[37763] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-11『帰還』 |
- 健 - 2017年10月31日 (火) 11時10分
戦いが一区切りしたところで、ライルからの帰還命令が伝わった。エルシリアとシルヴィオもそれを了承し、後は本国と『ユーロ・ブリタニア』に任せても問題は無いと判断した。
「戻るのね?」
セラフィナの寂しそうな問いに荷物をまとめた秀作は「ああ。」とだけ答える。すると、秀作はある物を思い出した。
「少し待ってろ。」
十分もせずに戻った秀作は小さな箱を二つ出した。
「それ…」
「中華連邦に行った時に土産として買ったアクセサリだ。ダウンタウンの安物だが……開けてみろ。」
秀作が選んだのは翡翠を蓮の花で包んだ中国風デザインのブローチと白いバラの髪飾りだ。クリスタルの意見も聞き、中華連邦の物でも特に悪目立ちしない物を選んだつもりだ。
「着けてみて良い?」
「……ああ。」
着けてみると、心なしか普段より映えていた。秀作は自分でも分からず、数秒固まっていた。
「………似合っている。」
「そう?…よかった。」
エルシリアはため息をついた。完全に恋人同士の会話だ。全く、これで他の貴族達に知られれば二人共どうなるか分かった物ではない。セラフィナはともかく、秀作など間違いなく殺されるだろう。
「今のままがあの二人にとっては一番安全だ……だが。」
皇女としては今のままでいて欲しい。だが、姉としては幸せになって欲しい気持ちもあった。この際、秀作がどこかの貴族の養子にでもなって後継者になればイレヴンというマイナスの要素が入っても問題にはならないというのに。
雛は廊下でウェルナーと電話で話していた。
〈そうですか、シルヴィオ兄様の元から今日お戻りに…〉
「そ、悪いわね。現地土産とかは無理そう。」
受話器越しにウェルナーが笑った。
〈別に買って欲しいなんて言ってませんよ。兄上や貴女の無事が大事ですから。〉
「……それさ、もうちょっといい女に言ってあげたら?」
〈僕は貴女も素敵な女性だと思いますが?〉
純粋な賛辞に雛は一瞬固まった。
「あんたね…離宮の外に出たことがないからんなこと言えるのよ。外出れば、あんたの姉様方くらいの美人なんざたくさんいるから……じゃ、お土産買えるようなら持って帰るからね。」
電話を切った雛は深呼吸をした。どうも、あの皇子は調子が狂う。何故、自分のような性格が悪く、火傷をした女にあんな賛辞を送る?おっとりとしていながらも芯が強い有紗や、明るい優衣ならそう言うのも分かる。
「早く外でいろんな人と会って貰わないと困るわ。」
本人もある程度自覚しているあの世間知らずを早く治してやらなければ……だが、彼に褒められて悪い気がしなかったのもまた事実だ。
電話を切られたウェルナーはキョトンとした。彼女は何が言いたいのだろう?
「僕にあそこまできつく言って、歩行訓練に付き合ってくれているんだから、充分良い人なのに。」
外に行けば姉達に引けを取らない美人がいるとはいっていたが、ウェルナーはそういう意味で言ったのではない。
「もしかして……火傷と関係してる?」
彼女はあの火傷を度々持ち出し、自分を卑下している。それが関係しているのだろうか?
「電話は終わったようだな。」
シルヴィオは雛に声をかけた。
「盗み聞き?」
「聞くつもりはなかった。ウェルナーから何か褒められたか?」
雛は一瞬だけ言葉に詰まり、「いい女って褒められた。」と答えた。
「……それは、お前を認めているということだろう?」
が、雛は「ハン。」と笑い飛ばす。そして、右半分の顔を見せる。
「これのどこが良い女なの?顔と背中にこんな火傷して、生きるために盗み、殺し何でもやった女のどこが……あんたら皇族には理解出来ない人生だったのよ?」
シルヴィオはその火傷を見たのは初めてだった。聞いてはいたが、確かに酷い。無事な半分が整った容姿であるから尚際立つ。
「………ウェルナーはお前のそういった部分も込みで認めたのではないか?」
「それは、あの子自身も自覚してる箱入りだからよ。じゃ、万一に備えて機体の整備もしたいから。」
礼だけ取って雛は去って行った。その背中を見送ったシルヴィオは雛の否定に一つだけ反論したいことがあった。
「箱入りだからこそ、ではないか?」
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