[37781] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-13『混沌とする世界…前編』 |
- 健 - 2017年11月05日 (日) 13時43分
復活して数日後……ゼロは部下達の処刑を餌に罠を張ったギルフォードを退け、見事に部下達を救出してのけた。この奇跡によってこれまで半信半疑であったイレヴン達は再び活力を取り戻し、反抗勢力が息を吹き返しつつあった。
会議室ではライルが選んだ面々がエリア11の同行に目を通していた。
「ゼロが出てきた途端にみんな元気になっちゃって。」
「正義を掲げるクズ共めが……!」
「ふん、ゼロや俺がいなければ戦う勇気すらないゴミ虫共さ。」
雛が皮肉を言い、幸也は反抗勢力…否、正義を名乗る者への憎しみを募らせる。そして、秀作がイレヴン達を罵倒した。
「カラレスの政策は弾圧に重ねる弾圧だった。跳ね返ったバネは大きかったようですね。」
ゲイリーの言う通り、カラレスはとにかく弾圧の一本槍。反抗に無関係な者も大勢処刑し、本国でも問題視されるほどであった。そこへゼロという救世主が復活したとあっては、こうなることは必然だ。
「でも…このゼロって、あのゼロなんでしょうか?」
有紗の問いにライルも「さあ。」としか答えられなかった。実際に、処刑の発表があっただけでその素性も発表されなかった。捕らえたというスザクも皇帝から公表を厳禁され、シュナイゼルも知らないという。
「スザク…いえ、枢木卿が捕らえたゼロが影武者だった、という可能性は?」
良二の質問に長野が答える。
「その可能性も否定出来ない……だが。」
「誰も顔を知らないから、影武者という説には説得力がない。極端な話、仮面さえあれば誰でもゼロになれるわ。」
「本当に極端ね…そして、便利な物だわ。正体不明の仮面の英雄とは。」
ノエルの核心を突いた発言にレイもお手上げのポーズを取り、ライルも唸るしかない。
「……ゼロの動向に注意するのは当然として、今はこちらだ。」
ゼロ復活から間もなく、E.U.との戦争ではドイツとイタリアの連合軍を相手に上陸作戦を試みていたシュナイゼルの軍がスザクの協力を得て、上陸に成功。パリ攻略への王手をかけつつあった。
一方、エリア24では新たな動向があった。ベンタスゲットーを拠点としていた反抗勢力『マドリードの星』が政庁に急襲をかけるが壊滅し、唯一生き残った赤い新型KMFは反ブリタニア活動を中心に行うテロリスト派遣ネットワーク『ピースマーク』のウィザードと名乗る人物のKMFアグラヴェインにより救出された。
「あの後、更にマリーベル総督は虐殺を繰り返しております。本国では近々、その監督のために『ラウンズ』を派遣するとの話も出ております。」
フェリクスが渡した資料に目を通すと、マリーベルの凶行の数々が記載されていた。テロリストへの徹底した殲滅、降伏などを一切認めないからバックの確認もしようがない、更には反抗の火種があるゲットーその物を焼き払ったという。もはやツーフォーはおろかブリタニア人からも彼女は恐れ、忌み嫌われている。
そして、尚も質が悪いことにゼロ復活を良い機会だとばかりにブリタニア正規軍による占領地域、或いは侵攻中の地域での略奪が更に激しさを増している。ライルにとってはテロリストなどよりもこちらの方が本来の敵よりも厄介な敵であった。
シルヴィオはミルカを抱き寄せながら、その資料に目を通していた。
「正規軍の暴走は聞いていましたけど、ここまで酷くなるなんて。」
「ああ、ゼロという英雄の復活によってエリア11だけでなく、他のエリアの反抗も勢いを取り戻しつつある。この上ない言い訳になるだろう。」
ミルカがため息をついた。
「シルヴィオ様の仰る通り、大きくなりすぎたんですね…ブリタニアは。」
「ああ……中華連邦との政略結婚で戦力を補うことが出来ても、大宦官に不満を持つ武官達という爆弾も抱えることになる…今のままならば。」
エルシリアはクレアが作ってくれた軽食の茶碗蒸しを一口食べ、資料に目を通す。
「本国ではシュナイゼル兄様が中華連邦との婚姻を急がせているそうね。ゼロの復活で中華連邦の反対派が勢いを付けるのを防ぐ意図もあるのでしょう。」
聞いていたクレアが緑茶をすすり、一息ついた。
「ま、それが妥当な線でしょう。フランスの方が秒読みに入っている以上、そこも急がないと。」
ウィンスレットもおにぎりを一口かじり、クレアの意見を肯定する。
「確かに、既に半分近くの領土を失ったE.U.ならば『四大騎士団』を失った『ユーロ・ブリタニア』でも牽制は可能でしょう。」
「………でも、やっぱり私はゼロが気になります。」
セラフィナの懸念もエルシリアは笑い飛ばさない。本国では未だにゼロを贋者と断じる者もいるが、エルシリア達はそうは思わない。既に報告で見たカラレス殺害の手段と『黒の騎士団』救出の動向、加えて中華連邦総領事館との繋がり……少なくとも、以前のゼロと比べても遜色ない技量だ。
「セラの言う通りね、侮ればまた痛い目を見るわ。」
「おい、エイゼル。俺達もやるぞ。」
「おお、やっとやらせてくれるのですか。」
「ああ、本国の奴らもゼロに呼応したとすれば納得するだろうよ。しかも、今邪魔なライルもシルヴィオも動けないし兄上もフランスへの王手を最優先だ。」
エイゼルは「なるほど。」と頷き、早速機体の調整にかかる。ルーカス軍はテロリストの鎮圧に赴いた。否……そろそろ新しい物を調達するために………
「この世は我々貴族で動いている。我々はその最優秀ですからね。」
「ああ、俺様に刃向かおうものなら殺すだけさ。」
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