[37771] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-12『復活の魔人』 |
- 健 - 2017年11月03日 (金) 20時07分
秀作と雛が派遣されている間、ライル軍は前線司令部とした地域の制圧と敗残兵による略奪の対処に追われていた。
「呆れた物だな。自分達が一番楽をしていたくせに、今頃になって立派に戦っていた気になっているとは。」
ゲイリーが捕虜となったE.U.兵士の言い分に呆れ果てており、優衣も「確かに。」と頷く。素人の優衣や涼子にまでE.U.の対応は酷評され、ライルも幻滅する気すら失せていた。そして、救助された市民に感謝された。立場上の味方に攻撃され、敵に感謝するとは……軍とは腐敗すればあそこまで成り果てる物なのか?だが…
「ブリタニアだって似たようなものだろう?各地で正規軍がテロリスト鎮圧を言い訳に略奪を行っている。私はそちらだって何とかしたい。」
ライルの主張には流石に幕僚達も頷くが、長野が意見をする。
「外国人の私から言わせていただきますが、ブリタニアは巨大になりすぎ、E.U.は300年に及ぶ平和ボケによる腐敗ですね。」
「貴様、我がブリタニアが腐敗しているだと!?」
「テロ鎮圧を言い訳にした略奪は違うのですか?」
幕僚の一人が食いつくが、長野の冷たい問いに反論出来なかった。ライルもそれに反論する明確な言葉を持っていない。
「正論……でも日本は日本で、『厳島の奇跡』等で『カミカゼ』と『奇跡』をはき違えたり、誇りや魂で全部解決すると思ってるバカな連中が溢れかえり、都合の良い時だけハーフを受け入れるくらい腐敗しているわ。」
レイの言葉に、長野もうつむき、認める。
「ああ、全く嘆かわしい。」
その通りだ……ブリタニアも、E.U.も。中華連邦も、日本も腐りきっている。一体、どうなっているのだ?この世界は………
有紗は額に手を当てるライルを見つめていた。あの後、話す回数が減ってしまったが、ライルのことは見ていた。あの虐殺に心を痛め、殺された男の子を埋葬したのも知っている。敗残兵に強い怒りを抱いたのも見た。
何も変わってない……ライル様は…酷い物ばかり見て疲れているのに……無理ばかり。
それを拒絶したい自分はなんて馬鹿なんだ………考えれば分かることだった。聞いていたあの事件と自分の事件が重なったからあそこまで取り乱していたのに……
秀作と雛が帰還した後、ライル軍はフランス首都パリへ向けての更なる進軍の準備を進めていた。そして、ライルは必要とあらばあそこの総督になることも考えていた。フランスはエリア24…スペインの隣国、統治と称した虐殺を繰り返すマリーベルを牽制しなければならない。
そのためにも、フランス攻略を推し進めなければならない。そう考えていたライルの目の前で、突然モニターの画像がぶれた。数秒後に画像が戻った時、ライルは我が目を疑った。
〈私はゼロ。〉
「な!?」
「嘘!?」
紅茶を入れた有紗が思わずポットを落としてしまうが、誰もそれに目をやらず、モニターを見ていた。
〈日本人よ、私は帰ってきた!〉
シルヴィオはモニターに釘付けになった。ゼロがまた現れた。だが、どういうことだ?
「木宮、ゼロは処刑されたはずだったな?」
「ええ、陛下がそう公表したわ。」
公表されたはずなのに、何故?
〈聞け、ブリタニアよ!刮目せよ、力を持つ全ての者達よ!〉
池田達もゼロ復活を目の当たりにしていた。
ゼロ、生きていたのか?
池田は以前と若干異なる仮面を睨み付け、その演説を聴く。
〈私は悲しい。戦争と差別……振りかざされる、強者の悪。〉
浅海は死んだと思われたリーダーの復活に見入った。
「ど、どうして……死んだはずなのに?」
〈間違ったまま垂れ流される、悲劇と喜劇。世界は何一つ変わっていない……〉
ドリーセンもその復活に注目していた。
何一つ変わっていない……確かに、あれだけの事件が起きてもブリタニアも、E.U.も、世界も、何も変わっていない。
流石に脳天気なE.U.の正規軍もゼロの復活には注目し、クラリスはゼロの演説に同調出来る部分があった。
「ゼロ…本物なの?」
〈だから、私は復活しなければならなかった。強き者が弱き者を虐げ続ける限り、私は抗い続ける。〉
ドイツ州軍の外人部隊も演説に注目していた。ゼラートはその演説に聴き入りながらも、ゼロの真意を測っていた。
処刑されたのが偽者?だが、どうやってそう判断する?
〈まずは、愚かなるカラレス総督に立った今、天誅を下した!〉
カラレス…エリア11の総督に就任した残虐さで有名な貴族を殺した、ということはやはりエリア11からの。
「ゼロの名を騙る者?それとも……後継者?」
エルシリアの分析にクレアは何も言わず、エルシリアもそれに目を奪われている。
「発信元は!?」
「待ってください!」
ライルの要請を受け、涼子がエリア11に確認を取る。数分後……
「分かりました!発信元はエリア11、トウキョウ租界…え、嘘!?」
「どうした、はっきりしろ!?」
ゲイリーに急かされた涼子が言葉に詰まりながら、答える。
「トウキョウ租界…なんですが、中華連邦の……総領事館です!」
「ええ!?お姉ちゃん、それ間違いなんじゃないの!?」
「本当よ!政庁から聞いたんだから!」
中華連邦の総領事館から?どうやって……以前と違い、中華連邦は友好国の流れを取っている。そんな状況で、どうやって…
〈私は戦う!間違った力を行使する全ての者達と!〉
ゼロの宣言をルーカスは自室に備え付けられたモニターでフィリアと本国の庶民をベッドで侍らせながら見ていた。
「間違った力だと?はん、俺様の力は全てにおいて正しいのさ。」
「ええ、ごもっともです。」
フィリアがすり寄り、「もっと。」と甘えてくる。ルーカスは「ああ。」と答え、モニターを切った。
〈故に、私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!〉
秀作はゼロを睨み付ける。あの時、枢木スザクに横取りされた獲物がまた蘇ってきた。しかも、日本建国を掲げて。
「今度こそ、俺の手で殺してやる…」
〈この瞬間よりこの部屋が合衆国日本の最初の領土となる!〉
たった一部屋の国家……ばかばかしいにも程がある。だが、それを瞬く間に巨大にしてしまうのがゼロだ。
「こりゃまた…嵐が来るぞ。」
海棠は煙草に火を付け、これから来るうねりを、嵐を予感した。
〈人種も主義も宗教も問わない!国民たる証はただ一つ!正義を行うことだ!〉
藺喂は大宦官の一人、エリア11を訪れている高亥の意図が分からなかった。奴も本土にいる大宦官共と同じ、寄生虫。ブリタニアに真っ向から戦いを挑むはずがない。
「何を狙っている…ゼロ、高亥。」
「ふざけるな!正義だと?正義をするのが国民だと!?」
正義…それを言い訳に己の欲を満たすクズ共のために父は殺され、母と姉は身体を弄ばれ殺された。
「正義を名乗るクズ共の親玉だ…ゼロは!!絶対に俺の手で殺してやる!!」
そうだ!奴こそ正義の権化!この世にあってはならないクズの象徴だ!!
「正義、か…」
正義…また依然と同じく正義を掲げるが、ライルはゼロの掲げる正義を疑っていた。
何を持って合衆国日本の正義とするか、ゼロはそれを明言していない。何故……
「正義は…只の看板か?フェリクス……」
「ええ、以前の合衆国日本でも弱者を虐げない矜恃を持つ正義の国家と主張していました。イレヴン達の心を引き寄せる方便でしょうね。」
「イレヴン達は間違いなく、これに引き寄せられる。ブリタニアに大打撃を与えたゼロですからね。」
そう、ゲイリーが言う通り問題はそこだ。この後、ゼロが何かしらの奇跡を起こせば、エリア11は再び戦地となる。元々カラレスの統治に対する恐怖で抑えられていた火がゼロと正義、二つの油で一気に燃え上がる。
「ゼロ……!」
ライルの勘が告げていた。この後、世界は大きく動く……ゼロがその中心となっていくと。
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