[37671] コードギアス 追憶のエミリオ MEMORY−9 披露宴 U |
- JIN - 2017年09月12日 (火) 14時14分
オーガスト大宮殿大広間。
現地の社交界、ひいては遥かサンクト・ぺテルスブルグやモスクワから駆け付けた多くの貴賓が詰め掛けている。
一応、立食の自由形式であるため、参加の来賓は大まかに三つに分かれるのが北ユーラシア地域の傾向。
すなわち最大の旧ユーロ・ブリタニア派をはじめ、それに続く旧帝国本土派の貴族たち、そして協同軍関係をはじめとする現地の有力者たちである。
もっとも旧ユーロ・ブリタニア系の中でも最大であるヴェランス大公家のインナーたちは、現地系との接触の多さからむしろそちらとの関係が深く、それに対し大公家以外の貴族たちが内外結束して対抗する傾向にあるなど、彼らの関係は決して単純ではでなく一筋縄ではいかない。
ちなみに旧帝国の崩壊後、形式的には無国家無政府状態にある北ユーラシア地域は、それ故に各地の主要都市を中心に結束を図る傾向がある。
すなわちサンクト・ぺテルブルクとモスクワを中心に、西からスモレンスク、エカテリンブルク、イルクーツク、そしてこのハバロフスクにウラジオストックが、いわゆる「北ユーラシア七都市」として各地の入植者たちの結集点として機能している。
それらの諸都市における各勢力の分布はそれぞれだが、このハバロフスクではほぼ均等の均衡が保たれており、その意味でも政治的な試金石には格好の場ともいえる。
優雅な音楽と共に、あちこちで様々に進む歓談。
もちろんその中には抜け目ない目であちこちを伺う視線も様々に交差する。
その中でやがて告げられる第一声。
「それではお集まりの皆様に、この度の主賓の方々を紹介させていただきます。それではローランス・ジョージ・ヴァルトシュタイン辺境伯の御入場です」
変わる音楽。
沸き起こる拍手。
その中で会場に入る二つの影。
いかにも精悍とした感じで、まさに絢爛というべき礼服に身を固めた青年。
そしてそれに手を取られながら入ってくる、煌びやかなドレスに包まれた若い女性。
共に単なる貴公子貴公女ではなく、いかにも凄絶といった感じのオーラを放っている。
まさに絵に描いたカップルぶりに、嘆息と賛嘆の吐息が満ちる場内。
「あれが今のヴェランス大公の御従弟にして右腕とも呼ばれる、ヴァルトシュタイン辺境伯…」
「この度の戦功もあって、まさにその名にも恥じない威風ぶりですわね」
「ところで御連れの御令嬢の方は?」
「お見かけしない御顔ですが、なんとお美しい」
「そう。単なる美しさでなく、何か怖いくらいの物もありますわね」
「あるいは辺境伯の御婚約者か何かで?」
「知らないんですか。あれが噂のあの『エミリオ・バーンスタイン子爵』ですよ」
「ええ!?」
「あの方が!?」
「そう。あの悪逆皇帝の暗殺を謀り族滅された、あのバーンスタイン侯爵家の生き残りの一人…」
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