[37727] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-10『侍皇子と妄執の女…中編1』 |
- 健 - 2017年10月13日 (金) 00時48分
シルヴィオは座禅を組んでいた……鍛錬の際には必ず行っている、東洋の瞑想だ。それを済ませ、シルヴィオは立ち上がる。
「ブリーフィングだ。」
「待ってました。」
木宮が答え、招集をかけに行く。
一時間後には主立った将官と騎士、そしてライルの援軍が集まった。
「ベラルーシ、ポーランド方面の残存軍が再集結していることは聞いているだろう……情報部からそれらが一大反攻作戦を企て、ようやく実行の目処が立った。」
『方舟の船団』の事件と少数派のクーデター、『白ロシア戦線』の遅れをここで取り返すつもりなのは明白だ。
「敵も流石にこの作戦には真摯で取り組むだろう……こちらの西部戦線は『ユーロ・ブリタニア』の戦力低下で維持がやっと。攻め返す好機でもある。」
E.U.はベラルーシの残存軍、ドイツやポーランドの正規軍などが東部戦線を巻き返す作戦を展開していた。
「参謀本部はこの作戦で巻き返しを図るつもりなのだろう。」
旗艦ではフランスだけでなく、ドイツやポーランドの将官もモニターの作戦図を見る。イレヴンや外人部隊を中央、両翼には各国の正規軍、そして後方には旗艦を始めとした部隊が控え、『ユーロ・ブリタニア』から接収した列車砲もある。
「ま、この作戦が成功すれば我々の栄進は確実だ。」
「失敗した場合は?」
「決まっているだろう…無能なイレヴンや外人共の責任だ。我々は命令を遂行すれば良いだけさ。」
まるで分かっていない……ここで失敗すれば地中海とエリア24に囲まれた上に、北部の海岸線も取られればフランスは完全に丸裸……堀を失った城だ。
「ったく、めんどくせえな。」
「頑張って■んでくれよ、外人部隊さん?」
「なんなら、そこの姉ちゃんは俺達の部隊に来るか?」
「遠慮するわ。」
ウェンディ・ミュラーは言い寄ってくる男達を睨み付け、書類に目を戻す。
なんて体たらく……あの連中には想像力という物が最初から無いのでは?と疑いたくなる。いや、確定している。無いのだ………一時でも、純粋な愛国心で軍人になった己の浅はかさを今は恥じるばかりだ。得られた物など、革命自体が間違いであったという教訓、そして上官で今は肌を合わせる仲のゼラート・G・ヴァントレーンだけだ。
「司令官達は今頃、我々に責任を押しつける算段でもしているだろう。」
「でしょうね。」
ゼラートはコーヒーを一口のみ、直属の部下であるアサド・ランゲルグに告げると、彼もそれを肯定した。
「あいつら、ここが負けたらキャリアどころじゃないってのが分からないんですね。」
「だからここまでやられても、そういう発想しか出来ないんでしょう?」
スウェーデンから参加したアレクシア・エストランデルも上官達を斬り捨て、隣で雑誌を読んでいるロシアの避難民出身であるイロナ・メルクーシンも「よね。」と肯定する。
「避難民相手に略奪する連中よ?あいつらこそ■ねば良いのに。」
「同感だが……任務は任務だ。」
が、ゼラートはこの作戦の失敗を確信していた。相手はシルヴィオ・ロ・ブリタニア………『侍皇子』、『イレヴンかぶれ』などと揶揄されているが、その指揮能力はあの第二皇女コーネリアと、KMFの実力は第八皇子ライルと同等という噂もあるし、彼の親衛隊も精鋭揃い……それに対して、こちらは肝心の主力は見かけだけ……せっかく主戦派がインドのKMFを手に入れたというのに、外人部隊に回した。それを操るのはゼラート達だが、KMF一機が戦局に与える影響などたかが知れている。あのランスロットや現在各地で猛威を振るっている『ナイトオブラウンズ』専用機がおかしい………現場の人間や技術者達ですらそれが理解出来ていない。
早々に見切りを付けた方が良いだろうが…どこに行けば良いのやら。
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