[37706] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-9『復讐者と皇女…後編2』 |
- 健 - 2017年09月26日 (火) 10時51分
E.U.軍は砂嵐の中を警戒していなかった……訳ではない。だが、この砂嵐で攻めるようなことはすまい。と思っていた。
それが命取りになった。最前線を警戒していた部隊が突然混乱した。かろうじて聞き取れた通信によれば、ブリタニアのKMFが突っ込んでくるということだけ。
完全に不意を突かれたE.U.軍は迎撃が遅れた。加えて、視界が悪いこの状況では砲撃も満足に出来ない。対して、上空の母艦と艦に待機させたサザーランドアイに目の役割を担って貰ったブリタニア軍はサンドボードによる高機動力と相まって、パンツァー・フンメルを翻弄、瞬く間に陸上艦を撃破していく。
エルシリアのベイリンは圧倒的であった。視界の悪いこの中で、長剣を味方を巻き込むことなく振るい、更にグロースターを凌ぐスピードでKMF隊を撃破する。
こちらに狙いを付けたグラスゴーに気付き、シールドを展開し、その隙にライルの親衛隊がグラスゴーをライフルで撃ち抜いた。
「良い腕だ…だが、極力格闘戦で臨め!同士討ちを避ける!」
〈イエス・ユア・ハイネス!〉
「さあ、エルシリア・ギ・ブリタニアが相手だ!勝ち取った自由と平等を守りたくば、かかってこい!」
エルシリアのベイリンは専用の長剣ダーインスレイフでパンツァー・フンメルを両断し、更に腕に搭載されたショートソードMVSを護衛艦に投げつける。剣は艦に突き刺さり、更にエルシリアの親衛隊が至近距離でライフルを撃ち込んでとどめを刺す。
〈そ、『双剣皇女』がなんだ!片割れの分際で!!〉
自棄になったのか、鹵獲されたサザーランドとグラスゴーが何機か攻撃を集中してくる。が……
「見くびられた物だ……剣は一本あるだけでも充分なのだぞ?」
ダーインスレイフを地面に突き刺し、背中のシュロッター鋼ソードを抜いたベイリンは既存の機体を遙かに凌ぐ機動力でKMF隊を切り刻んでいく。サザーランドアイ部隊から送られたデータで位置の特定もしやすい。加えて、相手の練度も低すぎる。合計六機、全く大した相手ではない。
「弱すぎる。」
「ひ、退くぞ!退くんだ!!早くヘリを出せ!!」
「しかし、この砂嵐では視界が!」
「五月蠅い!早く、出すんだ!我々が死ぬわけには行かぬのだ!!」
「イレヴンと外人共はどうした!?」
陸上隊の司令部は完全に混乱し、司令官達は逃げようとしていた。我先にとヘリへ乗り込もうとする司令官達だが、ヘリを破壊されてしまった。
そこへ、白とダークグリーンのツートンに塗られた二機の新型KMFヴィンセントが現れた。
〈部下を見捨てて自分達だけ逃げるとはな!!〉
〈みっともないったらありゃしないわ。〉
後ずさろうとしたら、更に後ろにはエルシリアのベイリンが立ちはだかった。
〈他の艦は全て潰した。さあ、降伏するか?〉
「……た、頼む…我々だけでも助けてくれ!!」
その言葉が届くかと思われた時………
〈将兵や市民を蔑ろにして自分だけか………良いだろう、お前達だけ死ね!!〉
二機のヴィンセントが飛び立ち、ベイリンが司令官達に剣を振り下ろし、彼らは砕け散った。
一方、上空は秀作のアストラットとセラフィナのベイランに翻弄されていた。先行した母艦は地中海近くまで来てから二機を発進させ、気付いた時には既に対応が遅れていた。艦を狙うヘリも艦上にいるKMFの砲撃に撃墜され、フロートユニット装備のKMF隊を捕らえられない。だが……目の前にフロートを装備した青いKMFが現れた。
秀作も想定していなかった敵だ……外観はインド軍区の機体のバリエーションだというのが分かる。
「おい、少し預かっていろ。」
秀作はアストラットの両腕に持たせていた大型のロケット砲を随行したサザーランドに委ね、背中の剣を抜く。
「誰だか知らないが……邪魔しないで貰いたいな。」
〈その機体……畑方秀作か。〉
驚いた……自分の名が知られていようとは。そういえば…長野と並んで名誉騎士候となった件が報じられた。向こうもそれ繋がりでこちらを知ったのだろう。
「誰だ、貴様?」
〈……日本軍池田誠治少佐。〉
池田?確か、聞き覚えが……
「ホッカイドウでライルを負かしたという男か?」
〈……負かしたとは言わない。あれは痛み分けだ。〉
「そうかい!」
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