい………
もっと…もっと…欲しい………
このまま…全てを捧げたい。という欲望が出たが、それでは卑怯だ……そんな理性が働いて、レイは名残惜しくもライルから唇を離した。
「……そ、その…あ…有紗の…か、代わりのつもりじゃあないんですけど…わ、私では駄目…ですか?」
レイの表情にライルは思わず生唾を飲みそうになった。恥じらいで赤くなった表情が逆に妖艶に映る。そのまま両肩に手をかけようとしたが……
「き、気持ち…だけでいい……」
「…好きなんでしょう、有紗のこと?」
ライルは何も言わずに頷いた。
「あの子だって…ライル様がルーカス殿下みたいな事を好き好んでやる人じゃないと分かっているんですから……泣きたい時は泣いても良いはずです?」
何も答えない。
「貴方の立場は分かっているつもりです!でも、そうしてしこりを引きずったままの指揮官に兵士はついてきません!!何時までも引きずらないで!!」
レイの視線は曇りがなかった。そして……
「……そういう風に叱られたのは随分と久しぶりだな。」
叱られたことなど……そう、あの軍学校卒業後以来だ。フェリクスやゲイリーから窘めることはあっても、こういう説教は本当に久しぶりだった。
「…ちゃんと、有紗と話すべきだな。」
E.U.の動向を監視するライル軍…今のところは小競り合いもなく、首都圏の防衛を万全にするのが目的のようだ。
「……市民の避難の様子は?」
「は、情報部によりますと市民の避難は行われていないとのことです!」
ゲイリーはため息をついた。結果的に市民の避難と迎撃態勢を整える時間を与えたというのに……今頃、市民達は普段通りの生活をしているのだろう。そして、資産家や政治家、軍上層の家族だけは逃げている頃だ。
「国とは、ここまで腐敗する物なのか……」
自由と平等のために彼らの祖先は革命を起こし、王侯貴族を殺した。だが、今度はその王侯貴族の末裔達にせっかく勝ち取った自由と平等がまた奪われようとしている………だが、誰もそれに関心を持たない。最前線にいるのも果たして、何人が本気で国を守ろうとしているのか……それとも、自分だけ助かると思っているのか…敵であっても、その腐敗を嘆かずにいられなかった。
「なんで行かなかったの?」
優衣の質問にクリスタルは「何が?」と聞き返す。
「有紗とレイに着いて行かなかったこと!」
「こっちはもうすぐパリへ攻め込むのよ?なら、戦力的に最新鋭の期待を持つ私を残すのは妥当…」
「そうじゃなくて、あの二人に加えて婚約者までいるのよ!?ピンチじゃない!!」
それか…確かに、ピンチではある。
「それくらいで諦めるの?私はいやよ。」
「私もいやよ!!」
思った通りだ……まだ付き合いは浅いが、彼女もなかなかに一途というか、諦めが悪い。
「私もね……ねえ、貴方は殿下がどんな人に見える?」
「え?……見た感じなら、絵本の王子様みたいで強くて優しい………あと、ちょっと女の子に初心な可愛いところがある……でも…」
「でも?」
「うーん……なんて言うか、いつも疲れているような感じがする。」
そう……普段からそうなのだ。それをまさか付き合いの短い少女にまで見透かされているとは……
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