[37712] コードギアス 戦場のライル SIDE OF WARFARE『反逆者の横顔』 |
- 健 - 2017年09月28日 (木) 18時50分
中島京子は目を覚ました……昨晩、中島が相手をした男はもうおらず、ベッドには数枚の紙幣があった。けだるげな身体を起こして服を着て、中島は部屋を出る。
「大丈夫なのか?」
先日……同じく第八皇子の元へ編入された長野五竜が問う。
「大丈夫です…ちょっと、疲れただけです。」
「無理をするな?」
彼の気遣いをありがたいと思いながらも中島はKMFの調整に戻る。本当に…自分の生活は向上したと思う。名誉ブリタニア人になる前……日本が占領されてから、両親が死亡し、遺された弟を養うために何でもやった。盗み、殺し…そして売春……
名誉ブリタニア人となり、入隊してからも言い寄ってくるブリタニア人の男から小遣いを貰う代わりに身体を提供した。軍の給料も含め、全て弟のために貯めていた。もうすぐ、13歳になる。何とかしてイレヴンも入れるというアッシュフォード学園の中等部に入学させて、人並みの生活を送らせてあげたい。そのためならば、なんだってする。自分の身体だって使ってやる。
第八皇子ライルがやって来て、彼女は運良く目にとまり、彼が率いる名誉騎士団に編入された。歩兵からKMFのパイロット…階級も准尉となり、給料も大きく上がった。これで、弟の教材が買える。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「なに?」
ゲットーにある家で弟が声をかけると、自分の額を当ててきた。
「熱はないみたいだけど…疲れてない?」
「大丈夫よ…今日ゆっくり休めば……」
「本当に?お姉ちゃん、僕のことばっかりで自分のこと余り考えてないでしょ?」
が、中島は弟の頭を小突いた。
「バカね…あんたが家で待ってるから、お姉ちゃんも頑張れるのよ。」
そして…キュウシュウでの戦闘が終わった後………ユーフェミアによる行政特区日本設立が発表され、弟はその式典に立ち会おうとしていた。
「お姉ちゃんは本国に行くんでしょ?」
「ええ、休暇でも貰えたら本国のお菓子でも持ってきてあげるから。お金は節約するのよ?」
「うん、お姉ちゃんも気をつけて。」
「じゃあ…行ってきます。」
弟から「行ってらっしゃい。」と見送られ、中島は家を出た。それが……彼女が弟と交わした最後の会話であり、弟の最後の姿だった。
突然行われたユーフェミアの虐殺……その映像の中に、KMFに撃たれてバラバラになった弟を中島は見た。
何故?あの子はテロリストじゃない…なのに、何故殺された?イレヴンだから?最初から、罠だった?
中島の中で全てが崩れた……自分の女としての幸せも、何もかも捨てて守った弟が……自分の手の届かないところで死んだ…なんのために、これまで?
そんな中…名誉ブリタニア人の一部が叛乱を起こした。それを聞いた中島は、止めようとする同僚達の足や腕を撃った。殺さなかったのは自分でも分からない……だが、もうなにも失う物はない。だったら……何もかも壊してやる。
しかし……それはライルと彼が選んだ騎士によって阻まれ…最後に生き残った中島は公開処刑される身となった。ブリタニア人達は口々に中島を罵倒し、嘲笑う。銃殺されようとした時……ライルが現れた時、中島は目を疑った。
何故、ここに?処刑に立ち会う?にしても、おかしい………
すると、ライルは剣を抜き…振り下ろした。
「最後の命令だ…私を、ブリタニアを呪い、憎みながら逝け。」
ああ……そうか、この人は…今でも私を、部下と思って………本当に、馬鹿な人だ。なんて、運のない女だ………嗤って処刑を見送るような男なら、もっと恨んで死ねたというのに………どうやって、恨めという?こんな、今にも泣きそうな顔をして部下を斬ったお人好しを……だが……攻めて、こちらも部下として…体面上は…
「い…イエス……ユア・ハイ…ネ…」
目が閉じ、意識が消える瞬間……中島は死んだ家族の姿を、そして……それを見送るライルの姿が見えた気がした。確かに、運がない女だ…だが、同時に悪くない上司には会えた………
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