[37676] コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−9 披露宴 V |
- JIN - 2017年09月15日 (金) 14時17分
「あれが噂の暗殺令嬢か」
「でも失敗したって聞くけど」
「だが噂によれば今回の戦いであのグリンダ騎士団のオルドリン・ジヴォンを破ったんだろう。そうなればやはり相当な実力があるわけか」
「そうでなければヴェランス大公が御家再興を認めるものか」
「しかしバーンスタイン家といえば確か」
「そう。嫡女にして彼女の嫡姉にあたるアメリア嬢はアラスカで御健在と聞くが」
「ああ。エイゼンシュタイン侯爵の庇護下にあるらしいな」
「しかしいかにアラスカが旧帝国回復派の溜り場とはいえ、今ではヴェランス大公家の勢威に到底及ぶまい」
「ああ。一年前のデボンシャーの乱を契機に、今ではアリューシア伯爵もこちらだし、旧皇族系もエカテリンブルクに集まってるしな」
「そういえばそのアリューシア伯爵はどうした。てっきり親交のあるはずの辺境伯とペアかと思ったが?」
「子爵の家令でもある、辺境伯の妹君は兄君の相手として子爵を強く推しているとも聞くが、その関係かもな」
その時変わる音楽。
「続きましてアレウス・アルフォード・アレキサンダー伯爵の御入場です」
またしても新たなどよめき。
いかにも理知的な風貌に青年に、それに劣らぬパートナーの姿。
「流石は北ユーラシア最大の門閥アレキサンダー一族の次期当主。貫禄があるな」
「ええ。なんとも御凛々しい」
「あのお連れの方は」
「レイナ・マリーナ・ハルジオン伯爵。ああ見えて技術系でリングスの機体の総監督役とも聞く。イルクーツクかと思ったが、こちらに来てたのか」
「どういう御関係なんでしょうか」
「別に深い意味はないんじゃないか。出来星のバーンスタイン子爵はともかく、ハルジオン伯爵ともなれば、むしろ婿を取らねばならない立場だ。アレキサンダー伯爵の適当な相手が近くにいなかったから、急遽パートナーを買って出たとこなんじゃないか」
「そういえば伯爵の御相手を巡って一族内部で激しい角逐があるとも聞くしな」
「まあ。あれだけの大族ともなればそうなるだろうが」
「しかしそうなると、ここでのアリューシア伯爵の御相手は?」
「ま、まさか…」
その時に三度変わる音楽。
「最後にイースリット・リア・アリューシア伯爵の御入場です」
入ってくる二つの影。
その瞬間、大きくどよめきの走る場内。
もちろん(礼節上の抑制もあって)あくまで一瞬だったが。
主人側の位置に立つドレス姿の美女。
確かにずば抜けて美しいが、まさに虎とでもいったような猛々しい凄味のオーラを発している。
そしてパートナー側からその手を取って進む一人。
礼装をキッチリと纏った小柄な美少年。
「…アーダル・ベル・ロックスフォード…」
「ジョークと思っていたが、まさかこいつも本当にリングスだったとは…」
「え? あの少年知ってるんですか」
「知らないのですか?」
「ええ。しかしなんともいえない美しい子ですねえ。まるでアリューシア伯爵の御小姓みたい」
「ほんと。あのような美しい子を身近に侍らせてるなんて実に羨ましいですわ」
「なにを暢気な事を。『ロックスフォードの稚児』の噂を聞いた事はないのですか?」
「ええ。まさか!」
「ええ。そのまさかですよ。よく見てください。幼いように見えて、あの実に臈長けたような顔に目に肌。そこらの高級娼婦なんか比べ物にならないくらいの玄人ぶりでしょうが」
「そして今まで相手にした女は百人以上で孕ませた数も半数以上。そして男の相手も相当で、最初の身元引受人だったロックスフォード子爵が表に出なくなったのは溺愛し過ぎて身体を壊したと噂されるほど」
「ええ。まさにサンクトペテルブルク社交界最凶最悪の魔物ですよ」
「そんな子をなんでアリューシア伯爵が?」
「さあて。しかしとにかくこれで決まりですな」
「何が?」
「アリューシア伯爵があいつを『お抱え』にしたというという噂は、あいつの『順番』を待っていた御婦人方を怒らせていたみたいですが、こうなっては黙らざるをえないでしょう」
「なぜです」
「なぜって。さっきお話したように、どんなに気に入っていても、あいつみたいな御札付の魔物をこういう公式の場のパートナーにしようというような、度胸や覚悟そして力のある女性はまずいないでしょう」
「さすがはアリューシア伯爵。この程度のスキャンダルではビクともしないってわけか」
「まさに『公式愛人』としての御披露目でもあるわけですか」
「まあこれを超えるとすれば手段はもう一つしかないですよな」
「そうそう。そこまではアリューシア伯爵もする気はないでしょうし」
「何の事です」
「決まってるでしょう。正式に『結婚』して完全な『夫』にすることですよ」
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